氷結の毒華は王弟公爵に囲われる

カザハナ

文字の大きさ
420 / 805
後日談

12

しおりを挟む
 ランドールは控えの侍女に、髪型とメイクを直され、貴族女性のお茶会の様子を真似た茶会デビューを果たすのだが、侍女達の熱演振りに、二の句が継げない。

 何せ、笑顔でドレスやアクセサリー等を誉め合いながらも、互いの情報をひけらかし、嫌味や陰口の応酬に移行し、挙げ句、高物件の男を漁るには、どのような攻略が良いか、誰それの趣味はああだ、彼はこうだ、あの男は愛人募集してるだの、後妻を探してるだのと情報を交換し合い、どこぞの令嬢は二股掛けてるだの、他の女に寝取られたらしいだの、ゴシップにまで発展する始末。

 しかも、侍女達は途中、ランドールに話を振ったり、意見を聞いたり色々としてくれるのだが、ランドールは何一つ答えられずにいるのだ。

 その中にも癖の強い女性を演じる侍女が数人いて、誰彼構わずセクハラ発言を繰り返す者もいた為、なるべく目を合わせないようにしたと言うのに、向こうから近付いてきて、話し掛けて来る始末。


「あら、貴女新顔ね?可哀想なぐらいの貧乳だわ。みっともないからパッドでも詰めて、侍従や他の男の使用人にでも揉ませなさいな。それじゃあ幾ら経っても男は寄り付かないわ。あそこにいる令嬢も、元は貧乳で男に揉ませて大きくしたって専らの噂よ?あの令嬢だってパッドを詰めて、大きく見せてるだけなんだから」


 ランドールは顔を赤く染め上げ、女の癖になんて破廉恥なと怒鳴り付けたかったが、何分初めての絡まれ方で、羞恥と怒りがごちゃ混ぜで、口をパクパクと開け閉めを繰り返すが、肝心の言葉が出て来ない。

 そうこうしてる内に、その侍女は他の令嬢演じる他の侍女の元に向かって行った。

(何故、私が、こんな目に~っっ!!!)

 涙目で周囲を睨み付けるも、侍女達は全くと言って良い程動じない。

 当然だろう。彼女達は数多くの場数を踏んでいるし、高が他領の使用人程度に怯む事等無いに近い。何せ、普段傍にいるのは、同じエヴァンス家に仕える凄腕の同僚達で、腕を競い合う好敵手ライバルであり、頼もしい家族のような存在だ。

 因みに、他にも、自分の事は大して話さない癖に、他人の事を根掘り葉掘り聞きまくる女性や、自分自慢の構ってちゃん等を演じる侍女もいる為、ある種のカオスと化しているが、それはエヴァンス家に仕える侍女達の見せ所なのか、ちゃんと茶会として成立させていた。


「あ~あぁ、お馬鹿ねランちゃん。あんなの構ってたら切りが無いのにぃ。って言うか、貴族の人達にもいるのねぇ、ああいう迷惑な女性達が」

「それは勿論。貴族であろうと人間ですからね。侍女達が演じているのは実在する人物達で、貴族女性達が見れば、簡単に名前を言い当ててしまえる人もいると思いますよ」


 サイナスがマッド達にお茶を入れながら、茶会の様子をマッド達と見物し、こんな会話を繰り広げていたなんて、ランドールはちっとも気付いていなかった。
しおりを挟む
感想 2,440

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

もう無理して私に笑いかけなくてもいいですよ?

冬馬亮
恋愛
公爵令嬢のエリーゼは、遅れて出席した夜会で、婚約者のオズワルドがエリーゼへの不満を口にするのを偶然耳にする。 オズワルドを愛していたエリーゼはひどくショックを受けるが、悩んだ末に婚約解消を決意する。 だが、喜んで受け入れると思っていたオズワルドが、なぜか婚約解消を拒否。関係の再構築を提案する。 その後、プレゼント攻撃や突撃訪問の日々が始まるが、オズワルドは別の令嬢をそばに置くようになり・・・ 「彼女は友人の妹で、なんとも思ってない。オレが好きなのはエリーゼだ」 「私みたいな女に無理して笑いかけるのも限界だって夜会で愚痴をこぼしてたじゃないですか。よかったですね、これでもう、無理して私に笑いかけなくてよくなりましたよ」

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

ヤンデレにデレてみた

果桃しろくろ
恋愛
母が、ヤンデレな義父と再婚した。 もれなく、ヤンデレな義弟がついてきた。

私が死んで満足ですか?

マチバリ
恋愛
王太子に婚約破棄を告げられた伯爵令嬢ロロナが死んだ。 ある者は面倒な婚約破棄の手続きをせずに済んだと安堵し、ある者はずっと欲しかった物が手に入ると喜んだ。 全てが上手くおさまると思っていた彼らだったが、ロロナの死が与えた影響はあまりに大きかった。 書籍化にともない本編を引き下げいたしました

愛された側妃と、愛されなかった正妃

編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。 夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。 連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。 正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。 ※カクヨムさんにも掲載中 ※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります ※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。

ハイスぺ幼馴染の執着過剰愛~30までに相手がいなかったら、結婚しようと言ったから~

cheeery
恋愛
パイロットのエリート幼馴染とワケあって同棲することになった私。 同棲はかれこれもう7年目。 お互いにいい人がいたら解消しようと約束しているのだけど……。 合コンは撃沈。連絡さえ来ない始末。 焦るものの、幼なじみ隼人との生活は、なんの不満もなく……っというよりも、至極の生活だった。 何かあったら話も聞いてくれるし、なぐさめてくれる。 美味しい料理に、髪を乾かしてくれたり、買い物に連れ出してくれたり……しかも家賃はいらないと受け取ってもくれない。 私……こんなに甘えっぱなしでいいのかな? そしてわたしの30歳の誕生日。 「美羽、お誕生日おめでとう。結婚しようか」 「なに言ってるの?」 優しかったはずの隼人が豹変。 「30になってお互いに相手がいなかったら、結婚しようって美羽が言ったんだよね?」 彼の秘密を知ったら、もう逃げることは出来ない。 「絶対に逃がさないよ?」

処理中です...