氷結の毒華は王弟公爵に囲われる

本編

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「リラの生活水準を、引き下げたくは無いのもある。それに、暫くは居てくれると言ってくれているけれど、勘違いとは言え、リラの大切なレベッカを疑ったランドールが、最高責任者に戻ったとしたら、リラの心境としては微妙だろうからね」

「エドワルド様っ!!……ですが、彼はエドワルド様にとって、わたくしのレベッカのような存在なのでしょう？」


　リラが一瞬嬉しそうな顔をするものの、直ぐに何かに思い当たり、シュンとする。


「それはそうだけど、私はリラかランドールかと問われれば、即決でリラを選ぶ程にリラの事を愛しているからね」


　あっさりとエドワルドはそう言うが、リラは自分もそうだとは言い切れない。きっと、迷って迷って迷い抜いた末に、エドワルドを選んだとしても、レベッカの事が気になって仕方が無いと思うから。

　そんな風に思いながら、即決出来ない自分が情けなく感じていると、エドワルドが声を掛けて来る。


「リラにそんな決断をさせる気は無いから、大丈夫だよ。そもそも、レベッカがリラから離れるような不始末をやらかすなんて思えないし、レベッカ自身が、リラの傍から居なくなる時が有るとすれば、結婚する事ぐらいだろうけれど、結婚して余所に行くぐらいなら身近な同僚と結婚して、ずっとクルルフォーン家にいると言われそうな気がするよ」


　エドワルドがチラリとレベッカを見やれば、レベッカも、当然です！と言わんばかりに頷いている。

　そんなレベッカを見て、リラはホッとするが、それでも主人として、レベッカの幸せを願うから、一応これだけは言っておこうと声を出す。


「それでも、もし、他に好きな方が出来てしまった場合は、後悔しないようにしてね？レベッカの命も想いも、レベッカだけの物だから、幸せになれる道を選んでね？」


　リラが心配そうに言うと、レベッカは返事をする。


「勿論です！大好きなリラお嬢様に想われて、あたしはとっても幸せですからね♪あたしは絶対リラお嬢様を悲しませる事なんてしませんから！」


　明らかに、リラ以上に好きになれる異性なんて現れそうに無いから、エドワルドの言うように、身近な場所で手を打つか、仕事一本で行くかだから、全く問題無いわと思っている事が、リラ以外には丸解りだったりするのだが、態々リラに言う事でも無いので皆口をつぐんでいる。

　レベッカのリラへの想いは、これ程までに解り易いと言うのに、ランドールは一体どこをどう見ていたのやら……。

　エドワルドは、自分の執事であるランドールの、女を見る目の無さと節穴具合に、ただただ呆れるしか無かったのだった。