フェールの花-価値のない王子は完璧な王に愛される-

淡海のえ

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挿話集

54 お土産の味

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 フェールから使者が来たと言われて、予定を変更するしかなくなった。できればクライスも同席させてもらいたいと要求されたが、無視することにした。

 現在のフェールは王を失い、八歳のマクスが王となっている。けれどほぼ全ての政務を肩代わりしていたクリースがいなくなったことで、支障が出始めている。

 しばらくの間は宰相が代わりとなって回していたようだが、王が頼りないせいで貴族たちの支配が及ばなくなってきている。クライスに言えば、すぐにでもフェールに行くと言い出しそうで知らせていない。

 現在のフェールにクライスを行かせるのが心配だからだ。貴族たちは自分たちの好きにできる今の状態を維持したいと思うだろう。

 維持するためなら、邪魔となるクライスを排除しようとするのは予想するまでもない。

「フェール側の望みはあまり歓迎できるものではなかったようですね」

 執務室に戻ると、スリアに微妙な顔をされる。どうやら顔に出てしまっていたらしい。

「あぁ、全く歓迎はできないな」

 使者の要求はクライスを返せというものだった。使者を送った貴族たちは本当にわかっているのだろうかと疑問に思う。

 マクスが王となっているということは、クライスを担ぎ上げるということは反乱を意味する。コールが戦にクライスを送るはずがないと、考える必要もなくわかるはずだ。

「そういえば、クライス様はもうお帰りですよ」

 美味しいお菓子を貰いましたと、嬉しそうに笑うスリアは急に年相応になる。

「お兄様も、今日はもうお帰りになって大丈夫ですから」

 にこにこと笑うスリアに甘えて、早々に執務室を後にする。部屋に戻りながら、クライスに伝えるべきかを考える。

 伝えるにしても、もっと情報が必要だ。ずっと黙っていて、後からクライスに知られたら信用を裏切ることにもなる。

 クライスを守ったうえで、フェールが国として保てる案を考えなければいけない。

「コール様!」

 部屋に戻ると、嬉しそうなクライスに吸い寄せられるようにそばにいって抱きしめてしまう。クライスが腕の中にいてくれる時が、一番安心していられる。

 どんなことからも、自分が守ってやれると思える。いつもより少しだけ興奮しているようなクライスが、とても可愛く見えて自然と頬が緩む。

 口移しでお土産に貰ったパウンドケーキを受け取らせてもらうと、照れたクライスに睨まれる。こんなに満たされた気持ちになる瞬間が、自分に訪れるとは思っていなかった。

「疲れてないか?」

 抱き上げて問うと、頬を染めたクライスが小さな声で大丈夫ですと返してくる。ベッドに下ろしてシャツをはだけさせると、恥ずかしそうにクライスが横を向く。

 前は慌てて隠そうとしていたのだが、一度隠すなと言ってからは堪えるようになってくれた。恥ずかしそうに堪える姿が、人をどれだけ誘うのかをクライスは知らない。

 滑らかな肌を、指で辿るように撫でるとぴくっと体が反応して震える。きゅっと結んだ唇が、愛撫によってだんだんと緩く開いていくのを見るのが好きだ。

 指だけでうっすらと開いた口に、舌を差し入れると驚いたクライスの瞳が少し大きくなる。擦り合わせた舌はひどく甘くて、もっと欲しいと思ってしまう。

 甘いものはあまり得意ではなかったはずなのに、癖になりそうな甘さにしつこく舌を絡める。こんな土産なら、毎日でも貰いたいと思う。

「ふぅぁっ……んっ……ぅ……」

 少し苦しそうに身動ぎするクライスが、物足りなさそうに下肢を擦り合わさている。もっと甘さを堪能したいとは思ったが、涙目になっているのを見て解放してやる。

 まだ触れてもいないのに、芯を持ち始めた胸の突起にふっと息を吹きかけるとクライスが息を飲むのがわかる。触れずに焦らしていると、泣きそうな顔をされる。

「コ、コール様……さ、触ってください……」

 もっと焦らしたい衝動にかられるが、これ以上は本当に泣かせてしまいそうで我慢する。

