氷結の毒華は王弟公爵に囲われる

カザハナ

文字の大きさ
613 / 805
後日談

15

しおりを挟む
「リラ様はコミュ障だと、ステラから以前にお聞きしましたが、本当にそうなのですか?わたくし、全然そうとは思えなかったのですが……」


 クルルフォーン邸から帰宅する馬車の中で、アシュリーはジーンに問う。

 リラと接していた際に、リラがコミュ障だとは、どうしても思えなかったからだ。

 とは言え、そんな事をリラに直接聞く訳にもいかず、ジーンに聞いた次第だ。


「ああ、それはリラが、アシュリー嬢を家族扱いしたからですよ。リラは、王都の令嬢を好きになれなかったようですが、アシュリー嬢は気に入ったようですね。好き嫌いはハッキリしてるので、気に入らなければあれ程喋りませんから。それと、あれ程笑顔で対応するようになったのは、エドワルド殿のお陰ですね。社交界では無表情で、言葉を武器に、正論で威嚇しますから。その内アシュリー嬢を夜会でお披露目しますが、その時、リラの外用の顔が見れると思いますよ」

「じゃあ、わたくしも、リラ様に無表情で対応されてしまうのですか?」


 腕を組んでいたジーンが、向かい合って座る、少し落ち込んだアシュリーの手を取り、ジーンは優しく手を握る。


「無表情が一番真面な顔だと思い込んでいるからね。でも、婚姻後はエドワルド殿が常に傍から離れないし、アシュリー嬢の事は気に入ったのだから、アシュリー嬢に対する対応と、他の貴族達との対応では、大いに違うと思うよ。ああ、それと、夜会等で、私がどうしても席を外さないといけない場合は、必ずリラの傍に居て欲しい。リラの横なら、貴女を傷付けようとする馬鹿な貴族連中は寄って来られないからね」


 万が一来ようものなら、リラの口撃と、エドワルドが容赦の無い敵意を向けるだろう。

 勿論、敵意だけで済む筈も無く、お先真っ暗な人生を歩む羽目になる筈だ。

 ジーンはアシュリーと視線を合わせて微笑むものだから、アシュリーは少し気恥ずかしそうに頬をほんのり赤く染め上げ、握られた手を振り払う事も出来ず、ジーンはジーンでそんなアシュリーの姿を、屋敷に着くまでじっくりと愛でていた。





 そして、アシュリーがリラの所を訪れて数日後、リラからアシュリー宛のお茶会の招待状が届き、アシュリーはその日を楽しみに、エヴァンス邸では昼は読書、ジーンが帰ってきてからはジーンの執務室で仕事の手伝いをさせて貰い、充実した日々を送りながら、お茶会の当日を向かえた。

    アシュリーのドレスは既製品を、クレアが手直しし、リメイクした物で、急遽短い時間で作り直した物では有るものの、アシュリーにとてもよく似合っている。

 アシュリーからすれば、元々動き易さを重視した、地味なドレスばかりを着ていた為、既製品とは思えない、身体にピッタリとフィットした、華やかで動き易いドレスに戸惑いつつも、嬉しくて仕方無い。

 着飾る事が嫌いだった訳では無く、ドレスの殆どは、オーダーメイドになる事が多く、そうなるとかなりのお金が掛かるから、領地経営や財務を管理していた身とすれば、義妹が必要以上に買うドレスの出費が多いのに、自分も多く買おうと言う気は起きなかったのだ。

 時間が無かった為、既製品で申し訳有りませんが、手は加えたので、暫くはこのような物で我慢して下さいねとクレアに言われたが、既製品だなんて思えない程、華やかで動き易く、着心地も最高で、アシュリーはとても喜び、クレアに満面の笑顔でお礼を言ったのだった。
しおりを挟む
感想 2,440

あなたにおすすめの小説

病弱な彼女は、外科医の先生に静かに愛されています 〜穏やかな執着に、逃げ場はない〜

来栖れいな
恋愛
――穏やかな微笑みの裏に、逃げられない愛があった。 望んでいたわけじゃない。 けれど、逃げられなかった。 生まれつき弱い心臓を抱える彼女に、政略結婚の話が持ち上がった。 親が決めた未来なんて、受け入れられるはずがない。 無表情な彼の穏やかさが、余計に腹立たしかった。 それでも――彼だけは違った。 優しさの奥に、私の知らない熱を隠していた。 形式だけのはずだった関係は、少しずつ形を変えていく。 これは束縛? それとも、本当の愛? 穏やかな外科医に包まれていく、静かで深い恋の物語。 ※この物語はフィクションです。 登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です

