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11 妊娠したかもしれません
1 響ちゃんのレッスン
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クリスマスも終わり、そのままお正月が来て、新学期が始まる。
奈都の足の怪我も癒えて、傷はよく見なければわからなくなった。時間が経てばもっと目立たなくなると言われた。
奈都は大学が決まっているので、学校の登校は自由登校になり、ほとんど家にいる。
一時は、多忙だった仕事が落ち着いたらしく、響介も家にいることが多い。
亜稀は学校が始まり、一人で出かけていく。
毎日、「俺も休みてぇ」と言いながら、出かけていく。
亜稀が出かけると、響介が奈都の体を抱き上げて、寝室に連れて行く。
朝から抱き合って、響介をたっぷり注がれる。
前も後ろもたっぷり抱かれて、失神して目を覚ますと、響介は奈都を連れて出かける。
二人きりのデートだ。
冬の海だったり、水族館だったり、ショッピングだったり。
毎日、いろんなところに連れて行ってくれる。
「おい、俺の飯は?」
帰ってくると、亜稀が不機嫌に言う。
響介は弁当をわたす。
「毎日、高級弁当でもいいけどさ。たまには奈都の鍋が食いたい」
亜稀が弁当を食べながら文句を言う。
「じゃ、明日は作るよ」
奈都が慌てて言うと、それを遮るように響介が言う。
「奈都が大学生になるまでに、いっぱいデートしたいんだ。邪魔をするな」
「俺、邪魔はしてないよ。毎日、学校に行ってるだろう?」
「鍋が食べたければ、おまえが作って食べればいい。そうしたら弁当を買わなくてもよくなる」
「一人の鍋なんて寂しいよ。俺だけ仲間はずれだ」
「響ちゃん、やっぱり毎日出歩きすぎだと思う」
「じゃ、一日中。奈都を抱いていてもいいのか?」
奈都の顔が真っ赤になる。
「響介、本当に子供できるぞ。奈都が大学に行けなくなる」
弁当を食べながら、亜稀はあきれながら響介に言う。
「入院中は奈都に、寂し思いをさせてしまったからね。その埋め合わせをしなくては」
「わたし、寂しくなかったよ。亜稀が毎日、来てくれていたから」
「それはそれで嫉妬するな」
「ごめんなさい」
奈都は響介に教育もされていた。
今まで『僕』と呼んでいた人称を『わたし』に変えるようにすることと、女性らしい上品な話し方や所作。
習慣はなかなか変えられない。
学校では意識して『わたし』と呼ぶように気をつけていたが、家に戻ると緊張が解けて『僕』に戻ってしまう。
社交界デビューを本格的にさせたいと言われて、出かけるときも可愛らしいワンピースやスカートをはいている。
テーブルマナーは両親が健在だった頃、習っていたが、それでも奈都は家の中でしか習っていない。家の机の上で習っていたことを、今は外の世界で習っている。奈都は世間を知らなすぎる。
ダンスの練習も響介に習っている。
「奈都、疲れてなかったら、お風呂に入る前にダンスの練習をしよう」
「着替えた方がいい?」
「練習用の靴だけ履いておいで」
「わかった」
奈都は優雅に、それでも足早に歩く。
(バタバタ走らない・・・)
響介に習ったように、背筋を伸ばして歩いて行く。
「響介、スパルタすぎ!奈都、前より綺麗になったけど、いっぺんに教えすぎ」
背後で亜稀が響介に文句を言っている。
「次の株主総会と会社のパーティーに連れて行きたいんだよ」
「俺もまた行くのか?」
「当たり前だ。両親が亡くなったんだ。僕とおまえで会社は大丈夫だと安心させないといけないだろう?」
「わかってるけどさ。奈都は今まで公の場所に出てないから無理させるなよ」
奈都は部屋に入って、体から力を抜く。
両親もこんなに早く旅立つとは思っていなかったのだろう。奈都は両親に守られてきた。
体の秘密も、奈都の成長を待って話すつもりだったのだろう。
最低限の教育は、確かに役立っているが、プレッシャーはいきなり克服できない。
家の中で練習するように準備されたダンスシューズを履いて、リビングに歩いていく。
響介もスリッパから靴に履き替えている。
手を差し出されて、そっと手を重ねる。
観客は食事中の亜稀だ。
「亜稀、音楽」
