氷結の毒華は王弟公爵に囲われる

カザハナ

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本編

310

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「王弟公爵って、あの?!でも、あれって、どんな美女にも靡かなかった、難攻不落と言われるぐらいの女性嫌いだって言われてなかったっけ?えっ、本当にリラで良いんですか?こいつ、頭も口も回る分、細かい事に口煩いですよ?女性なんて、選り取り見取りの選び放題なんだから、もっと従順な女性も浮気を許容する女性も幾らだっているのに……」

「私は媚びる女性も頭の鈍い女性も、従順なだけのつまらない女性も嫌いなのですよ。女性なら誰でも良いと思っている男と、一緒にしないで頂きたい。それに、私は彼女以外は眼中に無い。彼女良いでは無く彼女良いのです。喩え従兄であろうと、彼女に対する物言いは充分気を付けて頂きたい。リラ嬢は未来の公爵家の花嫁であり、私の妻、つまりは王族の一員になるのですから。ああ、それともう一つ。従兄だろうと何だろうと、今後、私の最愛を少しでも傷付けるような言動が有れば、私は容赦無く地獄の底に叩き込む気でいますので、それだけは忘れないで下さいね。貴族なのだから、上下関係を少しは頭に入れないと、処刑をされても文句は言えないからな?」


 エドワルドが、リラを隠すように前に立ちはだかり、殺気を含むブリザードが吹き荒れ、キルロスは動けない。


「馬鹿だよね、キルロスは。エドワルド殿はリラにしか興味無いのに、他の女性を勧めようとしたら、怒るに決まっているよ。唯でさえリラが大好きなのに、そのリラを軽視するような発言を繰り返しているんだから。従順?浮気許容?そんなの、エドワルド殿が望む訳が無いし、僕だってそんな男に大切なリラを渡す気は無いよ」


 ジーンがキルロスを冷たく見返し、エドワルドの隣に立つ。

 二人のブリザードに晒され、真っ青な顔で震えるキルロスの後ろから涼やかな声が聴こえる。


「キルロス様?先程の言葉は、キルロス様の本心と捉えても宜しいのでしょうか?もっと従順な女性か、浮気を許容される女性が良かったと……」


 キルロスがビクッと震えて、恐る恐る振り返れば、そこには妖艶な雰囲気を纏う女性がいた。


「あっ……アンナ?」

「キルロス様?ちょ~っと、馬車の中でお話しましょうか♥」

「ごっ、誤解だから!!僕はアンナ一筋だから!!!」

「ああ、リラ様、ご婚約おめでとう御座います。王弟公爵に見初められるだなんて、さすがですわ♪後で詳しく馴れ初めを教えて下さいな。それでは少しだけ席を外させて頂きますわね」

「リラ、後でペール夫人にキルロスの女性遍歴でも教えてあげると良いよ」

「ちょっ、ジーン?!」

「まぁ、それは是非お聞きしたいですわ!後でじっくり教えて頂きますわね?キルロス様」


 そういってアンナは、キルロスを引っ張り、馬車の中に引き摺り込んだ。
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