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プロローグ
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記憶。視界。気力。
今の私に無いもの。
関節が痛い、砂でも入ったかな。
目を開けないと。でも、どうしよう、このまま眠る方が楽かもしれない。
あぁ、眠いなぁ。
そもそもどこなんだっけ、ここ。背中の感触は…ザラザラしてる? やっぱり砂みたい。
まって、背中の感触? 服は? …あれ?
「ちょっとまって私の服っ! だっ、誰も見てないでしょうねっ!?」
どうやらけだるさより羞恥心の方が強いらしい、いや見事。
跳ね起きると服の中から大量の砂が流れ出た。
…心配して損をした。
近場に落ちている愛用のエナジーガンを手に取り辺りを見渡す。
「………こりゃまた」
きっと、砂が入ったプラスチックの箱に一匹だけ入れられた蟻はこんな気分なんだろうなぁと思う。…まぁ損傷したメモリーの片隅に情報が残ってるだけで実物は見たこと無いんだけども。
炎天下…という程でもなく、比較的過ごしやすい。これならば当分はオーバーヒートする心配はしなくて良さそうだ。
立ち上がって砂を払い、大きく伸びをする。
近くで砂が崩れる音がした。
「…殺気?」
殺気を感じて身を反らす。
刹那、黒い鎌のような物が身体を掠めた。
「ちょっと待ってよ…いや確かに実物は見たこと無かったケドさ…」
蟻。正式にはなんと言うのか分からないが、とにかく蟻らしき生き物。一般的ではない所といえば…まぁ、サイズ。どこの世界に足だけで何メートルもあるような蟻が存在していると言うのだろう。
いや、そもそもその常識が間違っている?
メモリーの損傷が予想より大きかった?
…蟻は一般的にこのサイズだった…?
「んなわけっ! あるかぁぁぁぁぁぁ!!」
銃を構える。エナジーガンの取り扱いについての記憶は、幸いにも損傷していなかった。
足の付け根に照準を合わせ、引き金を引く。
静かな砂丘に鳴り響くのは銃声…ではなく、カチカチという虚しいトリガー音。ちなみに鳴り響くなんて大層な鳴り方はしていない。…ちょっと盛りましたゴメンナサイ。
「ちょ!? なんでっ!?」
「始めまして。私はイア」
「これはどうもご丁寧に…ってそうじゃないっ! イアっ! エナジーガン起動してっ! はやくっ! 死ぬっ!!」
「………不正ログイン防止の為、トリガー接続を解除するにはパスワードが設定されています。パスワードをお願いします」
振り下ろされる巨大な黒い足を体術のみで回避し続ける。
機械というのはこういう時にスタミナを気にしなくて済むので楽で良い。
「パスワード…パスワードねぇ…くっそー…データが破損してる…」
「強制接続を行いますか?」
「お願いっ!」
「…臨時接続中…臨時接続中…マスターコア、接続完了。マキナセラフィーAT。Ver4 、N8528、型番の一致を確認。帰還を歓迎します。マイマスター、ブレイズ」
「ブレイズ…そうだ…私は…ブレイズ…! イアっ!」
「要件を」
「ブレードシフトッ!」
銃のエネルギーの出力を最大まで上げた、細く長い、継続した射撃。
火力にエネルギーの大半を費やす為、射程そのものは極めて短くなる。
まさに長い時間をかけて練り上げたような青い刀身。
この一時、私の愛銃は一振りの剣と成る。
「さぁて、暴れちゃいますか!」
半身になって蟻の攻撃を避け、半円の軌道を華麗に描き足を一本切り落とす。
薄緑色の液体が噴き出した。汚い。
まずい、避けないと精神的に人生が終わる。
蟻の腹の下を駆け抜けて体液回避。
流石の反射神経、我ながら惚れ惚れする運動機能だ。
もし同族が私を見たら惚れてしまうかもしれない。
駆け抜けざまに腹を裂いてこんなに体格差のある野生動物(?)を一匹仕留めてしまうなんて手際が良すぎやしないか?
