花姫だという私は青龍様と結婚します

綾月百花   

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1   御嵩家の一員

5    正式なお妃候補になりました

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「こちらは青龍様からの贈り物でございます」

 唯が神社の掃除を終え、朝食を食べた後、御嵩家の従者たちが、部屋に訪ねてきた。

 従者は二十人ほどいた。

 白しかなかった着物だったが、従者が持ってきた着物は綺麗な色や花が舞うような美しい着物が何着もあった。いろんな色の羽織には、花がちりばめられていた。

 着物の他に化粧品や髪飾り、綺麗なお菓子と様々だった。

 唯はその光景を見て、ポカンとしてしまう。

 達樹とみのりは、畳に頭がつくほど頭を下げている。

「ありがとうございます。主人に代わってお礼を申し上げます」

 唯が何も言わないので、達樹が従者にお礼を言った。

「唯様、お礼をおっしゃってください」

 唯は慌てて、頭を下げた。

「ありがとうございます」

「おめでとうございます」

 一番年上の従者が微笑みながら頭を下げた。

 従者は部屋から出て行く。

「なにこれ?」

「青龍様が、唯様を特別な妃候補に選ばれた証ですね」

 達樹が唯の顔を見て、少し笑いながら言った。

 他の花姫たちがのぞきに来て、達樹は襖を閉じた。

「なにあれ?唯だけ特別扱い?」

「青龍様の本命って、唯なの?」

 真優と美鈴の声がした。

 達樹が指を横に振ると、声は聞こえなくなった。

 魔術を使ったのだろう。

「中の声も外へは聞こえませんので、ご安心ください」

「唯様、着物を着てみますか?どれも美しい着物ですよ」

「え、え、ファッションショー?」

「ファッションショーいいですね。せっかく青龍様からの贈り物ですから、袖を通さないのは失礼になります」

 みのりが並べられた着物を広げてみせる。

「私、着物より洋服の方が好きなんだけど」

「着物は花姫の正装ですよ」

「私、本当に花姫なの?」

「花姫の中でも、霊力の強い花姫です。自信を持ってください」

 みのりのテンションも上がっているようで、唯を立たせると鏡台の前に連れて行く。

「お兄様は廊下でお待ちください」

 唯はクスッと笑った。

 この兄妹は、兄よりも妹の方が強い。力の差はわからないが、みのりは遠慮なく兄を使い、兄に命令する。

「それでは、廊下で護衛しております」

 達樹が襖を開けると、他の花姫たちが倒れ込んできた。

 襖に耳を当てていたのだろう。

「失礼」

 達樹は襖を閉めると、襖の前に座った。

 他の花姫たちは、自分たちの部屋へと戻っていった。


……
…………
………………


 ピンクの着物に青とも緑とも取れる美しい色をした羽織を着て、神社へとお参りに行った。着物の柄は、すべて花だ。様々な花が描かれていたが、今、唯が着ているピンクの着物には、桜の花が刺繍されていた。羽織には大柄な花が大胆に刺繍されている。青緑の羽織を選んだのは、青龍様のカラーだとみのりに教えてもらったからだ。

 お礼を言うなら、喜んでもらいたかった。

 本殿の前でお礼を言って、みのりに連れられて、屋敷の中を案内される。

 屋敷は広く、神聖な場所もいくつもあるという。

 遠目から大きな桜の木が見えた。

「あれが、万年桜と申します。花姫が誕生されてから花が散ったことはないそうです」

「花姫は、私たち5人だけではないの?」

「文献でしか残っておりませんが、大昔にも唯様のようにどの花にも花を咲かせた花姫がおられたそうです。花姫は全国におります。御嵩家で生まれた霊力の強い花姫様だけが龍族の花嫁になられます。御嵩家で生まれていない霊力のない花姫様は、自分が花姫だとも気付かず、普通に生活しています」

「私も普通の女の子なのに」

 普通に幼稚園に通い、普通に小学校に通い、普通に中学校に通い、受験勉強してやっと高校生になった。

「霊力なんて、今までなかったのに」

「16歳の誕生日まで封印されてきたのです」

「だったら、ずっと封印してくれたらいいのに。私、高校に通いたい。だってね、一生懸命勉強して、やっと受かった高校だったんだよ」

 万年桜を見上げながら、唯はここに来て、初めて愚痴らしい愚痴を口にした。

「制服も可愛くて、部活はテニス部で、テニスウェアもワンピースで可愛かったんだ。やっとレギュラー入りできたのに、今までの努力、全部無駄だよ」

「唯様」

 みのりを困らせるつもりはないのに、唯は桜を見上げながら泣いていた。

「帰りたいよ」

 帰る家はないけれど、あの頃に戻りたい。

 急に雨が降り出して、みのりが唯の手を取る。

「お部屋に戻りましょう」

「うん」

 みのりに手を引かれながら、走るように屋敷に戻ってきた。

「青龍様が天に昇られたのでしょう」

「空を飛べるの?」

「青龍様でございますから」

 唯の髪をタオルで拭きながら、みのりは唯を部屋に備え付けられた風呂場へと連れて行く。

「体が冷えてしまわれたでしょう。お風呂でおくつろぎください」

「みのりも濡れたのに」

「わたくしは大丈夫ですよ」

 みのりが着物を脱がしてくれる。

「ゆっくり暖まってください」

 みのりは着物を持って脱衣所から出て行った。

 唯は言われるまま、お風呂に入った。

 その晩、唯に月のものが来て、久しぶりにパンティーを履いた。

 生理は不浄とされるので、翌朝からの禊ぎも掃除も休みになった。神社の中にも入れないので、唯は部屋で過ごすより仕方がなかった。

 部屋から出てはいけない決まりはないが、生理痛も酷かったし、誰にも会いたくなかった。

 達樹が結界を張ってくれたので、外での噂話は部屋には聞こえない。

 他の花姫たちとも顔を合わすこともなく、静かに1週間を過ごした。

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