氷結の毒華は王弟公爵に囲われる

カザハナ

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本編

135 (エドワルド視点)

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 エドワルドはまた、賑やかな夕食に参加して、エヴァンス家の者達との雑談を楽しむ。

 子供の頃から、一人での食事が殆どだった為、エヴァンス家の賑やかな夕食は、エドワルドにとって新鮮でしか無い。

 公爵になってからは、兄に誘われ、兄の家族と食事をするが、ここまで賑やかになる事は無い。

 貴族なら、家族だけで食事をするのが一般だが、エドワルドの場合は母親のハンナが、極力エドワルドと距離を取ろうとしていた為、物心付いた時には、食事は自室に運ばされていたぐらいだ。

 ハンナは二人に、エドワルドは一人で食べたいと言っていたと言い、エドワルドの乳母も口裏を合わせていた為、エドワルドが家族揃って食事をした回数は年に一度有るか無いかだろう。

 その、家族揃ってでの食事にしろ、話を振られない限り、無言で食べ続けていたので、余計に食事は一人で取りたいのだろうと思われていたのかも知れないが、エドワルドからすれば、食事は生命維持、体力維持と言った物で、美味い、不味いは有る分、不味い物を食べたいとは思わないが、楽しく食べると言う認識は無い。

 マーウィンは政務で食事時間がズレたり、アレクシスの教師にも働き掛けて、一時間程延長させたりして、アレクシスが食事に来た時には、エドワルドは待つのは嫌だと、もう食べ終わって部屋に戻ったとハンナは嘘を言い、エドワルドはエドワルドで、その事に対して一度も口を挟まなかったのだ。

 王位を放棄し、王宮を出て公爵になった後に、何故か兄に、よく食事に誘われるようになったが、家族を自慢したいのだろうと、時折付き合ってはいるが、あまり邪魔をするのも悪いので、二回に一度の割合で断れば、何故かその都度落ち込まれていた。

(何故落ち込まれていたのか、未だによく分からないが、王宮内で食事をする事も多いから、今度、兄上を食事に誘ってみようか。勿論、義姉上に誤解が無いように、声を掛けておかなければいけないだろうが)

 エヴァンス家で賑やかな食事に参加していると、一人での食事が味気無い物に感じてしまうから不思議だと、エドワルドは思っている。

 食事が楽しいと思った感情は殆ど抱いた事は無かったのだが、リラのいる世界は、何もかも感情が揺らめき、動く。こうした、ただの食事ですらも。

(惚れたのが、リラで良かった)

 エドワルドはリラを見て、つくづく心の奥底からそう思っていた。
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