などと一人で自分を褒め殺している所なんて同族に見られたら、一歩どころか更にもう二歩くらい引かれてしまいかねないなんて事は百も承知なのである。
つまりは現実逃避。誰にでも備わっている最強の緊急回避法だ。
ちなみに異論は受け付けてない。
…まぁそもそも同族なんてものは見渡す限りどこにも居ないのだが…。
「あはは…いや確かに? 私のデータベースにも? 蟻は群れを作るってしっかり書いてありますが…?」
蟻の死骸の上に登って見渡した結果、視認できるだけでも数十匹、いやもっといるかもしれない。黒い絨毯がうぞうぞと動いているサマはなんというかこう…シンプルに気持ち悪い。
精神衛生上よろしくない。
ブレードで一匹ずつ処理するなんて…いや出来ないことはないが…あの中を駆け抜けるなんて正直どこまでも遠慮したい。
どのくらい嫌かというと、両手を縛られて下水道の中に叩き落とされて這い上がってこいって言われるくらい嫌だ。…ん? なんだその鮮明なイメージ。どこのメモリーから引っ張り出した私。
ま、いいか。所詮現実逃避の産物だろうし。
「イア、大気中の汚染濃度と現状リキャストゼロですぐに起動できるシステム教えて」
「測定中…大気中の汚染濃度78%。現在使用可能なシステムはブレード、ラピッド、ブラスターの三種類です。汚染濃度20%をエネルギーに変換可能です。変換しますか?」
「残存エネルギーは?」
「82%です」
「変換によって期待できる火力の上昇値」
「最大で4%の火力向上が期待できます」
「じゃいいや。変に汚染処理して怒られるのも嫌だし」
あれ? 怒られる? 誰に? 重要な所はいつも記憶が無い。
重要な気もするが、記憶が無いのだから考えても仕方ない。人間と違って、そのうち思い出す類の話ではないのだ。
記憶した場所そのものが欠けているのだから。
「イア、ブラスターシフト」
「ブラスターシフト起動」
ガギンと金属音を立てて銃口が開く。キィィィなどといういかにも未来感溢れる格好いいSEなんて流れない。何故だ。
ブラスターシフトとは、単騎強襲型のブレードとは異なり、範囲殲滅を目的とする装備である。
エナジーガンそのものの形状が変化する為、ブレードのような片手でも振れる持ちやすい物ではなく、両手持ちの、一種の砲台のようになる。
「吹っ飛べっ!!」
着弾点を中心に衝撃波を拡散する。
直接的な威力こそ決して高い物ではないが、着弾時のインパクトは、人間くらいの重さならば数百メートル吹き飛ばす程の圧力を持つ。
蟻如きこの程度で十分だろ…と先程処理した蟻の死体の上で吹き飛ぶ蟻達を見物していたのだが、気がついたらその死体と一緒に空を散歩していた。
馬鹿だ。私はこんなに馬鹿だったのか? いや、メモリーが欠けているせいだ。きっと。そうに違いない。
メモリーが欠けてさえいなければこんなに近距離でブラスターを使うなんて、そんな幼稚園児でも間違えなさそうな致命的なミスを犯すなんて事は…しなかったハズだ…多分…うん、そう思いたい。
思うだけなら自由だ。あぁ自由って素晴らしい。
自由が素晴らしいのはさておき、どこまで飛ばされるんだろう…コレ。
現実逃避芸は最早十八番である。仕方ない。目を覚ました場所が既に非現実的なのだから、そりゃ逃げたくもなる。
そんな事を考えていたのだが、突然全身に衝撃を感じ、次の瞬間にはシステムがシャットダウンしていたのだった。
「いつつ…」
頭がクラクラする。幸い壊れてはいないらしい。
こんな人気の無い所で壊れて意識があるまま風化していくなんて、それだけは嫌だ。
「イア、ここは?」
「…………」
「イア?」
「情報がロックされています」
「はぁ?」
「…開示できる情報が一件ありますが、開示しますか?」
「あー…うん、お願い」
「ここは、籠庭」
「かご…にわ…?」
「はい。マイマスター、ブレイズ。あなたは、籠庭に選ばれました」
籠庭の姫の長くて短い旅路が今、始まる。
今の私に無いもの。
関節が痛い、砂でも入ったかな。
目を開けないと。でも、どうしよう、このまま眠る方が楽かもしれない。
あぁ、眠いなぁ。
そもそもどこなんだっけ、ここ。背中の感触は…ザラザラしてる? やっぱり砂みたい。
まって、背中の感触? 服は? …あれ?
