花姫だという私は青龍様と結婚します

綾月百花   

文字の大きさ
51 / 76
8   花姫たちが襲われています

9   お慕いしております

しおりを挟む


 寝室の机の引き出しの中から、唯の遺書が見つかった。


龍之介様、とても愛しています。17歳で龍之介様の子供が産めました。前世ではせっかく授かった赤ちゃんが産めなかったので、とても嬉しいのです。名付けも私にさせてくれて、ありがとうございました。

龍星、いい名前でしょう?

龍神様の中で一番強くなれそうな名前でしょう?

今、とても幸せすぎて怖くて、遺書をしたためています。

前世でも幸せでした。今も幸せです。龍之介様が愛してくださったお陰です。

もし、万が一、また私が死んでしまったら、どうかまた木の肥やしにしてください。

昔は、木の肥やしになることが、とても怖かった。本当は今も怖いけれど、木の肥やしになることで、生まれ変われるなら、木の肥やしにしてください。そして、また唯をと願ってください。龍之介様に会いたくて、転生できるかもしれません。次に生まれ変わったら、龍之介様のことを忘れているかもしれません。それでもまた龍之介様を好きになると思います。花姫の力がなくても妻に迎えてください。

死なないことを祈りながら、書いていますけど。私はやはり不安なのです。

龍之介様、幸せですけど、ずっと不安で怖いのです。

もし来征で会えるなら、平和な世の中でなんの不安もなく過ごせるように願っています。

龍之介様の妻、唯




 何度も手紙を読んで龍之介は唯を想う。

「唯を殺してしまった一番の原因は、俺にある。すまない唯」

 毎日、花姫の結界を何重にもかけていたのに、唯と抱き合った後、唯に結界を張るのを忘れて、唯から離れたのは龍之介だ。

 花姫が狙われているのに、力の強い花姫の霊力を解放したまま、唯から離れた。

 龍磨を追いながら、屋敷と屋敷の周りの山々に花が咲き乱れていた。

 神々が龍磨を撃っている間に、唯の元に戻るべきだった。


 亡骸は遺書の通りに木の肥やしにして、花姫の生る木に撒いた。その後に、花姫の生る木に「唯を」と願った。

 付けた花は唯の霊気とは違った。

 龍磨と子鬼の亡骸は燃やして灰にまで崩して山に封印した。

 二度と転生はしないだろう。

 母は龍之介のいない場所で泣いたが、龍之介は龍磨が許せなかった。

 目の色が違うだけの同じ顔をしていた兄弟だったが、弟の亡骸は幽鬼に変わっていた。

 花姫が食べられなくなり、人間界で花姫の末裔を食べて暮らしている間に、鬼から幽鬼へ変わり、神の姿は微塵もなくなっていた。

 花姫の屋敷を襲われた現場で、一人の花姫が出産したような形跡が見つかっていた。

 花姫の亡骸を集めるとき、不思議に感じていたことが繋がった。

 子鬼は花姫の体内で、霊気を当てて短時間で育てたのだろう。

 出来損ないの顔をした子鬼だった。

 その子鬼に唯と同じ名前を付けた龍磨は唯に一目惚れをしたのかもしれないが、龍磨に会わせた日に頭を下げて『唯を譲って欲しい』と頼まれても譲るつもりは微塵もなかった。

 龍太郎に、また謝られたが、どうしても許すことができなかった。


「唯はもういない」


 忘れ形見の龍星はすくすくと育ち、青龍になれるほど霊力を付けている。

 唯の霊気を授かり、幼い体に霊気をたっぷり溜め込んでいる。

 最近では、一緒に夜空を飛ぶことも増えてきた。

 龍星と飛んでいると、唯を乗せて飛んだ日を思い出す。

 大喜びで鬣を掴んでいた唯は、愛らしかった。

 また会いたい。

 また会いたい。

 会いたくて、毎年、唯をと願っている。

 もしかしたら、また100年後に再会できるかもしれない。

 花姫たちを亡くした神には、花姫を見せるようにしている。

