悪役の僕 何故か愛される

いもち

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学院編

第八話 勉強会と子猫

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「あー、あっづい。」
いくら空調が効いていても、窓から入る陽射しは、ジリジリと暑い。
生徒会の挨拶から、夏季休業が終わるまで僕らの仕事はなく、ゲームのイベントもない。ゲームも初めは攻略対象との仲を深めることや、主人公の成長のために時間を設けていた。
だから僕たちも放課後の時間に生徒会室で、勉強会の時間を作るようになった。生徒会として、生徒の模範となるためには、ある程度の成績も必要だ。

僕は勉強が苦手だ。特に貴族の歴史は、横文字だらけの、分家、本家エトセトラ。頭に入ってこなくて困っている。ルクサンドロス家も、元々直系の王家ではないと聞かされて、頭がパンクしそうだった。
今だって歴史の教科書と睨めっこしている。

「ちゃんといい成績じゃないと、みんなの前に胸を張って出られないよ。行軍訓練もあるし地理に勉強もしないと……でもわかんない、どうやってみんなこんなに範囲の広くて人が多い歴史を覚えられるの?アレクセイはどうやってる?」
ゲームでは、ステータスの上昇のみで、細かな授業の描写なんてなかったから、みんなはどうやって覚えているんだろう。恥を偲んで、隣でノートにペンを走らせるアレクセイに声をかける。

「ん?そうだね。元々私は幼い頃から家庭教師に叩き込まれてきたから。コツは、言葉遊びとか語呂合わせかな。」
ノートに集中しているアレクセイはそう答えてくれる。
…何をそんなに熱心に書いているんだろう。好奇心が勝ってしまったので、そっと覗き込む。

そこには、僕の一日の行動と、それに対するアレクセイだけでなく、多数の反応が書かれていた。どうやらリアルタイムで、各々が同じノートを持っていれば書き込めるものみたいだ。こういうのって、すごく高価な気がするんだけれど。しかもそこには僕と猫達のことが書かれている。
寮には、猫が住み着いていて、寮母さんが世話をしている。寮に住んでるからリョーというありきたりな名前の彼女は、去勢も済ませている。
そんな彼女は先月どこからか子猫を二匹も連れてきてしまっていた。寮母さんも最初は世話をしようとしてくれたのだけれど、何故か寮母さんではなく、僕の元に子猫を持ってきた。

まだ目が開かないその子達は、力強くミャーと鳴き、生きようともがいていた。
その姿がなんだか病気だった僕を思い出す気がして、僕が世話をすると宣言してしまった。

それから毎日授業に子猫達を連れて行き、目が開いて動けるようになってからは、授業中は生徒会室にケージを置いて、休み時間の度に様子を見ていたのだ。一ヶ月の間に随分と大きくなって、ヤンチャだから、可哀想だけど、僕がいない時はケージの中で過ごしてもらっている。
可愛い可愛い僕の新しい家族。
名前はクロとシロ。安直だけど、僕には名前のセンスがないので、簡単なのがいい。

そんなことより…
「僕のプライバシーは?」
「…。」
僕に無断で、僕の私生活を公開しているこの王子だ。
「何も相談されずに、勝手にやって、多くの生徒に僕の私生活が突き抜けってことだよね。」
「…そうだね。セインの愛らしさを私だけが知っていたい。けれど、この愛らしさを、全校生徒に知ってほしい。わかるってほしいんだ、この葛藤を。」
「いや、全然理解できないし、したいとも思わないよ。それ、続けるなら生徒会長権限で没収するよ。」
「そんなあ…。私の楽しみなんだ。」

意味わかんない。僕なんかの観察なんてして何が楽しいんだか。
それなら猫達の観察日記にしてもらいたい。
「じゃあそれ僕にも毎日見せて。あと僕じゃなくてクロとシロの観察日記にするから。その端っこになら僕のこと書いてもいいよ。」
「っ!本当かい!?」
「変なこと書いたら即没収ね。」
これで抑止力になったかな。僕のことは気にしないで、クロとシロを愛でてほしい。

「なんか偶にセインの方が強い気がするんだよね。ちっちゃいけど。
姐さん女房っていうのかな。」
「オウジサマって、周りがイエスマンばっかりだからなあ。俺もそうだけど、セインみたいにズバズバいう奴いないんだよ。」
「確かに、アインズも意外に好かれてるよね。」
「やめろ、気持ち悪い。」
そんな僕らの姿を見ながらエルンとアインズがコソコソ話している。

「僕はアレクセイのお嫁さんじゃないよ。婚約者。」
「一緒じゃないの?」
「違うよ。別に結婚するって決まってないから。」
だって本来はエルンと結ばれるはずだ。そうじゃなくても、アレクセイがあの態度でも、国王は僕との結婚を許さないだろう。もっと身分や出自の良い、素敵な人とがいいに決まってる。

そんな喧騒に気がついたのか、お昼寝していたクロとシロが起きてきた。
「んみゃー」「んなぁー」
「はぁい、ご飯かな?」
猫用のご飯を用意して、ケージを開けてあげる。そしたら待ってましたとばかりに、僕に飛びついてくる。大きくなったといってもまだまだ子猫。小さな手足と爪で僕の制服によじよじ登ってくる。
「ふふ、慌てないの。ご飯は逃げないよ。
うわ!待って待って。わぁ!」
思った以上に力が強くて、バランスを崩してソファに倒れ込む。

クロとシロは平気かな。怪我してないかな。
「みゃー」「んー」
よかった、大丈夫そう。二匹は僕の胸元でゴロゴロと喉を鳴らしながら、シャツを噛み、ふみふみしていた。
「もう、僕は君たちのママの代わりだけどおっぱいは出ないからね。……ママはどこにいっちゃったんだろうね。リョーちゃんが連れてきたから、きっと二人きりだったんだろうね。さみしかったね。大丈夫だよ。僕がいるからね。」
親がいないのは、寂しい。守ってくれる人もおらず、この子達は死を待っていたのだろうか。リョーちゃんが保護してくれて本当によかった。
ふみふみに集中しているクロとシロに頬擦りをする。

「はあっ…生徒達の言う尊いとは、こういうことを言うのだな。」
「尊い通り越してもう聖母だろ。」
「あー、いいなあ。僕も猫達みたいにセインに甘やかしてもらいたいー。」
みんな僕の姿を見て拝んでいる。何故。
そんなことより、僕達勉強会をしていたはずなんだけど、随分脱線している気がする。
クロとシロに身を委ねていると、レイムダルとヴィンセントも合流したのに、こっちも拝んでしまい、僕は考えることをやめた。今度は一人で勉強しようと心に決めた僕なのだった。
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