「ちょっとまって私の服っ! だっ、誰も見てないでしょうねっ!?」
どうやらけだるさより羞恥心の方が強いらしい、いや見事。
跳ね起きると服の中から大量の砂が流れ出た。
…心配して損をした。
近場に落ちている愛用のエナジーガンを手に取り辺りを見渡す。
「………こりゃまた」
きっと、砂が入ったプラスチックの箱に一匹だけ入れられた蟻はこんな気分なんだろうなぁと思う。…まぁ損傷したメモリーの片隅に情報が残ってるだけで実物は見たこと無いんだけども。
炎天下…という程でもなく、比較的過ごしやすい。これならば当分はオーバーヒートする心配はしなくて良さそうだ。
立ち上がって砂を払い、大きく伸びをする。
近くで砂が崩れる音がした。
「…殺気?」
殺気を感じて身を反らす。
刹那、黒い鎌のような物が身体を掠めた。
「ちょっと待ってよ…いや確かに実物は見たこと無かったケドさ…」
蟻。正式にはなんと言うのか分からないが、とにかく蟻らしき生き物。一般的ではない所といえば…まぁ、サイズ。どこの世界に足だけで何メートルもあるような蟻が存在していると言うのだろう。
いや、そもそもその常識が間違っている?
メモリーの損傷が予想より大きかった?
…蟻は一般的にこのサイズだった…?
「んなわけっ! あるかぁぁぁぁぁぁ!!」
銃を構える。エナジーガンの取り扱いについての記憶は、幸いにも損傷していなかった。
足の付け根に照準を合わせ、引き金を引く。
静かな砂丘に鳴り響くのは銃声…ではなく、カチカチという虚しいトリガー音。ちなみに鳴り響くなんて大層な鳴り方はしていない。…ちょっと盛りましたゴメンナサイ。
「ちょ!? なんでっ!?」
「始めまして。私はイア」
「これはどうもご丁寧に…ってそうじゃないっ! イアっ! エナジーガン起動してっ! はやくっ! 死ぬっ!!」
「………不正ログイン防止の為、トリガー接続を解除するにはパスワードが設定されています。パスワードをお願いします」
振り下ろされる巨大な黒い足を体術のみで回避し続ける。
機械というのはこういう時にスタミナを気にしなくて済むので楽で良い。
「パスワード…パスワードねぇ…くっそー…データが破損してる…」
「強制接続を行いますか?」
「お願いっ!」
「…臨時接続中…臨時接続中…マスターコア、接続完了。マキナセラフィーAT。Ver4 、N8528、型番の一致を確認。帰還を歓迎します。マイマスター、ブレイズ」
「ブレイズ…そうだ…私は…ブレイズ…! イアっ!」
「要件を」
「ブレードシフトッ!」
銃のエネルギーの出力を最大まで上げた、細く長い、継続した射撃。
火力にエネルギーの大半を費やす為、射程そのものは極めて短くなる。
まさに長い時間をかけて練り上げたような青い刀身。
この一時、私の愛銃は一振りの剣と成る。
「さぁて、暴れちゃいますか!」
半身になって蟻の攻撃を避け、半円の軌道を華麗に描き足を一本切り落とす。
薄緑色の液体が噴き出した。汚い。
まずい、避けないと精神的に人生が終わる。
蟻の腹の下を駆け抜けて体液回避。
流石の反射神経、我ながら惚れ惚れする運動機能だ。
もし同族が私を見たら惚れてしまうかもしれない。
駆け抜けざまに腹を裂いてこんなに体格差のある野生動物(?)を一匹仕留めてしまうなんて手際が良すぎやしないか?
