氷結の毒華は王弟公爵に囲われる

カザハナ

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後日談

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 マッドがシャツを着て、ライラがいるだろう、店の待ち合い室のような場所に顔を出せば、案の定ライラがいた。


「ライちゃん、さっきは何だったのぉ?」


 マッドがライラに声を掛けると、まだ頬に赤みを残したライラがマッドをキッと睨む。


「マッドさん!女性だと言うのなら、もっと警戒して下さい!ボクはこんななりでも男なんですから!!」

「あたしの場合は、中身は女でも外見は男よぅ?ライちゃんこそ、中身は男なのに乙女な反応になってるじゃない。そんなんじゃ、その辺上半身剥き出しで歩いてる男に、襲われちゃうわよぉ?」

「他の男にあんな反応しませんよ!!あれは貴女が女性だからですし、外見は男でも中身は女性なんですから、女性の素肌を見た事になるじゃないですか!そこいらの男なら、ボクだって男の身体で生まれたかったのにとか、自慢しやがってとか、そんな風にしか思えませんし、男の身体が欲しくても、現実はこんなで……本当、格好悪い……」


 ライラの言葉でマッドはキョトンとするが、意味を徐々に理解する。

(まさかライちゃん、そんな事考えてたのぉ?!?)


「……ライちゃん……充分格好良いわぁ~……」


 思わずマッドがボソッと呟くが、ライラには聴こえていない。


「?」

「あたしをそんな風に見てくれるのは、ライちゃんぐらいよぉ。ライちゃんは、とっても良い人ねぇ」

「……良い人って、ボクは事実を言ったまでですよ」


 そんな事を話していると、娼婦達が顔を出す。


「あら?マッドちゃん、綺麗な色のシャツねぇ♪とっても似合ってるわよ!」

「あらぁん♪有難う♥これ、知り合いから貰ったのよぅ!良い色よねっ♪あたし、こんな色のが欲しかったんだけど、あたしのサイズだと売って無いのよねぇ~」

「そうなんですか?」

「そうなのよぉ~。あたしのサイズだと規格外だからぁ、大して売られて無いのよねぇ。どうしても欲しい場合は、オーダーメイドで頼むしか無くてぇ、既製品はいつも着ているような、くすんだ色のしか無いのよぉ。これねぇ、貴族令嬢に無理難題を言われて困っていた仕立て屋の青年がいたから、ちょっとだけ手助けしてあげたの。そしたら店に多大な損害が出ずに済んだお陰だって、お礼にくれたのよぉ♪ちょっと手助けしただけなのに、律儀よねぇ」

「……その青年って、マッドちゃんの本性知ってるの?」

「ええ。何でそんなにドレスに詳しいのか聞かれちゃって、たまたまドレスも持ってたし、もう会う事もないだろうから良いかと思ってたんだけど、その後に再会しちゃってぇ。貴族令嬢から詫び状が届いて、その後もちゃんとした依頼が入ったから、そのお礼にってね♪本当、仕事熱心よねぇ」

「……それって、マッドちゃんに気があるとかじゃ?」

「無い無い。どう見ても、二十代ぐらいの若者よぉ?相手は、女性達と接する機会が多い仕立て屋よぉ?あたしのような特殊な者をなんて、そんな美味しい話、無いわよぅ」


 マッドはあっさり否定した。
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