フェールの花-価値のない王子は完璧な王に愛される-

淡海のえ

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フェールの花-価値のない王子は完璧な王に愛される-

第3章・籠の中 22 セラスからの手紙

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 眩しさを感じて、目が覚める。うっすらとまぶたを持ち上げると、ガラスの天井に太陽が見える。

 もう昼になってしまっていることに気づいて、体を起こした。想像していた通り、泥水に浸かっているかのように重く感じる。

 ユイアナが起こしに来ていないということは、コールが何か言ったのだろう。幸い起こしに来られても困るような姿はしていなかったが、体を休められた。

 やはりあの朝は、わざとあのままにしたのだと確信する。拭いてくれたのか、体もさっぱりしているし夜着も着ている。

 いつから記憶がないのかわからないせいで、どんな顔をして事後の後始末をしていたのかもわからない。前の時の夜も、クライスだけが何度もイかされて気絶するように眠ってしまって記憶が途中からない。

 結局、昨晩もコールが達したところを見ていない。執拗な程に中をいじるのに、コール自身が中に入ってくることはなかった。

 一人で処理したのか、感じてすらいなかったのかわからない。いつコールが部屋を出て行ったのかもわからなかった。

 けれど何度も指を入れられて、感じる部分を擦られたり、かき混ぜたりされたせいで、少し動くだけで疼くような感覚がする。物欲しそうに自分の内壁が収縮するのを思いだして、顔が熱くなる。

 責め苦から逃れたくて、入れて欲しいと口にした。でも入れて欲しいと思っていたのは事実で、逃れたいためだけではなかった。

 もう終わりにして欲しいと、間違いなくコールだってわかっていたはずだ。でも止めてくれなかった。

 コールの背にしがみついたまま、何度目かの射精でたぶん意識がなくなった。出るものなんてほぼない状態で、いじられ続けるのは苦痛だった。

 感じているのに、吐き出すことができなくて……。つらいと涙を流すと、あやすように何度も口付けされた。

 ぼーっと昨晩のことばかり考えてしまっていて、振り切るように小さく首を振る。しなければいけないことがある。

 のろのろとベッドから足を床に下ろす。いつものように左足首の具合を確認する。

 杖を探すと、ちゃんとベッドの横に立てかけてくれている。ソファーから移動させてくれたのは、たぶんコールだと思う。

 前回のように、腰に力が入らなくてへたり込むようなことがらないように、慎重に立ち上がる。テーブルの上に手紙が置いたままになっているのを見て、ほっとする。

「良かった」

 体のあちこちが悲鳴を上げたが、何とか我慢してソファーに身を沈める。そして手紙を取った。

 懐かしい文字を再び指でなぞる。コールがなぜ急に触れてきたのかわからなかった。

 今日だってきっと政務をこなしているはずだ。忙しさは昨日も、この一ヶ月も変わっていない。

 時間ができたからという理由では絶対にない。何かあったのだとしたら、きっとこの手紙の内容に関係あるのだと思う。

 手紙にはセラスの近況と、フェールのことが書いてあった。セラスはちゃんと頼みを聞いてくれて、いまはクリースの従者として働いてくれている。

 最初は断固として拒否されたと書いてあった。間違いなく、セラスの根気の良さにクリースの方が根を上げたのだと思う。

 ずっと従者を決めるように迫られていたクリースの問題が、ひとつ解決して良かったと思う。けれどセラスがここにいたら、頼み事をした時のように怒られただろう。

 クリースがしたことを許した訳ではないが、弟であることとフェールの王になることは変わらない。国と民を思えばこそ、きっとセラスが従者になってくれたことに意味があると信じている。

 言い合いも絶えないようだが、二人なら上手く折り合いをつけていけるだろう。問題は手紙の後半に書かれていた方にある。

 フェールに隣接する北部の話だ。寒いせいで農作物を育てるのに向かない土地であり、季節に合わせて民は移動しながら生活している。

 貴族が何も考えずに勝手に狩猟をするせいで、何度か抗議があるなどして問題にはなっていた。一応フェールの管轄する場所ではあるが、独立した地域とも言える。

 独自のルールや複数の代表がいるなど、フェールでありながら違う政治形態を保っている。けれど問題はあれど、全体的に見れば上手くやっていけていたはずだ。

 はずなのに、手紙には北部で反乱が起こる可能性があると書かれている。大量の武器の購入と、不自然な数の人の移動が確認されたらしい。

「信じられない……」

 無意識に呟いていた。北部との起こるかもしれない戦のために、クリースと一緒に出立したと書かれている。

なぜ王位継承権を持つクリースを、前線に向かわせるようなことをするのかわからない。実際に戦が始まったなら出立することも納得だが、現状が把握できていない場所に送るのは不自然だ。

 もし自由なら、すぐにでもフェールに向かっていただろう。手紙の最後には、変わらぬ思いをセラスと書かれていた。

 自分の頼みごとのせいで、セラスを危険にさらしたのかもしれないと思うと、どうしていいかわからなくなる。何かあったら、コールは助けてくれるだろうかと思いはっとする。

 コールがいつもと違ったのは、兵を要求されたからなのだろうか。ほんの数日一緒にいただけで、コールがアラガスタの民をスリアのように大事に思っていることがわかった。

 兵も民である。自分を連れて来たせいで、兵を要求されたのだとしたら?

 なぜ執拗にイかされて、快楽ばかり与えられるのかと思ったが、苦しめられていたのだろうか。手に入れた品を泣かせることで、送らなければいけない兵たちへの留飲を下げていたとしたら?

 頭の中ではコールはそんな人ではないとわかっているはずなのに、決して入れられることのない性交のせいで疑ってしまう。そもそもコールにとって、昨晩の行為は性交ではなかったのではないかとすら思えてくる。

 また何を信じていいのかわからなくなって、胸が痛んだ。
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