「あっ……んっ……」

 口に含んで小さな突起を舐め転がすと、クライスが手で口を塞ぎながら背をしならせる。まるでもっととせがまれているようで、強く吸ってやる。

「やっ……あぁああ!」

 びくびくと体を震わせたクライスが、軽くイってしまったのがわかる。イきやすすぎるせいで、クライスはすぐに疲れてしまうところがある。

 本来ならもう少し長く楽しみたいところなのだが、クライスの体調を考えて我慢している。服の中から陰茎を取り出すと、緩い角度を保ちながら震えている。

 クライスのものだと思うと、全てが愛しく見えてしまうから不思議だ。そっと手で握りながら、裏筋を舐め上げる。

 すぐに甘い声を上げて、手の中で硬くなっていくのがわかる。

「イっちゃ……い、ます……からぁ……」

 シーツを握って必死に堪えている姿を見ると、弄り回したくなってきてしまう。最近はイきすぎると自分もつらいとわかってきたのか、イくのを嫌がる素振りを見せる。

 イかないくらいの力で擦りながら、空いている手でナイトテーブルに置いてある香油を掴む。口で咥えて蓋を開けて、クライスの陰茎の先端にそっと垂らしていく。

「ひゃぁ! 冷たっ……ぁ」

 驚いたクライスの腰が強く跳ねるのを無視して、手を緩く動かし続ける。滑りが良くなったせいで、刺激が弱くなったのか物足りなさそうにクライスの腰が揺れる。

 長く楽しみたいのなら、イかせないようにするべきだとはわかっている。わかっているのだが、快楽に溺れるクライスを見たくなってしまうのだから仕方ない。

 垂れ落ちた香油で濡れた秘部が、いやらしく収縮して誘っているのが見える。遠慮なく指を差し入れて、クライスが触られるのを嫌がる部分を強く押す。

「やぁあああ! あ、あぁ……ひどっ、あぅ、んっく……」

 手の中で陰茎がびくびくっと震えて、白濁を吐き出す。無理矢理イかされたことに、ひどいと言いながら涙目で睨まれる。

 けれど咥え込んだ指には、喜ぶように内壁が絡みついてきている。指を増やしても、難なく受け入れていやらしく収縮を繰り返す。

 また硬くなったクライスの陰茎からは、指を出し入れする度にタラタラと液体が流れる。

「や、んぅ、も、いいです、からぁ……入れ、て……くだ……あぁっ!」

 もう我慢も限界で、誘われるがままに自身を取り出してゆっくりと沈める。指で慣らしても、まだ狭い隘路を広げて進む快感に自然と大きさを増してしまう。

「待っ……あぅ……ひっ……」

 入れてと誘ったのは自分なのに、押し広げられる感覚に堪えられないのかクライスが首を振る。一気に奥まで入り込みたいのを我慢して、ゆっくり息を吐く。

 奥に入り込もうとするのではなく、入り口を広げるように小刻みに腰を揺する。頬を上気させたクライスから、甘い喘ぎ声が漏れ出る。

 完全に緩んでしまった口が薄く開いて、飲み切れなかった唾液が零れるのが見える。体を前に倒して舐めとってやると、角度が変わったからかぎゅっと内壁が絡んでくるのがわかる。

「コ、コール様……ぁ……」

 両手を広げたクライスのために、上半身を倒すと背に腕が回ってすがるように抱きつかれる。甘やかしてやりたいと思うのに、なぜか泣かせたいと思ってしまう。

 そのまま体を起こすと、クライスの体が少し下に沈む。

「や、無理……っ!」

 クライスの重みで、ゆっくりと陰茎が飲み込まれていくのを感じる。何とか力を入れて侵入を防ごうとするクライスの耳を食む。

「あんっ!」

 びくっと震えてさらに体が沈む。あと少しで全部は入れると思うと、腰が勝手に動いてしまう。

 ずんとクライスの腰を掴まえたまま突き上げると、クライスが大きく喘ぐ。

「ふかっ……あぁ……」

 力が抜けてしまったクライスの体を支えながら、思うままにむさぼる。腹にクライスの陰茎がぶつかって、何度もイっているのがわかるが、止められなかった。

 感じすぎてわけのわからなくなったクライスの隘路にしめあげられて白濁を吐き出す。搾り取られるように最後の一滴まで中に出すと、くたんとしたクライスの体から陰茎を抜いた。

 あと二回くらいは付き合ってもらいたいところだが、もうクライスは限界のようだった。
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