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エルブンガルド魔法学園 中等部
浮気されました
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「リリアン様、大変です! あの腐れ馬鹿が、浮気してます!」
「聞いてくれよ! 変な編入生に付き纏われてんだ。しかも、俺らのこと何か知ってるっぽくって気持ち悪い!!」
電話口から聞こえる二人の声に、私は思わずプツと通話オフのボタンを押していた。
速攻で着信が掛かってきたので、耳から話して通話オンのボタンを押す。
「いきなり切るなんて酷いです!! ちゃんと聞いて下さい。一大事です!」
「いきなり切るなよな! つーか、こっち帰ってこれねぇのかよ? マジで助けて」
二人の大声が、スピーカー越しでも良く伝わる。
音割れしているしね。
「あんた達、少しは落ち着きなさい。順序だてて話してくれないと分からないわ」
「「あっ!」」
私の言葉に気付いたのか、漸く二人はトーンダウンした。
「結論から言いますと、一月前に編入した男爵令嬢に殿下が落とされました」
「見目麗しい男子やお金を持ってそうな男に言い寄っているという事かしら?」
「そうです! そうなんです!!」
プンスコ怒るアリーシャに、私は首を傾げた。
編入試験は存在するが、すること自体が異例である。
前例が、殆どないからだ。
「その男爵令嬢の名前って分かる?」
「コレット・ピューレです」
「ピューレ男爵に私と同じくらいの娘はいなかったはずだけど。隠し子かしら?」
現ピューレ当主は、色欲魔と言って良いほど色事が大好きな男だ。
顔は悪くないから、引っ掛かる女は多少いるだろう。
しかし、財政状況は芳しくないと聞いている。
「調べますか?」
「ええ、お願い。それで、殿下がコレット嬢と浮気をしていると。証拠はありますの?」
「中庭でお弁当を食べさせっこしている写真、ベンチで膝枕して貰っている写真、キス写真もあります。他にも……」
「もう良いわ。今、それ以上聞いたら鶏の首を絞めるようにキュッと殺りたくなるから止めて。それで、ガリオンはコレット嬢にベタベタされて困っているという事かしら?」
「そうなんだよ。馬鹿王子とイチャイチャしているくせに、馬鹿がいなくなった途端『私の騎士様』とか言って擦り寄ってきて気持ち悪いんだよ! しかも、俺やアリーシャの素性も調べたのか細かいところまで知ってて気持ち悪い」
ストーカー被害にあった女子のように、ガリオンの声が震えている。
「……どのあたりまで知っているのかしら?」
「好きな食べ物とか、お嬢の傍仕えになった経緯とか。傍仕え後は、向こうが勝手に妄想炸裂させて訳分かんないことを口走っているけど、それ以外は合っていて怖いんだよ。お嬢を悪く言うし」
「悪役令嬢……」
思わず浮かんだ言葉をボソッと呟けば、ガリオンが反応した。
「そう! そんなこと言ってた!! マジであいつ何なの? 気持ち悪いぃ」
アホ神の弊害が此処に来ても出てくるとは。
私の邪魔をするのが好きだな。
本気で消してやろうかしら。
こめかみに青筋が浮かぶ。
「わたくしは、こちらが落ち着くまで身動きが取れません。精霊に映写機を渡すから、それで証拠を取りなさい。後、その脳内お花畑な令嬢と殿下にストレートに忠告して構いません。あまり聞き分けがないなら殴っても構いません。その権限をあなた達は持っています。殴って良いのは、殿下だけですからね。わたくしが戻るまでは、苦言を呈し続けなさい」
「そんなぁ……」
「言葉が通じない。都合の良いように脳内変換する女相手に、どうやって会話を成立させれば良いんだよ!!」
私の返事に二人から落胆した様子が声で伝わってくる。
私もアルベルトと会話するのに、宇宙人と話しているみたいだと何度思った事だろうか。
「会話何て成立させずとも、身体に嫌というほど教え込ませればいいのよ。わたくしの写真を見せながら、言いつけるぞとでも言っておやりなさい。こちらが落ち着いたら、直ぐに戻ります。エマ・レイスとキャロル・チャイルドに宛てた手紙を書くから、必ず渡して頂戴ね。わたくしが戻る前に、リリアン・アングロサクソンは浮気された可哀そうな令嬢という像を作り上げて頂戴。わたくしが、学園に戻った時に片づけるわ。それまでは、我慢よ」
そう言い付けると、二人は声を揃えて『早く帰って来てくださいね』だって。
彼らの愚痴を聞くだけ聞いて、プチッと通話をオフにした。
コレット・ピューレは、間違いなく転生者だ。
この世界を乙女ゲームと思い込んでいるのだろうか。
乙女ゲームに酷似した世界なのかもしれない。
なおさら、この世界を救う意義を感じなくなってきた。
私が、オブシディアン家を没落させた張本人だということは学園だけでなく貴族界隈では知られた話だ。
それを踏まえて、私の婚約者(偽)にちょっかいを出そうとする者がいるとは想像しなかった。
同じ轍を誰も踏みたくはないだろう。
少し離れても大丈夫と思って気を抜いた矢先に、どこの馬の骨とも知れぬ令嬢に誑かされて骨抜きにされるとか無いわ。
憶測の状態なので、確固たる証拠が出揃うまでは下手な動きは出来ない。
「馬鹿ベルト覚えておきなさいよ!」
絶対にぶん殴ってやると心に決めて、エマとキャロルに向けて手紙を書き精霊にお願いしてアリーシャのもとに届けて貰った。
私が居なくても社会的に抹殺するのは容易だと思い知らせてやる。
