お前は、ヒロインではなくビッチです！

エルブンガルド魔法学園 中等部

アルベルト攻略開始

　フライングでのスタートだが、聖女よりも先に攻略者を落とすのが先決だ。
　この世界が、『Holy Maiden～ドキドキ★メモリアル ～』なら推しキャラの俺様王子の心の闇を取り払ってあげなくっちゃ！
　本当は、もっと上のクラスのはずなのに一番下のクラスに入れらたのは誤算だった。
　これでは、接点がない。
　ゲームでは、ヒロインは王子達と一緒のクラスになっていたのに現実は大分誤差がある。
　私がヒロインじゃない時点で大誤算なんだけど、スピネルやルークが成績上位のクラスにいること。
　アルベルトは普通のクラスに入ってるし、婚約者もエリーナって名前の公爵令嬢のはずなのにリリアンって誰よ?!
　ガリオンはアルベルトと同じクラスなのは分かるけど、妹の方は学園にすら通ってなかったはずなのにガリオンやアルベルトと一緒のクラスって絶対に何かある。
　私以外の転生者が、動き出しているのかも??
　とにかく、接点を持たない事には始まらない。
　アルベルトの行動を観察して、偶然を装って出会いを作るしかない。
　そうと決まれば、アルベルトの行動を観察しなくっちゃ！
　コレットは、小休憩や昼休憩の時間を生かしてストーカーの如くアルベルトの行動を観察した。
　『天真爛漫』を装い、無邪気な庶民上がりの男爵令嬢を装った。
　装うも何も本当のことなんだけど、他の乙女ゲームを参考にして男受けする女の子を作り上げる。
　顔だけは両親から良いとこ取りをして、自分で言うのもなんだけど結構な美少女だと思う。
　十代前半のピチピチの柔肌だが、手を抜けば数年後に老化が現れるのでヘリオト商会が販売している化粧品を購入して使っている。
　高級化粧品は、値段も結構するのでビリーも流石に買い渋っていた。
　魔法の言葉『お父様のために綺麗でいたい』を口にすると、買ってくれるのでチョロイなと思う。
　ただ、湯水のように使えないのでグレードの落とした化粧品と交互に使っている。
　半月ほどアルベルトの行動を観察して分かったことが、あまり成績は良い方ではないのと美容に関して異常に詳しいところだ。
　画面越しで見ていた俺様王子とは、大分違う。
　ナルシスト系の俺様王子で、こいつと添い遂げるのは無いと思うくらいドン引きしたが、王妃になれば贅沢三昧で暮らせるし愛人を囲って自堕落に暮らせると思えば、愛の無い結婚生活も悪くはない。
　そうと決まれば、早速行動開始だ。
　いつも決まった時間に中庭を通るのは、事前調査済み。
　コレットは、木に登りアルベルトが通るのを今か今かと待ちわびた。
　アルベルトとガリオン達が通り過ぎようとした瞬間、態と木から落ちる。
「キャァッ！」
　ガサガサという音と共に、ドスンッと尻もちをつきスカートが太ももまで捲れるような体制を取って痛がってみせた。
「痛ぁ～い」
　アルベルト達の視線が、コレットの方に向いたのを確認して慌ててスカートの裾を直した。
「ビックリしたましたよね？　すみません！」
　ピョンと飛び起きて深々と頭を下げるのも計算の内だ。
「ああ、君は一体何をしていたんだ？」
「はい、先日この学園に編入したばかりで道に迷ってしまって……。木があったので、登って場所を確認しようと思いました」
　頬を赤く染めつつ、上目遣いでドジっ子アピールをしてみる。
「編入生？　この時期に？　珍しいな」
　全然効いてない!?
「編入試験にギリギリ合格した子ですよ。ピューレ男爵の落胤だった子です」
「最近、認知されたのか？」
「そのようです」
　コレットを無視してガリオンとアルベルトの間で会話がどんどん進んでいく。
「あ、あの！」
　コレットが声を掛けて、会話が一旦ストップした。
「迷惑でなければ、魔法科Ｃクラスまで連れて行って貰えませんか？」
　目尻に涙を溜めつつ、ウルウル攻撃を仕掛ける。
　アルベルトは最初は嫌そうに顔を顰めていたが、
「……私、庶民の出なので馬鹿にされて頼れる人が居なくて」
と哀愁漂わせながらポツリと呟くと、
「そういう事なら仕方がない。ついて来い。案内してやる」
とアルベルトは上から目線でそう言って私をクラスまで送り届けてくれた。
　これで接点は持てたので、後は上手く煽てて取り入るだけだ。
　幸い、婚約者は事情があって学校に来ていないらしい。
　これはチャンスよ、コレット！
　アルベルトの鼻につく言い回しには目を瞑り、コレットはリリアンがいないのを良いことにアルベルトとの距離を徐々に縮めていった。