お前は、ヒロインではなくビッチです!

もっけさん

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エルブンガルド魔法学園 中等部

奴隷達のその後

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 生まれ変わった世界の神が、あそこまで無能だとは思わなかった。
 転生者に世界の命運を委ねる時点でおかしいと思っていたが、ここまでアホだとは知りたくもなかった。
 聖女という肩書もあるし、信仰を集めて神にでもなろうかしら。
 まあ冗談はさておき、現状この奴隷達をどうするかだ。
 私のポケットマネーで買っているので、現時点では私の所有物だ。
 違法奴隷商の摘発のために日本円にしたら億単位のお金を使っている。
 国庫から補填して貰えれば良いが、望みは薄そうだ。
 あれから何度も父に連絡しているが、色よい返事が戻ってこない。
 言葉を濁している時点で、支払う気が無いというのが伝わってくる。
 かと言って、捜査の協力をしないお金を出さないとなると教会の沽券にも関わってくる。
 正直、ユーフェリアの正体が分かった時点で聖女の座を降りたくなった。
 あれを崇拝する気持ちが微塵もない。
 可愛い天使たちが居なかったら、早々に人生ドロップアウトしていたのに!
「取り合えず、彼等に職を与えるにしても最低限のことが出来ないと話にならないわね」
 うーん、と頭を悩ませる。
 獣人やエルフなどの亜人も混ざっているので、正直扱いが難しい。
 目先の方針としては、読み書き算術と礼儀作法が出来ること。
 そこから、適正のある仕事に就かせて自身を買い戻す為に働いて貰おう。
 そうしないと割に合わない。
 私は、フリックに奴隷達を一ヶ所に集めるように伝えた。
 フリックから全員を集めたと連絡が入り、私は移動する。
 奴隷達は、大広間に集められていた。
 私は、彼等を見下ろすように踏み台の上に立った。
「皆さん、ごきげんよう。旧オブシディアン領の領主代理を務めさせて頂いております。リリアン・フォン・アングロサクソンです。どんな経緯があれ、わたくしに買われたので身を粉にして働き自分を買い戻して頂く必要が御座います。勤務態度や能力によってお支払いする賃金が変わります。初任給は、手取りで金貨一枚と大銀貨八枚です。そこから家賃と食費を引いた金額、金貨一枚と大銀貨二枚があなた方の手元に残るお金です。いくら返金に回すかは、あなた方の自由とします。こちらの提示する条件や技術を習得した者に関しては、別途手当が出ます。ここまでは、理解出来ましたか?」
 奴隷に賃金を払うなど前代未聞の言葉に、彼等は動揺している。
 しかし、やはり意を唱える者はいる。
「私と彼等を同列に扱うのですか?」
 エルフの一人が、冗談じゃないと憤慨していた。
「ええ、そうですよ。奴隷商と同じ環境が提供されると思ったら大間違いです。慈善事業ではありませんの。アホと無能は要りません。わたくしにとって使えるか、使えないかの二択ですわ。特に高級奴隷の皆さん、あなた方にかかった代金は大金貨数枚は下りません。わたくしが生きている間に完済出来なければ、アングロサクソン家に対して残りを支払って貰います。それまで解放しませんので悪しからず」
 そうバッサリと切り捨てると、顔を真っ赤にしてプルプルと震えている。
 容姿も武器の一つではあるが、私は容姿よりも有能かどうかでしか判断していない。
 そのことを早めに明言しておかなければ、色ボケした勘違い野郎が出て来る可能性がある。
「あの、犯罪奴隷はどうなるんでしょうか?」
「犯罪奴隷は、解放という言葉はありませんので生涯働き続けることになりますわね。わたくしの亡き後はアングロサクソン家の所有物になりますわ。普通の奴隷と違い行動に制限を設けますが、雇用形態はことなりますが『お小遣い』という形で賃金を支払いますわ。ただし、我が家で犯罪を犯した場合は、一発で鉱山送りにしますのでお気を付け下さいませ」
 早い者なら初任給だけで一年もかからずに完済できる。
 衣食住、福利厚生、ボーナス、有給などあらゆる面から見ても、奴隷でいた方が彼等にとって得な状況を作り出した。
 育てた人材が、他に流出するのは好ましくないからね。
「あなた達は、わたくしの奴隷であって他の者の所有物ではありません。我が家の従業員が、あなた達に何かを命令した時は断って構いません。ただし、それは個人的な命令の場合のみです。仕事上の指示には従うように。命令と指示の区別がつかない場合は、フリックか私に確認しなさい。捕まらない時は、全て断りなさい。断った上で、わたくしに必ず報告を上げる事。報告しなかった場合、職務怠慢と見做すこともあるので注意なさって下さいませ」
 奴隷を下に見る輩は沢山いるだろう。
 奴隷だから命令しても良いと思うアホも中にはいる。
 そんなふざけた奴等から彼らを守らなければならないのかと思うと、骨が折れそうだ。
 一人前に仕込んで、さっさと商会で働いて貰いたいものである。
「他に質問はありますか?」
 私の言葉に、返事はなかったので言いたいことだけ言って、後はまるっとフリックに任せた。
 彼ならば、言いように采配してくれるだろう。
 フリックに負担が掛かってばかりだが、この件が片付くまでの辛抱だ。
 頑張れフリック!
 私は、心の中で声援を送った。


 そんなこんなでポケットマネーで買った奴隷達は、どのような経路で私の手元に辿りついたのか本人の自供を元に精霊に裏付けを取って貰った。
 獣人と一部のエルフに関しては、精霊を介して親元とコンタクトが取れた。
 あちらとしては、浚われた挙句に奴隷落ちしてしまったことを根に持っているようだが、こちらとしては手続きを踏んだうえで購入しているので購入金額+引き取りに来るまでの日数分の家賃と食費を払って貰えれば言うことは無い。
 引き取りに来るにしても、お金を用意して貰わないことには引き渡しは出来ない。
 本人が完済するまで待つか、お金を用意するかの二択となる。
 獣人の犯罪奴隷もいたので、犯罪奴隷に関しては解放は出来ないが面会は出来る旨伝えて貰った。
 それも憤慨していたが、法律上そうなっているのだから仕方がない。
 まずは、どうしたいのか相談してから会いたいのであれば面会に応じると精霊に伝言して貰い一旦は様子見となった。
 フリックにクランクシャフト商会に探りを入れて貰っているが、こちらは灰色に近い白とのこと。
 私の話はクランクシャフトにも伝わっていたようで、表立って動くのは不味いことになったと自分の行動に少しばかり反省をした。
 奴隷を購入して二ヶ月が過ぎた頃、アリーシャとガリオンからヘルプの電話が入った。
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