花姫だという私は青龍様と結婚します

綾月百花   

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8   花姫たちが襲われています

5   鬼になった龍磨

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 花姫に産ませた赤子を口から出して、龍磨は赤子を見つめる。

 醜い姿をしている。

 赤い目に口は耳まで裂けている。白い角がすぐに二本生えてきた。

 もともと青龍だった龍磨も、100年の眠りを終えると綺麗な青龍の姿から鬼の姿に変わっていた。龍神にはなれるが鱗は生えてこなかった。青緑の瞳も赤く染まり鋭い牙が生えていた。白銀の鬣は角になり、美しい姿は、消えてなくなっていた。

 人の形になると、その姿は鬼だった。


「あの女を食べてから。花姫が食べたくて仕方がない」


 喉が渇き、花姫の血が飲みたくなる。

 花の香りのする甘い血。花姫ごとにそのにおいも味も違うが、花姫の力が強い方がうまい。

 口の中から、赤子の母親の心臓を取り出し赤子に持たせると、赤子は心臓を貪り食っている。

 日本中の龍神に捜索されているのは知っているが、喉が渇く。


「花姫が食べたい」


 最初に口にした兄嫁の花姫の味が忘れられない。

 龍磨が求めているのは、あの甘い血だ。血も肉もうまかった。

 あの時は、兄に嫉妬してあの花姫を奪うつもりだった。

 あれほど強い花姫の力を持つ花姫は見たことがなかった。その血肉のにおいに惑わされた。ほんの一噛みしただけで、体が鬼に変わった。

 あの花姫を奪い合うために戦い、二人とも痛手を負い湖に落ちたはずなのに、あの花姫は兄の傷を治し自ら力を使い果たし死んでしまった。

 龍磨もあの花姫を亡くし、悲しみながら100年の眠りについた。

 目覚めてからも力の強い花姫を探して彷徨ったが、あの花姫ほどの力を持った花姫は見つけられなかった。


「今見つけたら、俺はあの花姫を食うのか?」


 食べてしまえば、花姫は死んでしまう。

 兄から奪って花嫁にしようと思った記憶はあるが、今の龍磨には欲望しかない。

 ただ食べたい。

 花姫の屋敷に侵入するために、何重もの結界をくぐり抜け、龍磨も無傷ではいられないほどの傷を負ったが、花姫の屋敷で食べた花姫が龍磨の傷を癒やしている。


「花姫はどこにいる?」


 思いがけず赤子を生かして連れてきてしまった。自分だけではなく、この子にも花姫を食べさせなくてはいけない。


 名前を考えて、兄嫁の名前を思い出した。「ゆい」か。


「そなたはゆいだ」


 赤子は母親の心臓を食べ尽くし、手についた血を舐めている。


「ゆい、行くぞ」


 片腕に赤子を抱くと、龍磨は花姫のにおいのする方へと歩いて行く。

 花姫を食べるほど鬼になり、鬼になるほど、龍神の姿にはなれなくなっていった。

 今はもう龍神の姿になれない。完全に鬼になってしまった。

 血に濡れたみすぼらしい着物を身につけている。


「どこかで着る物を調達せねばな」


 赤子は生まれたままの裸で真っ赤な血に染まっているし、龍磨自身も血に染まった浴衣姿だ。


「まずは風呂と着る物だ」


 行き先を人間界の町に決めて、歩き出した。

 隣接する美咲街には、花姫の末裔が多くいる。霊力はないが普通の人間より美味いはずだ。

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