婚約者は俺にだけ冷たい

円みやび

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気持ち悪い。
頭が痛くて吐き気がする。
「明日から冬休みですが…」
今日も長い話しをしている校長のマイクを通した声が頭に響く。

奏多がそういうことを自分以外の子としているのは知っていた。
誘いに断らないと聞いたことがあった。
生徒と距離を取りがちな自分はその噂を誰に聞いたのか忘れてしまったがショックが大きかったのを覚えている。

それから奏多がΩの子や女の子といるのを見るたびにきっとそういうことなのだろうとわかっているつもりだった。

しかし今日、和泉に直接言われてリアルに想像してしまった。
今までは奏多の相手の子をあまり知らなかったから耐えられた。
和泉と少し話した後に聞いてしまったから急に知り合い同士がsexしているのだと生々しくに感じた。

今すぐここから出ていってベッドで横になりたい。
そして眠ってしまえば嫌なことを考えずに済むだろう。

「おい、大丈夫か」
余程顔色が悪いのか和弘が横からこっそりと支えてくれる。
大丈夫だと返事をしたいのに口を開けば朝食べたものが出てきてしまいそうで小さく頷いた。

付き合いの長い和弘には優一の体調が相当悪いことが伝わってしまったらしく今すぐ出ていかせてもらえと言われてしまう。

大丈夫だから、と安心させるように首を振って俯いていた顔を上げた。

今日を逃してしまえば奏多と会えるのは冬休みが明けてからになってしまう。
もう少しの時間しかないのなら一秒でもこの目に焼き付けておきたい。

こんな一人の生徒のことばかりを考えているのは教師失格だと思っていても視線が勝手に奏多を探してしまう。

奏多は友達たちとコソコソと話しながら小さく笑っている。
今日も元気そうだ。
奏多の笑顔につられて優一の口角もほんの少しだけ上がる。

奏多の顔を見ていると今日聞いたことも忘れて気持ち悪かったのがスッとマシになったような気がする。
「終わったらすぐ抜けろよ。お前クラス持ってないから大丈夫だろ」
周りに聞こえないように小さい声で心配してくれる和弘に今度は声を出してありがとうと呟いた。

その時、友達の方を向いていた奏多の視線が優一に向けられた。
その目は真っ直ぐだったが奏多の感情を読み取ることができなかった。

優一もその視線に囚われ、数秒の間大勢の生徒がいる中で奏多と二人だけになったような感覚に陥った。

が、それも一瞬でまたスッと奏多の視線はどこかへいってしまった。

奏多は何を思って優一の方を見たのだろう。
昔は奏多が何も言わなくても大体のことはわかっている自信があったが今は少しのこともわからない。
それが奏多と優一の今の距離を示していて心がズキリと傷んだ。



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