5 / 22
プロローグ
第三話 義弟
しおりを挟む王様達は、公務があるとのことで、婚約書を記入してすぐに帰られた。アレクセイ王子はずっと僕の隣で、痛みはないかとか、ずっと手を繋いでいたけど、僕はそれを完全に無視していた。帰る時も名残惜しそうにしていたけど、適当に手を振れば、嬉しそうにしてまたくると言っていた。来ないでほしい。
「セイン……。」
「なんでしょう、お父様。」
八つ当たり気味に、ゴースティ伯爵を父と呼ぶ。
「君は、確かに、ゴースティ家の血を継いでいない。しかし、もうこの家の子だ。」
「それなら、孤児の僕の手綱をしっかり握っておいてくださいね。気分が優れないので、独りにしていただきたいのですが。」
「…わかった。なにかあればすぐに言うように。」
「お父様!王様が来ていたって本当ですか!?」
ああ、また悩みの種が出てきた。
伯爵と同じ銀髪に快活そうな碧眼。本来の伯爵家の長男であり、『恋と魔法と君と』の攻略対象の一人である、アインズ・ゴースティ。実は初対面だったりする。彼は、実母の療養についていると聞かされていた。体調が良くなった彼女と共に戻ってきたのだろう。
「アインズ、部屋に入る時はまずノックをしなさい。」
「はい、ごめんなさいお父様。あの、その子は。」
つまり、僕を知らない。ゲームでは、この辺りの話は全くない。僕が王子の婚約者になった後で伯爵家の権力を我がもの顔で振り翳していたことくらい。まあゲームの進行に過去の話は、そこまで大切じゃない。大事なのは、セインがアインズをいじめていたという事実だけ。
だから、僕はアインズをいじめなければいい。関わらなければいい。
「手紙で書いていただろう。一年前、教会の孤児院から迎え入れた子、セインだ。」
「孤児。」
「そうだ。セインの方がおそらくアインズ、お前よりも早く生まれている。だからセインが長男となるが、貴族としてはまだ足りないことが多い。お前が教えてあげなさい。」
「…はい。」
「私も仕事に戻る。少し二人で話す時間をあげよう。セインに変わりがあれば、すぐ医師を呼ぶように。」
慌ただしく伯爵が出ていった。
途端に沈黙がおとずれる。それはそうだ。
いきなり孤児が伯爵家の長男になりました。なんて言われて、はい仲良くなりましょう。なんてできた子どもはいない。
「…なあ。」
「はい、なんでしょうか。」
「それ、痛くねーの」
火傷のことか。そんなの、
「痛いに決まっているでしょう。」
「じゃあ医者呼ぶか。」
「いりません。」
「痛いんだろ。」
「はい。」
「なら医者を」
「いりません。塗り薬ももうもらっています。」
「…じゃあ、俺が塗る。背中は自分でできないだろ。」
「必要ありません。僕に構わないでください。」
アインズと関わらないようにするには、突っぱねる。王子様には効かなかったけど、きっと彼には効果があるはず。
「俺より小さくて、細っこいのが何言ってんだ。」
効かなかった。なぜだ。
あれよあれよという間に服を脱がされ、薬を塗られる。六歳の癖に包帯も綺麗に巻けるのはどうしてなんだ。
「俺、お母様の療養でついていったって、言ってただろ。あれ、お母様が魔物討伐で負った怪我の療養だったんだ。包帯巻くの手伝ってたから、これくらいならできるよ。」
「…余計なお世話です。これくらい、僕は出来ま…。」
アインズから包帯を奪い取り、自分で身体に巻こうとする。これでも、病気だったもう一人の僕がいるから、絶対できるはず。なんだけど。
「ふっ、んん、えっと、こうして。あれ?んー!」
出来なかった。包帯があっちこっちへ行き、身体中包帯ぐるぐるで身動きがとれない。
どうしてできないんだろう。できない自分がいやになる。そういえば、僕は、自分で何もできなくて、姉になんでも手伝ってもらっていた気がする。
「ぅう、おねえちゃん。…たすけてぇ。」
泣き言が出てきてしまう。こんな時、僕の魔法はいつもならすぐ出てきてくれるのに、人がいると途端に出てこなくなってしまう。大事な時なんだから出てきてほしいのに。
「…っ。ほら、動くな。暴れたらもっとぐちゃぐちゃになるだろ。」
「ぅん。」
見かねたアインズが、巻きついた包帯を器用に取り、綺麗に巻き直してくれた。
「ほら、これでいいだろ。」
「…ありがとう。」
ぽんぽんと頭を撫でられる。姉に撫でられたことを思い出して、手に擦り寄る。温かい、人の手。嬉しい。
「……おい。」
ハッと我に帰って、アインズの手から遠ざかる。
「あ、えと、ごめんなさい。家族を思い出して。こんな醜い孤児、嫌だよね。包帯巻いてくれて、ありがとう。」
「別に、これくらいなら毎日やってやるよ。家族なんだしな。じゃあそろそろ飯の時間だし、持ってきてやるから待ってろよ。よろしくな、お兄様。」
なぜかほんのり赤くなったアインズがもう一度僕の頭を撫でてから、外に出て待機していた執事に声をかけていた。
僕、懐かれた…のかな?
741
あなたにおすすめの小説
なぜ処刑予定の悪役子息の俺が溺愛されている?
詩河とんぼ
BL
前世では過労死し、バース性があるBLゲームに転生した俺は、なる方が珍しいバットエンド以外は全て処刑されるというの世界の悪役子息・カイラントになっていた。処刑されるのはもちろん嫌だし、知識を付けてそれなりのところで働くか婿入りできたらいいな……と思っていたのだが、攻略対象者で王太子のアルスタから猛アプローチを受ける。……どうしてこうなった?