朝陽七彩
恋愛
 私は。 「夕鶴、こっちにおいで」  現役の高校生だけど。 「ずっと夕鶴とこうしていたい」  担任の先生と。 「夕鶴を誰にも渡したくない」  付き合っています。  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  神城夕鶴(かみしろ ゆづる)  軽音楽部の絶対的エース  飛鷹隼理(ひだか しゅんり)  アイドル的存在の超イケメン先生  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  彼の名前は飛鷹隼理くん。  隼理くんは。 「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」  そう言って……。 「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」  そして隼理くんは……。  ……‼  しゅっ……隼理くん……っ。  そんなことをされたら……。  隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。  ……だけど……。  え……。  誰……?  誰なの……?  その人はいったい誰なの、隼理くん。  ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。  その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。  でも。  でも訊けない。  隼理くんに直接訊くことなんて。  私にはできない。  私は。  私は、これから先、一体どうすればいいの……?

ヤンデレにデレてみた

果桃しろくろ
恋愛
母が、ヤンデレな義父と再婚した。 もれなく、ヤンデレな義弟がついてきた。

もう無理して私に笑いかけなくてもいいですよ?

冬馬亮
恋愛
公爵令嬢のエリーゼは、遅れて出席した夜会で、婚約者のオズワルドがエリーゼへの不満を口にするのを偶然耳にする。 オズワルドを愛していたエリーゼはひどくショックを受けるが、悩んだ末に婚約解消を決意する。 だが、喜んで受け入れると思っていたオズワルドが、なぜか婚約解消を拒否。関係の再構築を提案する。 その後、プレゼント攻撃や突撃訪問の日々が始まるが、オズワルドは別の令嬢をそばに置くようになり・・・ 「彼女は友人の妹で、なんとも思ってない。オレが好きなのはエリーゼだ」 「私みたいな女に無理して笑いかけるのも限界だって夜会で愚痴をこぼしてたじゃないですか。よかったですね、これでもう、無理して私に笑いかけなくてよくなりましたよ」

ハイスぺ幼馴染の執着過剰愛~30までに相手がいなかったら、結婚しようと言ったから~

cheeery
恋愛
パイロットのエリート幼馴染とワケあって同棲することになった私。 同棲はかれこれもう7年目。 お互いにいい人がいたら解消しようと約束しているのだけど……。 合コンは撃沈。連絡さえ来ない始末。 焦るものの、幼なじみ隼人との生活は、なんの不満もなく……っというよりも、至極の生活だった。 何かあったら話も聞いてくれるし、なぐさめてくれる。 美味しい料理に、髪を乾かしてくれたり、買い物に連れ出してくれたり……しかも家賃はいらないと受け取ってもくれない。 私……こんなに甘えっぱなしでいいのかな? そしてわたしの30歳の誕生日。 「美羽、お誕生日おめでとう。結婚しようか」 「なに言ってるの?」 優しかったはずの隼人が豹変。 「30になってお互いに相手がいなかったら、結婚しようって美羽が言ったんだよね?」 彼の秘密を知ったら、もう逃げることは出来ない。 「絶対に逃がさないよ?」

【完結】異世界に転移しましたら、四人の夫に溺愛されることになりました(笑)

かのん
恋愛
 気が付けば、喧騒など全く聞こえない、鳥のさえずりが穏やかに聞こえる森にいました。  わぁ、こんな静かなところ初めて~なんて、のんびりしていたら、目の前に麗しの美形達が現れて・・・  これは、女性が少ない世界に転移した二十九歳独身女性が、あれよあれよという間に精霊の愛し子として囲われ、いつのまにか四人の男性と結婚し、あれよあれよという間に溺愛される物語。 あっさりめのお話です。それでもよろしければどうぞ! 本日だけ、二話更新。毎日朝10時に更新します。 完結しておりますので、安心してお読みください。

処理中です...