妄想の館

守 秀斗

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第7話:和美さんの依頼

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 次の日。

 ビクビクしながら私は職場へ行く。いきなり上司に呼ばれて、貴賓室でオナニーの件を詰問されたうえ、さらしものになってクビ。なんてことにならないかしら……。

 でも、実際は職場の皆さんの態度は変わらない。どうやら、和美さんがうまくしてくれたらしい。ああ、よかった。

和美さんは忙しいのか、私の仕事場には来なかった。お礼を言おうと思ったけど、私も恥ずかしくて、秘書室に会いに行けなかった。

……………………………………………………

 そして、週末の昼休み。
 私は秘かに小会議室に和美さんに呼ばれた。

「理奈ちゃん、例の監視映像削除しておいたから、安心してね」
「は、はい、ありがとうございます」
 
 貴賓室でオナニーしたことを思い出して、顔が真っ赤。ああ、恥ずかしいわ。でも、和美さんには感謝しないと。

「でもねえ、ちょっと問題が起きてねえ」
「え、どんな問題ですか」

「絨毯が濡れてるのは、まあ、業者に洗浄してもらえばいいけど、あなたが壊したグラスだけどかなりの高級品らしいの。百万円もしたんだって」
「え、そうなんですか。本当に申し訳ありません」
「おまけに、何かの記念品らしく、まあ、買い直すとかは不可能なのよ。私、すごく怒られちゃった」

 私はますます恐縮して、頭を下げる。

「……本当にご迷惑かけて、申し訳ありません……」
「いいわ……でも、うふふ……理奈ちゃん、なかなかセクシーだったわよ、あの裸でオナニーしている姿。すごく色っぽい姿だったわ、あそこから噴き出すなんて」

 な、なに、何でそんなこと言うの。
 もう、忘れてほしいのに。

 何だか急に淫らな表情になる和美さん。
 え、なんなの。
 こういう表情の和美さんって初めて見るなあ。

「まあ、ちょっと座りなさいよ」

 私を会議室の椅子に座らせる。
 和美さんは部屋の鍵を閉める。
 何かしら……。

「貴賓室での行為って、あなたの願望でしょ。したかったんじゃないの、ずっと、あういうこと」
「え、あの、どういう意味ですか」

 スマホを取り出す和美さん。そして、動画を見せる。私が全裸になって、貴賓室でオナニーしている。私があそこの穴に指を出したり入れたりしている。恥ずかしくて、顔が真っ赤になる。

「これ、削除する前に私のスマホに移したのよ」
「……あの、何でそんなことしたんですか」

「それはねえ、あなたに手伝ってほしいことがあるんだけど」
「ど、どういう意味ですか、どんなことですか」

「出演する予定の女の子が急病で入院しちゃってねえ。だから、他にいないかなあって思ったら、理奈ちゃんがいいなあって思って」
「あの出演って、何に出演するんですか」

「私の一家の別荘で秘密のパーティがあるんだけどね。お金持ちが集まるの」
「はあ……秘密のパーティってなんですか」
「あなたの小説に出てくるみたいな感じねえ」
「え、小説って」

 ニヤニヤ笑う和美さん。
気が動転してしまう私。

「あの、もしかして私のパソコン見たんですか」
「うん、だって、画面に文字がずらりと並んでいたら誰でも見るでしょ」

 もしかして、先日、和美さんが来た時かしら。
 えー、そういえば焦ってたから、もしかして、ワープロソフトの画面、そのままだったの。

「え、あの、もしかして中身を読んだんですか」
「そうよ。へー、理奈ちゃんってこういうのが好きなんだあって思って、それもスマホに転送しちゃった」

「そんなあ、ひどいですよお。その、私の秘密って言うか、あの、何て言いますか、勝手に人のパソコンの中を見るなんてひどいです……」
「うふふ、ごめんなさい。ただ、思いっ切りずらずらとすごい内容の文字の羅列だったもんだから、面白がって転送しちゃったわ。そして、画面を小さくして知らんぷりしてたんだけどね。でも、まあ、そういう小説を書いてもいいんじゃないかなって思ったんだけど、その時はね」

 また、ニヤニヤ笑いの和美さん。
 怯えてしまう私。
 急に怖い人に見えてきた。

「でもねえ、この前のあなたのオナニーを見た時、思い出したの。妄想の館って設定だけど、あなた、貴賓室でそれを頭の中で想像して、自分でしてたんじゃないの」
「え、あの、その……」
 
 実際のところ、妄想の館でオナニーをさせられているのを頭の中で浮かべていた。
 恥ずかしくなって、頭が混乱してしまう私。
 
「和美さん、あの、何がしたいんですか」
「まあ、別にあなたを脅迫しようとか、虐めようとか思ってないわよ。あなたは虐めてもらいたいみたいようだけどねえ、いろんな変態行為で。特に彼氏の智弘君に」

 ますます顔が赤くなってしまう私。あの小説の内容。最近は彼が私をなぶりまくる展開ばかりだもん。おまけに和美さんまで登場させてしまった……。

「……その、虐められたくはないです……」
「本当かしら……うふふ、違うでしょ、おしっこするのを見せたいんでしょ」
「え、そんなことは……」
「あるんじゃないの、あなたの願望じゃないの、浣腸もされたいんじゃないの」

 何だか淫靡な感じで私の隣に座って、顔を寄せてくる和美さん。あの小説に登場してくる和美さんみたいだわ。ドキドキしてきた。いきなりハレンチなことを言われてしまって戸惑ってしまう。

「あなた、智弘君の前でオナニーもしたかったんじゃないの」
「し、したくはないです……」
「ウソはいけないわ。小説ではそんな描写ばっかりだけど。もっとすごいのもあったわねえ。浣腸されちゃうとか、ウンチを噴き出すのよねえ、理奈ちゃんが全裸になって四つん這いになって、広い浴室で、それを撮影までされて辱めを受けて、興奮するのよねえ、理奈ちゃんは」

「あの、和美さん。私を辱めて喜んでいるんですか」
「辱めを受けたいんじゃないの、あなたは」
「現実には嫌ですよ」
「でも、彼氏にはされたいんでしょ」

 そうなのよねえ。彼にはされたいの、見られたいの、虐められたいの。
 ああ、思いっきり、私を辱めてほしい。

「別にいいじゃない、あなたの願望なら。好きな人には何をされてもいいんじゃない」
「そうかもしれませんけど……あの、ところで、手伝ってほしいことってなんですか」
「あなたの小説に近いことねえ」
「どういうことですか……」

 クスクス笑いながら、和美さんが私に向かって言った。

「大勢の男の人の前で裸になって、おしっこしてもらいたいのよ」

 私は和美さんの言葉に呆然とする。

「さっき言ってたパーティの件ですか。どういうパーティですか」
「暇な金持ちが集まって、SMショーを見せるの。それの前座で放尿ショーに出演予定の女の子が急病で入院しちゃったのよ。そんなわけで代わりに理奈ちゃんに出てもらえないかなあって」
「い、いやですよ。そんなこと……」

 すると、急に怖い顔で私をにらみつける和美さん。

「じゃあ、この映像を会社のお偉いさんに見せるけど、それでもいいの。あなたクビよ」
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