花姫だという私は青龍様と結婚します

綾月百花   

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1   御嵩家の一員

4   身体検査

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 白い絹の着物にピンクの羽織を着た唯は、自室でみのりに淹れてもらったお茶を飲んでいた。

 朝のお務めの後は、特にやることがない。

 今までは高校に通っていたが、それもできなくなった。

 1年の終業式もそろそろだろう。

 唯がここに来て、一週間以上が過ぎた。

 相変わらす、屋敷も山も花盛りだ。

 唯は花粉症ではないが、花粉症の人なら、この山に入るのは躊躇うだろう。

 中庭の枯山水の模様が流れる川の模様に変わったが、相変わらず苔に花が咲き、添え木に植えられた木にも花が咲いていて美しい。


「唯様、御嵩家のしきたりで、花姫様には毎月一度、身体検査が行われます」


 達樹がみのりと並んで唯のそばに控えている。


「処女検査を受けていただきます」

「私、処女だよ。誰とも付き合ったことないし、好きな人もいなかった」


 唯は達樹に素直に答えた。

 16歳になったばかりの唯は、誕生日が来るまでは15歳だったわけで、まだ異性に興味はなかった。

 育った家も裕福だったためか、性格もおっとりしている。

 優しいけれど厳しい一面を持った母は、唯に習い事をたくさんさせていた。

 友達も習い事でできた友達くらいで、特別仲のよい友達はいなかった。


「私、まだ16歳になったばかりだよ」

「それでもしきたりなので、受けていただければなりません。特に今回の検査で処女であることが証明されれば、正式な妃候補になります。大切な検査なのです」


 達樹はどこまでもしきたりと言い続ける。


「みのり、準備を」

「はい」


 達樹は立ち上がると、唯の部屋から出て行った。

 開けていた襖を閉めて、部屋の前で待機をしているのだろう。


「唯様は初めてなので、困惑されてしまわれるかもしれませんが、慣れてしまえば、たいしたことではありません」


 みのりは、洋服箪笥から白いガウンを持ってきた。


「これに着替えていただけますか?」

「一日にいったい何回着替えるの?」

「今日は特別です」


 唯はガウンを受け取ると、その滑らかな質感にビックリした。


「シルクです。花姫様に相応しい高級品でございます」


 羽織の紐を解き、唯から羽織を脱がせ、着物も脱がせていく。

 下着はずっと身につけてはいない。


「ブラジャーははめたらいけないの?パンティーは?」

「基本的に屋敷では身につけません。パンティーは月のものがあるときだけ、着用を許されています。月のある時は、禊ぎも掃除も休みになります」

「月のある時って、生理のこと?」

「その通りでございます」


 滑らかな質感の絹のガウンを身につけると、ガウンの丈は膝丈だった。


「パンティー着たら駄目?なんかスカスカして落ち着かないよ」

「落ち着かなくても駄目です」

「他の花姫さんたちも受けるの?」

「もちろんでございます。時間で決められております。唯様の順番は最後ですよ」

「毎回、順番が変わるの?」

「年功序列でしょうか。一番、若い唯様は、最後になります」


 唯は頷いた。

 花姫の中で目立ちたくはない。序列があるなら従うのがベストだろう。


「さあ、参りますよ」


 みのりは唯の手を取ると、歩き出した。

 襖が開いた。

 達樹が開けて、唯が出ると襖を閉めて、結界を張っている。

 留守の間に誰かが侵入しないように、鍵の代わりだと言っていた。

 適度の距離を取って、達樹は唯たちの後からついてきている。

 今まで見たことのない扉を開くと、地下へと続く階段が見えた。


「どこに行くの?」

「地下神殿でございます」


 暗い階段には、オレンジに光るランタンが壁に付けられている。

 足下がわずかに見える。


「寒い」

「地下へと続きますからね。これからは、なにか上着を途中まで身につけましょうか?」

「途中までなの?」


 素足で石の階段を下りていく。


「しきたりです」

「しきたりばかりなんだね」


 階段を下りきると、広い空間が広がった。

 壁は白く、灯りはオレンジ色に光っている。一カ所だけ明るい光が灯っている。ベッドが置かれ、椅子が鎮座している。