 今のところ、同じ霊気の子は生まれていないようだ。

 100年経った後も、龍之介が青龍神社の神である限り、祈り続けるつもりだ。



しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

完結 辺境伯様に嫁いで半年、完全に忘れられているようです   

ヴァンドール
恋愛
実家でも忘れられた存在で 嫁いだ辺境伯様にも離れに追いやられ、それすら 忘れ去られて早、半年が過ぎました。

「無能」と捨てられた少女は、神の愛し子だった――。 凍てつく北の地で始まる、聖獣たちと冷徹公爵による「世界一過保護な」逆転生活。

秦江湖
恋愛
魔法適性「鑑定」がすべてを決める、黄金の国ルミナリス。 名門ベルグラード公爵家の末娘アデリーンは、十五歳の鑑定式で、前代未聞の『鑑定不能(黒の沈黙)』を叩き出してしまう。 「我が家の恥さらしめ。二度とその顔を見せるな」 第一王子からは婚約破棄を突きつけられ、最愛の三人の兄たちからも冷酷な言葉とともに、極寒の地「ノースガル公国」へ追放を言い渡されたアデリーン。 着の身着のままで雪原に放り出された彼女が出会ったのは、一匹の衰弱した仔狼――それは、人間には決して懐かないはずの『伝説の聖獣』だった。 「鑑定不能」の正体は、魔力ゼロなどではなく、聖獣と心を通わせる唯一の力『調律師』の証。 行き倒れたアデリーンを救ったのは、誰もが恐れる氷の公爵ゼノスで……。 「こんなに尊い存在を捨てるとは、黄金の国の連中は正気か?」 「聖獣も、私も……お前を離すつもりはない」 氷の公爵に拾われ、聖獣たちに囲まれ、これまでの不遇が嘘のような「極上溺愛」を享受するアデリーン。 一方で、彼女を捨てた黄金の国は、聖獣の加護を失い崩壊の危機に直面していた。 慌ててアデリーンを連れ戻そうとする身勝手な王族たち。 しかし、彼らの前には「復讐」の準備を終えたアデリーンの兄たちが立ちはだかる。 「遅いよ。僕らのかわいい妹を泣かせた罪、一生かけて償ってもらうからね」 これは、すべてを失った少女が、真の居場所と愛を見つけるまでの物語。

夫と息子に邪険にされたので王太子妃の座を譲ります~死に戻ってから溺愛されても今更遅い

青の雀
恋愛
夫婦喧嘩の末に置き去りにされた妻は、旦那が若い愛人とイチャついている間に盗賊に襲われ、命を落とした。 神様の温情により、10日間だけこの世に戻った妻と護衛の騎士は、その10日間の間に心残りを処分する。それは、娘の行く末と……もし、来世があるならば、今度は政略といえども夫以外の人の妻になるということ。 もう二度と夫と出会いたくない彼女は、彼女を蔑ろにしてきた息子とも縁を切ることを決意する。 生まれかわった妻は、新しい人生を強く生きることを決意。 過去世と同じ轍を踏みたくない……

そのご寵愛、理由が分かりません

秋月真鳥
恋愛
貧乏子爵家の長女、レイシーは刺繍で家計を支える庶民派令嬢。 幼いころから前世の夢を見ていて、その技術を活かして地道に慎ましく生きていくつもりだったのに—— 「君との婚約はなかったことに」 卒業パーティーで、婚約者が突然の裏切り! え? 政略結婚しなくていいの? ラッキー! 領地に帰ってスローライフしよう! そう思っていたのに、皇帝陛下が現れて—— 「婚約破棄されたのなら、わたしが求婚してもいいよね?」 ……は??? お金持ちどころか、国ごと背負ってる人が、なんでわたくしに!? 刺繍を褒められ、皇宮に連れて行かれ、気づけば妃教育まで始まり—— 気高く冷静な陛下が、なぜかわたくしにだけ甘い。 でもその瞳、どこか昔、夢で見た“あの少年”に似ていて……? 夢と現実が交差する、とんでもスピード婚約ラブストーリー! 理由は分からないけど——わたくし、寵愛されてます。 ※毎朝6時、夕方18時更新! ※他のサイトにも掲載しています。