などと一人で自分を褒め殺している所なんて同族に見られたら、一歩どころか更にもう二歩くらい引かれてしまいかねないなんて事は百も承知なのである。
つまりは現実逃避。誰にでも備わっている最強の緊急回避法だ。
ちなみに異論は受け付けてない。
…まぁそもそも同族なんてものは見渡す限りどこにも居ないのだが…。
「あはは…いや確かに? 私のデータベースにも? 蟻は群れを作るってしっかり書いてありますが…?」
蟻の死骸の上に登って見渡した結果、視認できるだけでも数十匹、いやもっといるかもしれない。黒い絨毯がうぞうぞと動いているサマはなんというかこう…シンプルに気持ち悪い。
精神衛生上よろしくない。
ブレードで一匹ずつ処理するなんて…いや出来ないことはないが…あの中を駆け抜けるなんて正直どこまでも遠慮したい。
どのくらい嫌かというと、両手を縛られて下水道の中に叩き落とされて這い上がってこいって言われるくらい嫌だ。…ん? なんだその鮮明なイメージ。どこのメモリーから引っ張り出した私。
ま、いいか。所詮現実逃避の産物だろうし。
「イア、大気中の汚染濃度と現状リキャストゼロですぐに起動できるシステム教えて」
「測定中…大気中の汚染濃度78%。現在使用可能なシステムはブレード、ラピッド、ブラスターの三種類です。汚染濃度20%をエネルギーに変換可能です。変換しますか?」
「残存エネルギーは?」
「82%です」
「変換によって期待できる火力の上昇値」
「最大で4%の火力向上が期待できます」
「じゃいいや。変に汚染処理して怒られるのも嫌だし」
あれ? 怒られる? 誰に? 重要な所はいつも記憶が無い。
重要な気もするが、記憶が無いのだから考えても仕方ない。人間と違って、そのうち思い出す類の話ではないのだ。
記憶した場所そのものが欠けているのだから。
「イア、ブラスターシフト」
「ブラスターシフト起動」
ガギンと金属音を立てて銃口が開く。キィィィなどといういかにも未来感溢れる格好いいSEなんて流れない。何故だ。
ブラスターシフトとは、単騎強襲型のブレードとは異なり、範囲殲滅を目的とする装備である。
エナジーガンそのものの形状が変化する為、ブレードのような片手でも振れる持ちやすい物ではなく、両手持ちの、一種の砲台のようになる。
「吹っ飛べっ!!」
着弾点を中心に衝撃波を拡散する。
直接的な威力こそ決して高い物ではないが、着弾時のインパクトは、人間くらいの重さならば数百メートル吹き飛ばす程の圧力を持つ。
蟻如きこの程度で十分だろ…と先程処理した蟻の死体の上で吹き飛ぶ蟻達を見物していたのだが、気がついたらその死体と一緒に空を散歩していた。
馬鹿だ。私はこんなに馬鹿だったのか? いや、メモリーが欠けているせいだ。きっと。そうに違いない。
メモリーが欠けてさえいなければこんなに近距離でブラスターを使うなんて、そんな幼稚園児でも間違えなさそうな致命的なミスを犯すなんて事は…しなかったハズだ…多分…うん、そう思いたい。
思うだけなら自由だ。あぁ自由って素晴らしい。
自由が素晴らしいのはさておき、どこまで飛ばされるんだろう…コレ。
現実逃避芸は最早十八番である。仕方ない。目を覚ました場所が既に非現実的なのだから、そりゃ逃げたくもなる。
そんな事を考えていたのだが、突然全身に衝撃を感じ、次の瞬間にはシステムがシャットダウンしていたのだった。
「いつつ…」
頭がクラクラする。幸い壊れてはいないらしい。
こんな人気の無い所で壊れて意識があるまま風化していくなんて、それだけは嫌だ。
「イア、ここは?」
「…………」
「イア?」
「情報がロックされています」
「はぁ?」
「…開示できる情報が一件ありますが、開示しますか?」
「あー…うん、お願い」
「ここは、籠庭」
「かご…にわ…?」
「はい。マイマスター、ブレイズ。あなたは、籠庭に選ばれました」
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