氷結の毒華は王弟公爵に囲われる

カザハナ

文字の大きさ
248 / 805
本編

196

しおりを挟む
 アレクシスは、これまでの鬱憤や王城に娘を取られた家族達が詰め掛ける事も予想し、それに対応する兵士達も置いたが、予想していた程の混乱は無い。

 愚王に目を付けられた段階で、娘は死んだと諦めるしか無かったからだ。

 そうした者達は、三日後以降に、お触書通りに晒された首を見て、やり場の無い怒りを、愚王達の晒された首を目掛けて石を投げ付けていた。

 新国王となるのはその愚王の息子だが、あの王族の中で、唯一国民達を心配していた者であり、愚王により、婚約者を目の前で殺された挙げ句、愚王の餌食となった平民の母親が、愚王の子と知りながらも産み育てた子供だと噂を流布する。

 勿論これについては本人の承諾を得て、エヴァンス家の使用人達が王都で流した。

 同情心を煽り、敵意を薄める為だ。

 そして、兵士達には、王城内での彼の様子も王都で喋らせた。曰く、王子達に召し使い同様に扱われていたが、他の王族のような傍若無人な振る舞いを見せなかった事や、他の王子達と違い、女のいる後宮には近付かなかった事等が語られた。

 そして、新しい王に目通り願う貴族の中で、悪どい税の取り立てを行ない、私腹を肥やしていた者達のリストを作っていたジルギリスは、その選別されたリストを新王に渡す。

 因みに、新国王としてお披露目するのは一年後。

 ディーランの者達は、ドレファンの王城に十日間滞在する予定で、その間に愚王達の処刑や処罰した愚子達を坑山や娼館、汚物処理場等に各々分けて送る。

 その中の半数程はディーランに送られ、賠償金の負債額から引く事にし、賠償金も年数が長くなりはするが、国内の立て直しや国民の負担も考え、そちらを優先する条件で少しずつ支払えるようにした。

 そして賠償金とは別で、ディーランに食糧の融通をして貰う為に借金をする。このまま行けば、国民の半数以上は食糧不足による餓死が出てもおかしくないからで、既に地方で無理な取り立てをされた者達が餓えで死亡する者達が増え始めていると、ジルギリスの報告にあったのだ。

 ディーラン側は、ドレファンに来る前に、ある程度の食糧を周辺国にも呼び掛け金銭を払い、確保していた。ディーランだけだと負担が大きく国民達にも影響し兼ねない為、ドレファンに恩を売って置いても、損はしないだろうと呼び掛けて置いたので、相手の国も格安で売買してくれた。

 さすがに慈善事業では無いので、ドレファンに他国の仕入値金額と、ディーラン国内で売買される卸し値、各々に掛かる最低限の輸送、運送費価格を算出し、ディーランとドレファンの国境に運ばせて置いたのだ。

 最初、食糧を守るディーランの兵士達が続々と現れた事に、ドレファンの国民達に不安が過ったが、新国王となる男によるディーランとの交渉で、国民達に行き渡る為の食糧だと聞き、国民達は大いに喜びディーランとドレファンの新国王に感謝したと、後々まで伝えられた。
しおりを挟む
感想 2,440

あなたにおすすめの小説

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

もう無理して私に笑いかけなくてもいいですよ?

冬馬亮
恋愛
公爵令嬢のエリーゼは、遅れて出席した夜会で、婚約者のオズワルドがエリーゼへの不満を口にするのを偶然耳にする。 オズワルドを愛していたエリーゼはひどくショックを受けるが、悩んだ末に婚約解消を決意する。 だが、喜んで受け入れると思っていたオズワルドが、なぜか婚約解消を拒否。関係の再構築を提案する。 その後、プレゼント攻撃や突撃訪問の日々が始まるが、オズワルドは別の令嬢をそばに置くようになり・・・ 「彼女は友人の妹で、なんとも思ってない。オレが好きなのはエリーゼだ」 「私みたいな女に無理して笑いかけるのも限界だって夜会で愚痴をこぼしてたじゃないですか。よかったですね、これでもう、無理して私に笑いかけなくてよくなりましたよ」

病弱な彼女は、外科医の先生に静かに愛されています 〜穏やかな執着に、逃げ場はない〜

来栖れいな
恋愛
――穏やかな微笑みの裏に、逃げられない愛があった。 望んでいたわけじゃない。 けれど、逃げられなかった。 生まれつき弱い心臓を抱える彼女に、政略結婚の話が持ち上がった。 親が決めた未来なんて、受け入れられるはずがない。 無表情な彼の穏やかさが、余計に腹立たしかった。 それでも――彼だけは違った。 優しさの奥に、私の知らない熱を隠していた。 形式だけのはずだった関係は、少しずつ形を変えていく。 これは束縛? それとも、本当の愛? 穏やかな外科医に包まれていく、静かで深い恋の物語。 ※この物語はフィクションです。 登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。

愛された側妃と、愛されなかった正妃

編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。 夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。 連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。 正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。 ※カクヨムさんにも掲載中 ※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります ※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。

私が死んで満足ですか?

マチバリ
恋愛
王太子に婚約破棄を告げられた伯爵令嬢ロロナが死んだ。 ある者は面倒な婚約破棄の手続きをせずに済んだと安堵し、ある者はずっと欲しかった物が手に入ると喜んだ。 全てが上手くおさまると思っていた彼らだったが、ロロナの死が与えた影響はあまりに大きかった。 書籍化にともない本編を引き下げいたしました

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

ヤンデレにデレてみた

果桃しろくろ
恋愛
母が、ヤンデレな義父と再婚した。 もれなく、ヤンデレな義弟がついてきた。

処理中です...