「へいへい」
父が愛用していたステレオのスイッチを入れる。
「奈都、ダンスうまかったよ。これ以上、練習しなくてもいいんじゃねえ」
「亜稀は言葉の練習をした方が良さそうだね。また家庭教師でもつけるか?」
「勘弁してよ。やるべきところでは、俺はちゃんとできるし」
曲が始まり、ダンスが始まっている。
奈都は必死だ。
響介のように亜稀と雑談しながらダンスは踊れない。
「奈都、視線はずっと僕を見て。足下は見ないで」
「はい」
「もっと力を抜いて、もっとにっこり。ダンスを楽しんで」
「楽しいよ」
奈都は微笑む。
「そうそう、可愛い。ステップも上手だ。あとは自信を持って。今度はチークダンスも教えてあげる」
「チークダンス?」
「奈都はダンスのレッスンは受けてなかったから、知らなくて仕方ないよ」
「うん」
「明日からはチークダンスに変えてみようか?」
「お願いします」
「僕らの前では敬語はいらないよ。亜稀を見てごらん。酷いもんだ」
「俺のどこが酷いんだよ」
亜稀が紅茶を淹れている。
砂時計をひっくり返した。
「まったく兄への敬意はないだろう?でも、外ではちゃんと兄と呼べる。俺から僕にも私にも使い分けできている。奈都も使い分けすればいいよ」
「うん」
ダンスの最後の挨拶をして、一曲終わった。
「響介も紅茶でいい?」
「僕の分もあるのか?」
「奈都の分を淹れたついで。奈都、お茶が入ったから、座って」
「亜稀、ありがとう」
シューズを脱ぐと、奈都はシューズを持ったままダイニングテーブルついて、床にシューズを置いた。響介も靴を脱いで、椅子に座った。
「蜂蜜は自分で入れる?」
「自分でする」
亜稀から蜂蜜を受け取って、奈都は紅茶に蜂蜜を入れる。
緊張がとけて、柔らかい笑顔が浮かんでいる。
三人でお茶を飲む。
「で、今日はどこに行ってきたんだよ?」
「海の見えるホテルでテーブルマナー。伊勢エビが難しかった」
「プールは入らなかっただろうな」
「水着は持っていかなかったから」
「プールは三人で行くんだからな。わかったか、響介」
響介が亜稀の頭を指先で弾く。
「痛ってぇ」
「おまえが僻むから入らなかったよ。春休みに入ったら、今度こそプールに連れて行ってやる」
奈都と亜稀が顔見合わせ、笑った。
奈都の足の怪我も癒えて、傷はよく見なければわからなくなった。時間が経てばもっと目立たなくなると言われた。
奈都は大学が決まっているので、学校の登校は自由登校になり、ほとんど家にいる。
一時は、多忙だった仕事が落ち着いたらしく、響介も家にいることが多い。
亜稀は学校が始まり、一人で出かけていく。
毎日、「俺も休みてぇ」と言いながら、出かけていく。
亜稀が出かけると、響介が奈都の体を抱き上げて、寝室に連れて行く。
朝から抱き合って、響介をたっぷり注がれる。
前も後ろもたっぷり抱かれて、失神して目を覚ますと、響介は奈都を連れて出かける。
二人きりのデートだ。
冬の海だったり、水族館だったり、ショッピングだったり。
毎日、いろんなところに連れて行ってくれる。
「おい、俺の飯は?」
帰ってくると、亜稀が不機嫌に言う。
響介は弁当をわたす。
「毎日、高級弁当でもいいけどさ。たまには奈都の鍋が食いたい」
亜稀が弁当を食べながら文句を言う。
「じゃ、明日は作るよ」
奈都が慌てて言うと、それを遮るように響介が言う。
「奈都が大学生になるまでに、いっぱいデートしたいんだ。邪魔をするな」
「俺、邪魔はしてないよ。毎日、学校に行ってるだろう?」
「鍋が食べたければ、おまえが作って食べればいい。そうしたら弁当を買わなくてもよくなる」
「一人の鍋なんて寂しいよ。俺だけ仲間はずれだ」
「響ちゃん、やっぱり毎日出歩きすぎだと思う」
「じゃ、一日中。奈都を抱いていてもいいのか?」
奈都の顔が真っ赤になる。
「響介、本当に子供できるぞ。奈都が大学に行けなくなる」
弁当を食べながら、亜稀はあきれながら響介に言う。
「入院中は奈都に、寂し思いをさせてしまったからね。その埋め合わせをしなくては」
「わたし、寂しくなかったよ。亜稀が毎日、来てくれていたから」
「それはそれで嫉妬するな」
「ごめんなさい」
奈都は響介に教育もされていた。