 地底湖なのか、広い空間の一面は湖面になっている。

 神殿は静かだ。


「さあ、こちらへ」


 灯りが灯っている場所に、白衣を身につけた男性が立っていた。


「唯様、わたくしは、こちらで待っております。あの方は信頼してもいい方です。御嵩家の医師でございます」

「お医者様?」

「そうです。従順に。逆らってはなりません。いいですね?」


 みのりの手が唯の手を両手で握った。

 唯は頷くより仕方がなかった。


……
…………
………………


 身体検査は、言葉のままだった。

 身長、体重、体のサイズを測っていった。

 身につけていたガウンは、脱ぐように言われて、素っ裸だ。

 一瞬躊躇ったが、みのりの『逆らってはなりません』という言葉を思い出して、おとなしく脱いだ。

 相手は医師だ。

 他の花姫も同じ事をされているなら、唯も従わなければならない。

 簡単な問診と触診。

 血液検査をされて、最後に椅子に座るように言われた。

 唯は言われるまま、椅子に座った。

 椅子は動いて高く上がっていきながら、両足が開かれていく。


「あ、いや」


 椅子に座った時に、両手を拘束されていたので手は動かない。

 自分でも見たことのない場所が、晒されていく。

 眩しいほどの電灯が、唯の秘所に当てられている。


「少し触るぞ」

「いや、やだ」


 男の指が会陰を開き、膣口に触れる。


「完璧な処女膜です。一度も触れたことがないのですね。誰の気配もしません」

「だから、イヤだって言ったのに」

「これからも触れてはいけません」


 膣口に触れた指が後孔に触れる。


「こちらも触れていませんね」

「触るわけがないでしょ」


 唯は怒りながら言った。医師は苦笑した。


「あなたは初めてなので、忠告を差し上げましょう」

 医師は唯の後孔に人差し指の先端を刺した。


「いやぁ」


 突然信じられ倍場所に指を差し込まれて、唯は悲鳴を上げた。


「黙って聞きなさい」


 医師の声は地響きがするような低い声だった。

(怖い……)

 唯は唇を噛みしめて、悲鳴を飲み込んだ。


「どうしても男を受け入れなければならない時は、ここを使いなさい。処女膜をなくしたら、霊力があっても青龍様の妃候補から除外されます」

 医師の指が後孔から抜けた。

 屈辱的だ。


「お尻に男を受け入れるなんて、絶対にイヤ!ずっと処女でいる」


 唯は泣きながら、大声で言った。

 椅子が下がっていく。足も元通りに閉じた。


「検査は終わりです。ガウンを着て帰りなさい」


 唯は椅子から立ち上がると、ガウンを持って歩きながら着た。

 神殿の中は光り輝いていた。

 唯の霊力だ。

 神殿中の苔が広がり成長し花を付け、光り輝いているのだ。

 唯は、そのことに気付いていない。


「みのり」

「はい」

「お風呂の準備をして」

「畏まりました」


 唯がガウンをきちんと身につけたのを確認すると、みのりは「兄様」と声をかけた。


「唯様の護衛、お願いしたします。お風呂の準備をして参ります」

「了解した」


 みのりは階段を駆け上がっていく。
 
 その代わりに、唯の手を達樹が取った。


「足下、お気を付けてください」

「悔しい」


 唯は唇を噛みしめていた。

 噛みしめていないと、大声で泣きそうだった。

 涙が流れていく。

 真っ暗だった階段が、明るくなっている。

 唯の霊力だ。


「唯様、これ以上霊力を使ってはなりません」


 唯は達樹の言葉は耳に入ってこなかった。

 小さな苔の群生が一気に広がって、洞窟内に苔が生えて、花を咲かせている。

 白い花は暗闇で、光り輝く。

 秘めた場所は大切な場所だ。


『いつか好きな人と結ばれる場所です。触れてはいけませんよ』


 母が初潮を迎えたときに教えてくれた。

 なのに、医師とはいえ、知らない男に触られたと思うと怖気が走る。

 これから毎月、健康診断と言われる処女膜の検査が行われるのだろう。

(……気持ちが悪い)

 唯は階段から足を滑らせた。

 その体を、達樹が抱き上げる。

 唯は霊力の消耗で意識を失っていた。

 地下洞窟は、全体に苔が成長して、花を付け光り輝いていた。

 階段も上から下まで、花が咲いている。

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