辺境伯夫人は領地を紡ぐ

やまだごんた
恋愛
王命によりヴァルデン辺境伯に嫁ぐことになった、前ベルンシュタイン公爵令嬢のマルグリット。 しかし、彼女を待っていたのは60年にも及ぶ戦争で荒廃し、冬を越す薪すら足りない現実だった。 物資も人手も足りない中、マルグリットは領地の立て直しに乗り出す。 戦しか知らなかったと自省する夫と向き合いながら、少しずつ築かれていく夫婦の距離。 これは、1人の女性が領地を紡ぎ、夫と共に未来を作る「内政×溺愛」の物語です。 全50話の予定です ※表紙はイメージです ※アルファポリス先行公開(なろうにも転載予定です)

大根令嬢の雑学無双、王弟殿下を添えて。~ 前世を思い出したので、許婚をほったらかして人助けしまくります!!

古森真朝
恋愛
気弱な伯爵令嬢のカレンは、自分勝手な婚約者レナートに振り回されていた。耐え続けていたある日、舞踏会で何者かに突き飛ばされ、階段から落ちてしまう。 その傷が元で儚く……なるかと思いきや。衝撃で前世を思い出したカレンは一転、かの『ド根性大根』みたいな超・ポジティブ人間になっていた。 『モラハラ婚約者の思惑なんぞ知るか!! 今度こそ好きなことやって、目いっぱい幸せに長生きするんだから!!!』 昔ひたすら読書に耽って身に着けた『雑学』を武器に、うっかり採れ過ぎた作物や、開墾しようとすると不幸に見舞われる土地、不治の病にかかった王族、等々の問題をどんどん解決。 領地の内外で心強い友人が出来たり、いつの間にかものすごく有名になっていたり、何かと協力してくれる王弟ヴィクトルから好意を寄せられたり(注:気付いてない)する中、温かい家族と共に仕事に励んでいく。 一方、前世から因縁のある人々もまた、こちらに転生していて――

理想の男性(ヒト)は、お祖父さま

たつみ
恋愛
月代結奈は、ある日突然、見知らぬ場所に立っていた。 そこで行われていたのは「正妃選びの儀」正妃に側室? 王太子はまったく好みじゃない。 彼女は「これは夢だ」と思い、とっとと「正妃」を辞退してその場から去る。 彼女が思いこんだ「夢設定」の流れの中、帰った屋敷は超アウェイ。 そんな中、現れたまさしく「理想の男性」なんと、それは彼女のお祖父さまだった! 彼女を正妃にするのを諦めない王太子と側近魔術師サイラスの企み。 そんな2人から彼女守ろうとする理想の男性、お祖父さま。 恋愛よりも家族愛を優先する彼女の日常に否応なく訪れる試練。 この世界で彼女がくだす決断と、肝心な恋愛の結末は?  ◇◇◇◇◇設定はあくまでも「貴族風」なので、現実の貴族社会などとは異なります。 本物の貴族社会ではこんなこと通用しない、ということも多々あります。 R-Kingdom_1 他サイトでも掲載しています。

側妃の条件は「子を産んだら離縁」でしたが、陛下は私を離してくれません!

花瀬ゆらぎ
恋愛
「おまえには、国王陛下の側妃になってもらう」 婚約者と親友に裏切られ、傷心の伯爵令嬢イリア。 追い打ちをかけるように父から命じられたのは、若き国王フェイランの側妃になることだった。 しかし、王宮で待っていたのは、「世継ぎを産んだら離縁」という非情な条件。 夫となったフェイランは冷たく、侍女からは蔑まれ、王妃からは「用が済んだら去れ」と突き放される。 けれど、イリアは知ってしまう。 彼が兄の死と誤解に苦しみ、誰よりも孤独の中にいることを──。 「私は、陛下の幸せを願っております。だから……離縁してください」 フェイランを想い、身を引こうとしたイリア。 しかし、無関心だったはずの陛下が、イリアを強く抱きしめて……!? 「離縁する気か?  許さない。私の心を乱しておいて、逃げられると思うな」 凍てついた王の心を溶かしたのは、売られた側妃の純真な愛。 孤独な陛下に執着され、正妃へと昇り詰める逆転ラブロマンス! ※ 以下のタイトルにて、ベリーズカフェでも公開中。 【側妃の条件は「子を産んだら離縁」でしたが、陛下は私を離してくれません】

処理中です...