今まで『僕』と呼んでいた人称を『わたし』に変えるようにすることと、女性らしい上品な話し方や所作。
習慣はなかなか変えられない。
学校では意識して『わたし』と呼ぶように気をつけていたが、家に戻ると緊張が解けて『僕』に戻ってしまう。
社交界デビューを本格的にさせたいと言われて、出かけるときも可愛らしいワンピースやスカートをはいている。
テーブルマナーは両親が健在だった頃、習っていたが、それでも奈都は家の中でしか習っていない。家の机の上で習っていたことを、今は外の世界で習っている。奈都は世間を知らなすぎる。
ダンスの練習も響介に習っている。
「奈都、疲れてなかったら、お風呂に入る前にダンスの練習をしよう」
「着替えた方がいい?」
「練習用の靴だけ履いておいで」
「わかった」
奈都は優雅に、それでも足早に歩く。
(バタバタ走らない・・・)
響介に習ったように、背筋を伸ばして歩いて行く。
「響介、スパルタすぎ!奈都、前より綺麗になったけど、いっぺんに教えすぎ」
背後で亜稀が響介に文句を言っている。
「次の株主総会と会社のパーティーに連れて行きたいんだよ」
「俺もまた行くのか?」
「当たり前だ。両親が亡くなったんだ。僕とおまえで会社は大丈夫だと安心させないといけないだろう?」
「わかってるけどさ。奈都は今まで公の場所に出てないから無理させるなよ」
奈都は部屋に入って、体から力を抜く。
両親もこんなに早く旅立つとは思っていなかったのだろう。奈都は両親に守られてきた。
体の秘密も、奈都の成長を待って話すつもりだったのだろう。
最低限の教育は、確かに役立っているが、プレッシャーはいきなり克服できない。
家の中で練習するように準備されたダンスシューズを履いて、リビングに歩いていく。
響介もスリッパから靴に履き替えている。
手を差し出されて、そっと手を重ねる。
観客は食事中の亜稀だ。
「亜稀、音楽」
「へいへい」
父が愛用していたステレオのスイッチを入れる。
「奈都、ダンスうまかったよ。これ以上、練習しなくてもいいんじゃねえ」
「亜稀は言葉の練習をした方が良さそうだね。また家庭教師でもつけるか?」
「勘弁してよ。やるべきところでは、俺はちゃんとできるし」
曲が始まり、ダンスが始まっている。
奈都は必死だ。
響介のように亜稀と雑談しながらダンスは踊れない。
「奈都、視線はずっと僕を見て。足下は見ないで」
「はい」
「もっと力を抜いて、もっとにっこり。ダンスを楽しんで」
「楽しいよ」
奈都は微笑む。
「そうそう、可愛い。ステップも上手だ。あとは自信を持って。今度はチークダンスも教えてあげる」
「チークダンス?」
「奈都はダンスのレッスンは受けてなかったから、知らなくて仕方ないよ」
「うん」
「明日からはチークダンスに変えてみようか?」
「お願いします」
「僕らの前では敬語はいらないよ。亜稀を見てごらん。酷いもんだ」
「俺のどこが酷いんだよ」
亜稀が紅茶を淹れている。
砂時計をひっくり返した。
「まったく兄への敬意はないだろう?でも、外ではちゃんと兄と呼べる。俺から僕にも私にも使い分けできている。奈都も使い分けすればいいよ」
「うん」
ダンスの最後の挨拶をして、一曲終わった。
「響介も紅茶でいい?」
「僕の分もあるのか?」
「奈都の分を淹れたついで。奈都、お茶が入ったから、座って」
「亜稀、ありがとう」
シューズを脱ぐと、奈都はシューズを持ったままダイニングテーブルついて、床にシューズを置いた。響介も靴を脱いで、椅子に座った。
「蜂蜜は自分で入れる?」
「自分でする」
亜稀から蜂蜜を受け取って、奈都は紅茶に蜂蜜を入れる。
緊張がとけて、柔らかい笑顔が浮かんでいる。
三人でお茶を飲む。
「で、今日はどこに行ってきたんだよ?」
「海の見えるホテルでテーブルマナー。伊勢エビが難しかった」
「プールは入らなかっただろうな」
「水着は持っていかなかったから」
「プールは三人で行くんだからな。わかったか、響介」
響介が亜稀の頭を指先で弾く。
「痛ってぇ」
「おまえが僻むから入らなかったよ。春休みに入ったら、今度こそプールに連れて行ってやる」
奈都と亜稀が顔見合わせ、笑った。
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