悪役の僕 何故か愛される

いもち

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プロローグ

第二話 婚約者

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「セイン、その、火傷のところは、……痛いか。」
「いえ、大丈夫です。」
「そうか。」
僕の気分を伺うように聞くのは、義父であるゴースティ伯爵。
教会に訪問した時から、僕と目を合わせたことがないが、今日も例に漏れずか。会話だって続いたことはない。でも別にもうどうでもいいことだ。
そんなことより、義父の後ろでこの国の王と王子が控えている。偉い人より前にいるのは如何なものかと思うが、幼い僕が何かを言う必要はないだろう。

それから、痛くないのは嘘だ。でもここで痛いと泣き叫べば、ゲームと同じように僕を憐れんで婚約を交わすことを提案されるだろう。
だから大丈夫。痛いけど、今後もっと辛い思いをするくらいなら、今は我慢しないと。

「ルクサンドロスの大いなる太陽へのご挨拶が遅れてしまい、申し訳ありません。また、ベッドで横になってのものもお許しください。」
「いや、あれほどの火魔法をその身に受けたのだ。楽にしてくれ。
…此度、君を訪ねた訳は、謝罪と、君と我が息子との婚約を結ぶためだ。」
王様は、後ろで俯いている王子-アレクセイ-を促して僕の前に立たせる。僕の顔を見るなり青ざめている。それはそうだろう。僕の顔の半分は酷い火傷になっている。ゲームが始まる頃には、火傷の痕としてピンク色の少しグロテスクな見た目に改善したが、今は火傷を負ったばかりだから、皮膚は爛れ、酷い臭いを放っている。気持ち悪いだろう。直視すらしたくないに違いない。ゲームの僕は、それを逆手にとって王子にいつも迫っていた。王子は罪悪感と、僕への嫌悪でトラウマを抱えていて、それを主人公に癒してもらう。そんなシナリオだったはずだ。

しかも、先手を取られてしまった。僕は恋愛に振り回されて死にたくなんてない。
だから僕ができることは…。

「アレクセイ王子。謝罪も婚約も必要ありません。
僕はただ運が悪かった。それだけです。」
不敬を承知で突っぱねることだ。
「でも、私のせいで君の顔は。」
「僕は長男ですが、弟が伯爵家を継ぎます。」
わざと外に目を向けて、彼を突き放す言い方をする。王族に対してこんな態度をとる僕を見て、伯爵も勘当でもしてくれればいい。そうすれば晴れて自由の身。好きに生きれるはず。
「伯爵の血も受け継がない孤児のことなど、放っておいてください。」
「…っ」
部屋の空気が変わる。伯爵と王様が息を呑むが、僕の口はペラペラと喋り続ける。
「王家はご存知でしょう?僕が孤児であることくらい。なんの理由があって僕をこの家に迎えたかは知りませんが、僕には伯爵家の権限なんて、何一つないのです。婚約など無意味なんですよ。
僕がどうなろうと、関係のないこと。だから、どうか。」
「いやだ。」
急に両頬が暖かくなって、目の前に綺麗な顔の少年が出てきた。
本当に綺麗で、王子様そのものだ。いや、実際王子様なのだけれど。
日に当たってキラキラ輝く金髪に、透き通る青空みたいな碧眼。対して僕は、ゲームでは魔女か蛇と言われる白髪に赤眼。さらには火傷というマイナス。そこに追加して元孤児の平民。こんな綺麗な人の隣に立っていた、ゲームの僕はどういう神経をしていたんだろう。ゲームなのだから、シナリオを考えた人か?

「泣いている子のことを放っておくなんて、私にはできない。」
泣いている?誰が、僕が?そんなことはない。悲しいことなんてない。けれど、この身体は、誰かに愛してもらいたい。必要としてもらいたいと、叫んでいる。それが、涙として出ているのか。
でも、ここで婚約したら、それこそ、主人公と良い仲になって、僕は愛されない。
「違う、何も悲しくなんてない。どうか、放っておいて。知らないフリをして。」
「いやだ。」
さらにアレクセイ王子が近づいてきたと思ったら、唇に温かいものが触れる。
初めての口付け。多分この身体に宿るもう一つもしたことはないと思う。だってこんなにも身体中が熱くなっているのだから。

「…君の笑う顔が見たい。だからそばにいたい。父上、私は彼を好きになりました。自分勝手なことはわかっています。ですが、どうかセイン・ゴースティとの婚約の話を進めてください。」

何が彼の琴線に触れたのかは不明だが、結局僕はゲームの通り、アレクセイ王子と婚約を結ぶことになってしまったのだった。
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