お前は、ヒロインではなくビッチです!

もっけさん

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エルブンガルド魔法学園 中等部

テトラグラマント神は無能なアホ神だった

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 この感覚からすると、神界にちゃんと来れたようだ。
「テトラグラマント神、お久しぶりですね」
「リ、リリアン久しいな。お主の活躍は、ちゃんと見ておったぞ」
 冷や汗を流すテトラグラマントの顔色は非常に悪い。
「そうですか。では、わたくしがここに来た理由もご存じですわよね?」
 大精霊達に先回りさせて要件を伝えているのだ。
 私の言いたいことくらい分かっているだろう、ああ~ん? という心境を丁寧な言葉のオブラートで覆い隠す。
「話は聞いておる。魔王の話についてじゃったな」
「そうですよ。あれ、本当なんですか?」
「間違っていない。ユーフェリアは、元々は異世界からの転生者じゃ。我等よりも格上の神が、ちょっとやらかしてなぁ。転生先をここにしたいと彼女自身が申し出たのじゃ。こちらも上位世界の魂は、貴重だから色々と便宜を図ってやった。本来なら闇を総べる神となり魔王に寄り添う存在になるはずだった。実際、話した時は礼儀正しい儚い娘に見えた。まさか、恋多き女とは思いもせず色男には声をかけまくり身体の関係を持つ始末。魔王は激怒し、事の次第を問いただそうとユーフェリアに詰め寄ったが、時すでに遅し。色んな場所で暴れて追ったからな。世界を滅ぼす存在として認定され、ユーフェリアの下に彼女の信奉者が集い魔王を退けたというのが、ワシから見た感想じゃ」
「大精霊も手玉に取ったんじゃ……」
「精霊に性別はないが、見目は麗しかったからのう。言い寄りくらいはしていたんじゃないか? 時の神をも虜にした魔性の女じゃ」
「身体を使わなくても、自尊心の高い彼等の欲しがりそうな言葉を言えば、簡単に落ちそう……。で、結局誰落ちだったんですか?」
 色々引っ掻き回しておいて、誰とくっ付いたのか聞いたらテトラグラマント神は大きな溜息を吐いた。
「誰ともくっ付いておらん。寧ろ、教会を設立して死ぬまで男を漁っておったぞ。流石に死後は、面倒見切れないと元の世界の神に文句を言って引き取って貰った」
「受け入れた時にメリットは、ちゃんと貰ったんでしょうね?」
「上位世界の魂、しかも記憶がある状態での転生となれば技術の発展になると言われて世界の水準が上がるならと受諾したが、今思えば間違いだった気がする」
 額に手を当てて大きな溜息を吐くテトラグラマント神に、私も大きな溜息を吐いた。
「呆れて何も言う気になれないわ。ユーフェリアという前例を作った以上、事あるごとに利用されたんじゃないの? 聖女召喚が良い証拠じゃない」
「……そんなことは無いぞ」
 物凄く返答に間があった。
 ジト目でテトラグラマント神を見ていると、降参したのか自白を始めた。
「本当は?」
「…………………………すみません。ありました」
「やっぱりね。その時はどうだったのよ?」
「ユーフェリアのような害悪な者も中にはいたが、冒険者で名をはせた者や国を作った者もいる。この国の王妃になった者もいたぞ」
 聞けば聞くほどテトラグラマント神が、アホを司る神なのではないかと本気で思った。
 何度も痛い目を見てきているのに、懲りてないところが駄犬よりも酷い。
「聖女召喚は、ワシではない! あの時も言ったが、時の神が勝手に人間たちに教えたのだ」
「その真意は?」
「多分ではあるが、ユーフェリアの魂を探しているのではないかと考えている」
 魔王も時の神も、総じてアホ過ぎる。
 特に時の神に関しては、救いようがないアホだ。
 元の世界に戻ったユーフェリアの魂を探し出して、何をするつもりなのか考えただけでも悍ましい。
 ガチなストーカーじゃないか。
「滅びの言葉を叫びたいわ。バルス!」
 飛行石はないけれど、一言で世界が崩壊するような言葉があったら口にしていたと思う。
 可愛い天使たちには悪いが、能無しの神が治める世界よりも元にいた世界の方が何万倍もマシである。
 生まれ変わって転生し直した方が良いと選択するくらいには。
「結局、わたくしは尻拭いをさせられているってことでしょう」
「仰る通りで」
「前例作って色々受け入れた結果が、今の現状ということなら自業自得じゃない。エネルギー補充の目途が立ったとしても、同じことを繰り返すなら、星の消滅を先延ばしにしているだけに過ぎないわ。その場しのぎで乗り切るつもりなら、わたくしは降りさせてもらう。弟妹は可愛いけれど、この世界の為に身を粉にして働く義理はないのよ。わたくしが死ぬまで持つなら何もしない。子孫になる子達には悪いけど、ノープランの見切り発車でその場しのぎをしようとするようなアホに付き合ってられないわ」
 そう言い切ると、テトラグラマント神は頭を床に擦り付けて土下座してきた。
「そこを何とか力を貸して下され。このまま世界が亡びれば、ワシは降格してしまう。創造神になれたのに、降格されたら一生星を持つことすら許されなくなる」
 おいおいと泣き崩れるテトラグラマント神に私は冷たい視線を送った。
 結局のところ、こいつも我が身可愛さで保身に走っている。
 気に食わない。
 大いに気に食わない!
「そんな事わたくしの知ったことではありません」
「どうか、この通り!! お願いします」
 爺の土下座を見せられても、心は1mmも動かない。
 しかし、滅亡回避のためにアレコレと準備をしてきたことが無駄になるのは許せない。
 私は大きな溜息を一つ吐いて、テトラグラマント神に提案という名の命令をした。
「上位世界からの転生や召喚は、拒めない事情もあるでしょう。それらを踏まえたうえで、今後は彼等に力を与えないと約束して頂戴。転生者の前世の記憶消去は勿論、彼等の望みは一切叶えない。召喚者に対しては、何の力も与えない。研鑽もせずに巨大な力を与えたら、それこそ厄災級の問題児が誕生するじゃない。どちらも世界に害悪なことを仕出かした時点で抹殺するのよ。創造神なのだから、それくらい出来ますよね?」
 個人単位で見れば理不尽極まりないのだが、世界単位でみれば人の生死など日常茶飯事に起こる自然現象だ。
 召喚者や転生者を優遇する方がおかしいのだ。
 私の出した条件は、『最低限』である。
 これから、追々と条件を追加していく算段だ。
 ユーフェリアの汚点という真実を握った以上は、精々利用させてもらう。
「返事は?」
「はい……」
 一応、言質は取れたことだし今日の所はこれで終わりにしよう。
「約束、違えたら滅ぼすから」
 何を滅ぼすとは明言しなかったが、テトラグラマント神には真意は伝わっただろう。
 高速で頭を縦に振っている。
 上が無能だと、下が苦労するのはどこの世界でも同じようだ。
 私に平穏な日常プリーズ!
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