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Side愛梨、楸、薫、亮
しおりを挟む大手プロダクションに特攻した。
愛梨は清楚な白いワンピースを着ていった。
楸と薫と亮は、愛梨に合わせるように、ラフな白のシャツにジーンズ姿だ。
「これは、どういう事でしょうか?」
スカウトしてくれたプロデューサーは、四人で現れたことに驚きを見せていた。
「私はもともとangelの愛梨でした。彼らと共に高校3年間歌ってきました。けれど、オーディションの時、キーボードの間にカミソリの刃を仕掛けられて、指に大怪我を負ってしまいオーディションでは演奏も歌も歌えませんでした。三人が舞台に立って歌ってくれたらそれでいいと思っていたんですけど、一人残されて寂しくて、心が壊れそうになったとき、一人で活動を始めました。今でも三人と一緒に歌いたい。昨日、私をいらないと排除したプロデューサーがスカウトに来ましたけど、私をスカウトしてくれたここのプロダクションが気に入ったんです。三人と私の歌を聴いてください」
「少し待ってくれるか?」
「はい」
スカウトしてくれたプロデューサーが、急いで部屋から出て行った。
三十分経って、プロデューサーが戻ってきた。
「歌を聞かせてください」
「はい。お部屋を一つ貸してください」
「案内させる。いい歌を聴かせてくれ」
プロデューサーがまた部屋を出て行った。
「聞いてくれるって。プログラム入っているよね?」
愛梨は首を傾けて、微笑んだ。
胸を射貫くような微笑みは、高校時代よりずっと進化している。
微笑まれただけで、惚れてしまいそうだ。
「バッチリだ」
「きっちり入ってる」
「任せとけ」
オーディション会場はレコーディングスタジオだった。
そのまま録音できる部屋だ。
「ドラムはお持ちですね。広げるのが大変でしたら、こちらの物を使っていただいても構いません」
「ありがとうございます。自分のドラムを使わせていただきます」
亮は丁寧に案内してくれた女性に頭を下げて、準備をしていく。
愛梨も自分のキーボードを組み立てて、タオルでキーの部分をすっと拭く。
カミソリが入っていてからの習慣だ。
この行為をしないと、不安になる。それほど、指を切り裂いたショックは大きかった。
薫も楸も音の調整をしている。
今回は、愛梨の曲の伴奏に楸のバイオリンが音色を放つ。
愛梨の声を邪魔しない程度に、3人が調節してくれた。
angelの曲は元気いっぱいに愛梨が演奏して歌う予定だ。
ガラスを通して、たくさんの人が集まってくる。
部屋中に人が溢れかえったところで、扉が開いて、プロデューサーが顔を出した。
「準備できたら、始めてください」
「はい」
愛梨はみんなを見つめた。
皆の視線が愛梨に向けられている。
愛梨は頷いた。
高校最後に歌えなかったプログラムを最初に弾き、歌う。
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