私は、精霊にアルベルトとコレットの同行を探らせ逐一報告するようにお願いをした。
「聞いてくれよ! 変な編入生に付き纏われてんだ。しかも、俺らのこと何か知ってるっぽくって気持ち悪い!!」
電話口から聞こえる二人の声に、私は思わずプツと通話オフのボタンを押していた。
速攻で着信が掛かってきたので、耳から話して通話オンのボタンを押す。
「いきなり切るなんて酷いです!! ちゃんと聞いて下さい。一大事です!」
「いきなり切るなよな! つーか、こっち帰ってこれねぇのかよ? マジで助けて」
二人の大声が、スピーカー越しでも良く伝わる。
音割れしているしね。
「あんた達、少しは落ち着きなさい。順序だてて話してくれないと分からないわ」
「「あっ!」」
私の言葉に気付いたのか、漸く二人はトーンダウンした。
「結論から言いますと、一月前に編入した男爵令嬢に殿下が落とされました」
「見目麗しい男子やお金を持ってそうな男に言い寄っているという事かしら?」
「そうです! そうなんです!!」
プンスコ怒るアリーシャに、私は首を傾げた。
編入試験は存在するが、すること自体が異例である。
前例が、殆どないからだ。
「その男爵令嬢の名前って分かる?」
「コレット・ピューレです」
「ピューレ男爵に私と同じくらいの娘はいなかったはずだけど。隠し子かしら?」
現ピューレ当主は、色欲魔と言って良いほど色事が大好きな男だ。
顔は悪くないから、引っ掛かる女は多少いるだろう。
しかし、財政状況は芳しくないと聞いている。
「調べますか?」
「ええ、お願い。それで、殿下がコレット嬢と浮気をしていると。証拠はありますの?」
「中庭でお弁当を食べさせっこしている写真、ベンチで膝枕して貰っている写真、キス写真もあります。他にも……」
「もう良いわ。今、それ以上聞いたら鶏の首を絞めるようにキュッと殺りたくなるから止めて。それで、ガリオンはコレット嬢にベタベタされて困っているという事かしら?」
「そうなんだよ。馬鹿王子とイチャイチャしているくせに、馬鹿がいなくなった途端『私の騎士様』とか言って擦り寄ってきて気持ち悪いんだよ! しかも、俺やアリーシャの素性も調べたのか細かいところまで知ってて気持ち悪い」
ストーカー被害にあった女子のように、ガリオンの声が震えている。
「……どのあたりまで知っているのかしら?」
「好きな食べ物とか、お嬢の傍仕えになった経緯とか。傍仕え後は、向こうが勝手に妄想炸裂させて訳分かんないことを口走っているけど、それ以外は合っていて怖いんだよ。お嬢を悪く言うし」
「悪役令嬢……」
思わず浮かんだ言葉をボソッと呟けば、ガリオンが反応した。
「そう! そんなこと言ってた!! マジであいつ何なの? 気持ち悪いぃ」
アホ神の弊害が此処に来ても出てくるとは。
私の邪魔をするのが好きだな。
本気で消してやろうかしら。
こめかみに青筋が浮かぶ。
「わたくしは、こちらが落ち着くまで身動きが取れません。精霊に映写機を渡すから、それで証拠を取りなさい。後、その脳内お花畑な令嬢と殿下にストレートに忠告して構いません。あまり聞き分けがないなら殴っても構いません。その権限をあなた達は持っています。殴って良いのは、殿下だけですからね。わたくしが戻るまでは、苦言を呈し続けなさい」
「そんなぁ……」
「言葉が通じない。都合の良いように脳内変換する女相手に、どうやって会話を成立させれば良いんだよ!!」
私の返事に二人から落胆した様子が声で伝わってくる。
私もアルベルトと会話するのに、宇宙人と話しているみたいだと何度思った事だろうか。
「会話何て成立させずとも、身体に嫌というほど教え込ませればいいのよ。わたくしの写真を見せながら、言いつけるぞとでも言っておやりなさい。こちらが落ち着いたら、直ぐに戻ります。エマ・レイスとキャロル・チャイルドに宛てた手紙を書くから、必ず渡して頂戴ね。わたくしが戻る前に、リリアン・アングロサクソンは浮気された可哀そうな令嬢という像を作り上げて頂戴。わたくしが、学園に戻った時に片づけるわ。それまでは、我慢よ」
そう言い付けると、二人は声を揃えて『早く帰って来てくださいね』だって。
彼らの愚痴を聞くだけ聞いて、プチッと通話をオフにした。
コレット・ピューレは、間違いなく転生者だ。
この世界を乙女ゲームと思い込んでいるのだろうか。
乙女ゲームに酷似した世界なのかもしれない。
なおさら、この世界を救う意義を感じなくなってきた。
私が、オブシディアン家を没落させた張本人だということは学園だけでなく貴族界隈では知られた話だ。
それを踏まえて、私の婚約者(偽)にちょっかいを出そうとする者がいるとは想像しなかった。
同じ轍を誰も踏みたくはないだろう。
少し離れても大丈夫と思って気を抜いた矢先に、どこの馬の骨とも知れぬ令嬢に誑かされて骨抜きにされるとか無いわ。
憶測の状態なので、確固たる証拠が出揃うまでは下手な動きは出来ない。
「馬鹿ベルト覚えておきなさいよ!」
絶対にぶん殴ってやると心に決めて、エマとキャロルに向けて手紙を書き精霊にお願いしてアリーシャのもとに届けて貰った。
私が居なくても社会的に抹殺するのは容易だと思い知らせてやる。
私は、精霊にアルベルトとコレットの同行を探らせ逐一報告するようにお願いをした。
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