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プロローグ
第四話 遠ざけたいのに、構われる
しおりを挟むゲームの悪役であったことを思い出し、王子と義弟と邂逅してから三ヶ月が経つ。やっと、ベッドから起き上がって、歩けるようになった。まだ火傷の部分は痛いし、右半身の火傷の後遺症で動かしづらくなって、杖が必要だけど。そういえば、ゲームでのセインは杖を使っていなかったから、魔法が助けてくれていたのかな。それとも、ゲーム開始までには後遺症は良くなるんだろうか。
そんなことより…
「さあ、セイン。王城のシェフに温かいスープ作ってもらったんだ。」
「おいセイン。ちゃんと火傷の痕は保湿しろ。乾いて痒いからって引っ掻いてんだろ。血が出てんぞ。ほら、こっち向け。最近肌にいいって、お母様にもらったのがあるから。塗ってやる。」
おかしい。二人とも、僕を嫌っていない。
ここまで、来るたびに「いらない、やらない、放っておいて。」を何百と言っているのに、めげずに話しかけたり、構ってくる。
今日はベッドから、食堂まで歩けた。今は階段を使わなくていいように、一階の中央の部屋を僕の部屋に改装している。だから、食堂までほんの十メートルと少ししかないから、大した距離ではない。でも、ベッドの住人で杖をつかないといけなくなった僕にしてはいい進歩ではなかろうか。
というように現実逃避をしているが、両脇に美少年二人を侍らせるのはどうなのか。
食堂には所狭しと豪華な料理が並べられて、どう考えても食べ切れるわけがないし、食事のそばに、薬や薬湯を置くのはいかがなものかと。ああ、薬湯がスープに入った。
「…あのね、二人とも。」
「やはりケーキがいいかい?それともクレームブリュレ?あ!ステーキもあるから、私が小さく切ってあげるよ。」
「んなわけないだろうが、オウジサマ。病人にいきなり王族御用達の脂まみれの肉なんて食わせんなよ。ほら、スープでいいだろ。」
「いや、そうじゃなくてね。
アレクセイ、これだけの量の料理、これで、平民や孤児が何ヶ月生活できるか知ってる?これが税金や年貢として、どれくらいの国民が汗水垂らして納めてくれたものかわかっているの?僕たちだけで、食べ切れるわけないのに、こんなに持ってきちゃダメだってこの前も言ったばかりだよ。」
「あのね、セインのためにって、思ったんだけどね。……ごめんなさい。」
「食べきれない分は、僕がいた教会や、他の孤児院に寄付してもらう形でいいよね。」
しょんぼりするアレクセイ。でもこれも三回目だから、あまり効かない気がする。そして次はザマアミロみたいな様子でアレクセイをニヤニヤ笑っているアインズだ。
「アインズ。」
「俺なんもしてないけど。」
「アレクセイは王子だ。僕は婚約者だから、ある程度平等かもしれないけど、君は違うよ。少し態度を改めるべきだ。それから、僕と君は兄弟だ。腰を抱く必要はないよ。」
アインズはスキンシップが多い。足が悪いからって、リハビリ中だって手と腰を持って僕の杖になろうとする。まだ長距離の移動はできないから、車椅子を使っているが、侍従や使用人ではなく、アインズ自ら僕を支えてベッドに戻るのを手伝ってくれる。そしていまだにアインズが塗り薬と包帯巻きをしている。更には何故か一緒に寝ている。ゲームでは僕ら兄弟の仲は悪くて、僕がアインズをいじめていて、一緒に眠ることなんて考えられない。
遠ざけるつもりが、二人とも僕に構ってくる。どうして。
「セインが心配だから。一人にしとくと、どっか行きそうでさ。」
「それは同感だね。私の大切なセインがいなくなっては一大事だ。」
この二人は、仲が悪いのか、気が合うのかもよくわからない。
「二人って、気が合うね。」
「そうでもないよ。セイン限定だね。」
「そうだな。でも、セインのことだけだ。」
似たようで、違う返答を同じタイミングで返される。
さて、どうしたらこの二人は僕に飽きてくれるのだろうか。
そんなことを考えて、もう十年が経とうとしている。
いまだに二人は僕にべったりだ。
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