【完結】王子様たちに狙われています。本気出せばいつでも美しくなれるらしいですが、どうでもいいじゃないですか。
竜鳴躍
BL
同性でも子を成せるようになった世界。ソルト=ペッパーは公爵家の3男で、王宮務めの文官だ。他の兄弟はそれなりに高級官吏になっているが、ソルトは昔からこまごまとした仕事が好きで、下級貴族に混じって働いている。机で物を書いたり、何かを作ったり、仕事や趣味に没頭するあまり、物心がついてからは身だしなみもおざなりになった。だが、本当はソルトはものすごく美しかったのだ。
自分に無頓着な美人と彼に恋する王子と騎士の話。
番外編はおまけです。
特に番外編2はある意味蛇足です。
実は俺、悪役なんだけど周りの人達から溺愛されている件について…
彩ノ華
BL
あのぅ、、おれ一応悪役なんですけど〜??
ひょんな事からこの世界に転生したオレは、自分が悪役だと思い出した。そんな俺は…!!ヒロイン(男)と攻略対象者達の恋愛を全力で応援します!断罪されない程度に悪役としての責務を全うします_。
みんなから嫌われるはずの悪役。
そ・れ・な・の・に…
どうしてみんなから構われるの?!溺愛されるの?!
もしもーし・・・ヒロインあっちだよ?!どうぞヒロインとイチャついちゃってくださいよぉ…(泣)
そんなオレの物語が今始まる___。
ちょっとアレなやつには✾←このマークを付けておきます。読む際にお気を付けください☺️
囚われた元王は逃げ出せない
スノウ
BL
異世界からひょっこり召喚されてまさか国王!?でも人柄が良く周りに助けられながら10年もの間、国王に準じていた
そうあの日までは
忠誠を誓ったはずの仲間に王位を剥奪され次々と手篭めに
なんで俺にこんな事を
「国王でないならもう俺のものだ」
「僕をあなたの側にずっといさせて」
「君のいない人生は生きられない」
「私の国の王妃にならないか」
いやいや、みんな何いってんの?
悪役令息上等です。悪の華は可憐に咲き誇る
竜鳴躍
BL
異性間でも子どもが産まれにくくなった世界。
子どもは魔法の力を借りて同性間でも産めるようになったため、性別に関係なく結婚するようになった世界。
ファーマ王国のアレン=ファーメット公爵令息は、白銀に近い髪に真っ赤な瞳、真っ白な肌を持つ。
神秘的で美しい姿に王子に見初められた彼は公爵家の長男でありながら唯一の王子の婚約者に選ばれてしまった。どこに行くにも欠かせない大きな日傘。日に焼けると爛れてしまいかねない皮膚。
公爵家は両親とも黒髪黒目であるが、彼一人が色が違う。
それは彼が全てアルビノだったからなのに、成長した教養のない王子は、アレンを魔女扱いした上、聖女らしき男爵令嬢に現を抜かして婚約破棄の上スラム街に追放してしまう。
だが、王子は知らない。
アレンにも王位継承権があることを。
従者を一人連れてスラムに行ったアレンは、イケメンでスパダリな従者に溺愛されながらスラムを改革していって……!?
*誤字報告ありがとうございます!
*カエサル=プレート 修正しました。
平凡な俺が完璧なお兄様に執着されてます
クズねこ
BL
いつもは目も合わせてくれないのにある時だけ異様に甘えてくるお兄様と義理の弟の話。
『次期公爵家当主』『皇太子様の右腕』そんなふうに言われているのは俺の義理のお兄様である。
何をするにも完璧で、なんでも片手間にやってしまうそんなお兄様に執着されるお話。
BLでヤンデレものです。
第13回BL大賞に応募中です。ぜひ、応援よろしくお願いします!
週一 更新予定
ときどきプラスで更新します!
俺がこんなにモテるのはおかしいだろ!? 〜魔法と弟を愛でたいだけなのに、なぜそんなに執着してくるんだ!!!〜
小屋瀬
BL
「兄さんは僕に守られてればいい。ずっと、僕の側にいたらいい。」
魔法高等学校入学式。自覚ありのブラコン、レイ−クレシスは、今日入学してくる大好きな弟との再会に心を踊らせていた。“これからは毎日弟を愛でながら、大好きな魔法制作に明け暮れる日々を過ごせる”そう思っていたレイに待ち受けていたのは、波乱万丈な毎日で―――
義弟からの激しい束縛、王子からの謎の執着、親友からの重い愛⋯俺はただ、普通に過ごしたいだけなのにーーー!!!
【完結】自称ヒロイン役を完遂した王家の影ですが、断罪パーティーをクリアした後に王太子がぐいぐい来ます。
竜鳴躍
BL
優秀過ぎる王太子×王家の影(失業)。
白い肌に黒髪黒瞳。小柄な体格で――そして両性具有。不出来な体ゆえ実の親に捨てられ、現在はその容姿を含め能力を買われて王家の影をしていたスノウ=ホワイト。男爵令嬢として王太子にハニトラを仕掛け、婚約者を悪役令嬢に仕向けて王太子への最終試験をしていたのだが、王太子は見事その試練を乗り越えた。これでお役御免。学園を退学して通常勤務に戻ろう――――――。
そう思っていたのに、婚約者と婚約解消した王太子がぐいぐい来ます!
王太子が身バレさせたせいで王家の影としてやっていけなくなり、『男子生徒』として学園に通うスノウとそんなスノウを妃にしたくてつきまとう王太子ジョエルの物語。
☆本編終了後にいちゃいちゃと別カップル話続きます。
☆エンディングはお兄ちゃんのおまけ+2ルートです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる