氷結の毒華は王弟公爵に囲われる

カザハナ

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本編

109

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「おいおい、公爵様。そんな顔すんな。ウチの嬢ちゃんが不安がってんじゃねぇか」


 ダンの言葉で我に返り、リラを見ると、今にも泣きそうな顔をしていた。


「もしかして、嫌になってしまいました、か?」


 エドワルドは、思わず抱き締め否定する。


「違う!リラを嫌になるなんて、有り得ない。そうでは無く、その能力を知られれば、利用しようと思う連中が腐る程出て来そうだと思ったのだ」

「まぁ、そりゃそうだ。会話すらも覚えてられるらしいからな。利用しようとすればいくらでも利用出来るし、どの国も、奪ってでも欲しがるだろうから、知られりゃあ戦争勃発だって有り得るな。で?そんな嬢ちゃんと知った公爵様は、嬢ちゃんをどうする気だ?」

「どうする、とは?」

「選択肢は幾つかあるな。嬢ちゃんから手を引くとか、嬢ちゃんを利用する立場に回るとか、他に奪われない為に閉じ込めるとか。あんたはどれだ?」

「どれもしない。私はリラが好きなのであって、リラの能力が目当てじゃない。その能力だって、リラの個性の一部でしかない。私はリラが、どんな能力を持っていようと持っていまいと、欲しいのはリラと言う存在の全て。見た物聴いた物、全てを記憶すると言うのなら、その殆どを、これからの私が埋めていけば良い。私はリラを手に入れられないぐらいなら、殺して死んだ方がマシだと思ってこの縁談を押し通したんだ。想いは増すばかりなのに、手を引く訳が無いだろうが。他に奪われない為に閉じ込めたいと言う欲求はあるが、それだって性的欲求の方だ。私にとってリラは、唯一の異性であり、唯一の性的対象者だ。どれだけリラを欲しがる者達が現れようと、私はリラを譲る気は無い。リラの全ては私の物だ」


 エドワルドがリラを抱き締めたまま、きっぱりと言い切る。


「あんた……相当重いな」

「何とでも言えば良い。リラはこんな私でも、好きだと言ってくれるのだから」


 そんなエドワルドを見て、ダンはニヤリと笑う。


「だが、良いな。それぐらいでなけりゃあ俺の主人あるじは任せられん。良かったな、嬢ちゃん」

「それに、権力は私の一部だ。なので、捨てろと言われても困る。私がリラを守る最大の武器も権力だからな。権力に固執する気は無いが、喩えリラを連れて国から逃げるにしても、権力を捨てるより利用する方が得策だ。平民になれば、リラと二人で誰の邪魔もされずに暮らせると言う保証が百%有るなら未だしも、世の中百%なんて有り得ないしな」
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