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後日談
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シルビアを愛撫しながら、ふと、頭を過ったのはシルビアの言葉。
『好きですダン!あの約束の日から、今日で十年が経ちました!だから、今度こそ私と、お付き合いをして下さい!!』
最初の頃は、断っても断っても、ずっと付き纏い、懲りずにダンへ、交際を申し込んで来るシルビアに、『なら、十年経ってもその気持ちが変わんねぇっつうなら、その時お前と付き合ってやる。ただし、その十年間は、俺に愛を告げるのは無しだ』と言って、シルビアが諦めるか、そのまま十年、誰とも付き合わずに、ずっと時が過ぎるのを待つのか、ダンはシルビアに賭けた。
そもそもシルビアは、最初からダンの好みのド真ん中な女だった。
小さなリラを背後に庇い、十数人の敵を前にしても、全く引かずに前を見据えていた、格好良い一人の女。
凛と佇む姿に、良い女だと、ダンは思った。
もう一人、護衛の格好をした女も居たが、腰は引け、周囲の雰囲気に負けていた。
ただそれは、もう一人いた、侍女のような女もだったが、それでも三人が三人共、傍に居る子供だけは、何としても逃がそうと考えているのは感じられた。
その姿勢は、ダンにとっては好ましい。
今まで助けに入った相手の中には、主人や、仕える家の子供と思える相手を、見捨てて逃げ出した者達も、少なく無かったのだ。
ただ、この国でダンは、異質な存在らしく、どの領地に行っても、自分と同じような、黒髪に褐色の肌をした人間と出会う事はなかったし、平民ですら誰一人、ダンを雇おうとする者はいなかった。
そして、今回と似たような状況で出会う相手の殆どは、碌でも無い相手が多く、ならず者から助けてやっても、ダンをそのならず者と同類、もしくはそれ以下だと判断し、お礼を言う所か、ダンを罵り、逃げて行った。
お礼を言われたかった訳でも、報酬を要求するつもりも無かったダンからすれば、それが性分だっただけで、何の迷いも無く助けただけだ。他に他意は無かったから、別にそれでも良かったのだが。
とは言え、路銀を稼ごうにも仕事は無く、場所に依っては、物すら売って貰えない事も有ったぐらいだ。
その為、食事は木の実や魚、罠を仕掛けて獣を捕まえたりもしていたが、いつも取れると言う訳にはいかない。
さすがに長居は出来そうに無いと、港が有ると言われる、セイル領へと向かう途中に、たまたま入ったエヴァンス領で、遭遇したのが目の前の有り様だ。
大の男連中が、女子供相手に、嘆かわしい。
「ゲスが……」
ダンは腰に下げてた剣を、鞘まま抜き取り声を上げた。
「てめぇ等の相手は、この俺だぁ!!」
十数人いた男達を、次々に地面へと叩き付け、ダンは自分を認識した者達も含め、実力の差を見せ付けて、一撃で沈めて行った。
一応キツめに一撃を入れたので、半日は目を覚まさないだろう。
そして、ならず者達全員を伸した後で、ダンは空腹のあまり、身体をぐらつかせ、そのまま倒れる。
「えっ……ちょっと?!」
「腹……減った……」
空腹で目を回したまま、ダンは意識を手放した。
(どうせ、意識を保っていようといまいと、助けた相手は逃げ出す筈だ。それなら少しだけ休んだ所で問題は無い。さすがに助けに入った相手を殺すような事はしないだろ。殺気が有るなら、条件反射で嫌でも身体が動くしなぁ)
目が覚めたら、豪華な部屋と食事が待ってるなんて、その時のダンは、欠片も思って無かったのだった。
『好きですダン!あの約束の日から、今日で十年が経ちました!だから、今度こそ私と、お付き合いをして下さい!!』
最初の頃は、断っても断っても、ずっと付き纏い、懲りずにダンへ、交際を申し込んで来るシルビアに、『なら、十年経ってもその気持ちが変わんねぇっつうなら、その時お前と付き合ってやる。ただし、その十年間は、俺に愛を告げるのは無しだ』と言って、シルビアが諦めるか、そのまま十年、誰とも付き合わずに、ずっと時が過ぎるのを待つのか、ダンはシルビアに賭けた。
そもそもシルビアは、最初からダンの好みのド真ん中な女だった。
小さなリラを背後に庇い、十数人の敵を前にしても、全く引かずに前を見据えていた、格好良い一人の女。
凛と佇む姿に、良い女だと、ダンは思った。
もう一人、護衛の格好をした女も居たが、腰は引け、周囲の雰囲気に負けていた。
ただそれは、もう一人いた、侍女のような女もだったが、それでも三人が三人共、傍に居る子供だけは、何としても逃がそうと考えているのは感じられた。
その姿勢は、ダンにとっては好ましい。
今まで助けに入った相手の中には、主人や、仕える家の子供と思える相手を、見捨てて逃げ出した者達も、少なく無かったのだ。
ただ、この国でダンは、異質な存在らしく、どの領地に行っても、自分と同じような、黒髪に褐色の肌をした人間と出会う事はなかったし、平民ですら誰一人、ダンを雇おうとする者はいなかった。
そして、今回と似たような状況で出会う相手の殆どは、碌でも無い相手が多く、ならず者から助けてやっても、ダンをそのならず者と同類、もしくはそれ以下だと判断し、お礼を言う所か、ダンを罵り、逃げて行った。
お礼を言われたかった訳でも、報酬を要求するつもりも無かったダンからすれば、それが性分だっただけで、何の迷いも無く助けただけだ。他に他意は無かったから、別にそれでも良かったのだが。
とは言え、路銀を稼ごうにも仕事は無く、場所に依っては、物すら売って貰えない事も有ったぐらいだ。
その為、食事は木の実や魚、罠を仕掛けて獣を捕まえたりもしていたが、いつも取れると言う訳にはいかない。
さすがに長居は出来そうに無いと、港が有ると言われる、セイル領へと向かう途中に、たまたま入ったエヴァンス領で、遭遇したのが目の前の有り様だ。
大の男連中が、女子供相手に、嘆かわしい。
「ゲスが……」
ダンは腰に下げてた剣を、鞘まま抜き取り声を上げた。
「てめぇ等の相手は、この俺だぁ!!」
十数人いた男達を、次々に地面へと叩き付け、ダンは自分を認識した者達も含め、実力の差を見せ付けて、一撃で沈めて行った。
一応キツめに一撃を入れたので、半日は目を覚まさないだろう。
そして、ならず者達全員を伸した後で、ダンは空腹のあまり、身体をぐらつかせ、そのまま倒れる。
「えっ……ちょっと?!」
「腹……減った……」
空腹で目を回したまま、ダンは意識を手放した。
(どうせ、意識を保っていようといまいと、助けた相手は逃げ出す筈だ。それなら少しだけ休んだ所で問題は無い。さすがに助けに入った相手を殺すような事はしないだろ。殺気が有るなら、条件反射で嫌でも身体が動くしなぁ)
目が覚めたら、豪華な部屋と食事が待ってるなんて、その時のダンは、欠片も思って無かったのだった。
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