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しおりを挟む窓の外には少しだけ雪が降っている。
「ホワイトクリスマスだ」
差出人不明のクリスマスプレゼントは今年も届くのだろうか。
終業式の今日が終われば冬休みに入ってしまうのでしばらく奏多を見ることはできなくなる。
今日は見れるだけ見てやろうと心に決めた。
「おはようございます」
後ろから生徒に挨拶をされたので振り返って言葉に詰まった。
この子は…。
小さい背に女子とも間違えそうなほど可愛い顔立ち。
「おはよう」
何でもないような顔を必死で作り挨拶を返した。
奏多の隣によくいるΩの子。
名前は安藤和泉というらしい。
この子は奏多と優一のことを知っているのだろうか。
いや知るはずもない。
奏多が自分から言うとも思えないし優一も和弘以外に言ったことはない。
優一を見て動かない和泉にどうしていいかわからず首を傾げた。
「先生は、Ωですよね?」
「うん。そうだよ」
和泉が知っていることに驚きはない。
何故なら、優一がこの学校に勤務しているのはΩの生徒が発情期などになってしまった際に対処する人間がいるためだからだ。
大体の生徒は優一がΩであることを知っているだろう。
この学校の教育方針のおかげか時代の流れなのかΩというだけで馬鹿にしてくる生徒は一部を除いていない。
「どうして?」
「相談に乗って欲しくて…」
困ったように涙目にしながら見上げてくる和泉は可愛い。
Ωの自分でもドキッとしてしまう。
これはαである奏多ならイチコロだろうな、と思いながら場所を変えようと提案した。
生徒の相談に乗る時用に作られた部屋であるカウンセラー室についたので和泉を椅子に座らせた。
「何か飲もうか。カフェオレでいい?」
ブカブカのセーターを着られ両手を合わせて擦っている和泉は小動物みたいだ。
自分の分と和泉と分を入れて向かい側に優一と座る。
カフェオレを飲むと甘さが口の中に広がる。
自分で言うのも何だがコーヒーを淹れるのは得意だ。
和泉が話し出すまで待とうと優一から口を開こうとはしない。
それが和泉にも伝わったのかゆっくりと小さな声で話し始めた。
「発情期がキツイんです…」
ビクッと自分の指が動いてしまった。
ただ顔には出なかったようで和泉は気にせず話し続けてくれた。
和泉の話はこうだ。
発情期が人よりもキツく好きな人に迷惑をかけてしまう。
薬でも抑えられない、楽になるためにはαに抱いてもらうしかないのだという。
正直、いいなと思ってしまった自分を殴りたい。
人それぞれ違った悩みがあるのは当たり前だ。
それを羨んでしまうなど。それも生徒の悩みを。
自己嫌悪に浸りたいが今は和泉の“悩み”に返事をしなくてはいけない。
発情期がきたことがない優一にとってこの手の相談は苦手だった。
なんて答えるのが正解なのだろう、と悩んでしまう。
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