氷結の毒華は王弟公爵に囲われる

カザハナ

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後日談

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 年末が近付き、ジルギリスとリリーがドレファンから一時帰国し、セイル家の先代当主で有り、アシュリーの義父になるデュランと、現当主で有るディーク夫妻がエヴァンス家に訪問してくる事になっていた。

 そして、リリーと初めて対面した時の事。


「初めまして、わたくしアシュリーと申します。不束者では御座いますが、何とぞ宜しくお願い致します」


 そこには、ジーンのような年の子供がいるとは到底思えないぐらいに、若々しくも美しい女性が居た為、アシュリーはジーンに姉も居たのかと思っていたのだ。


「初めまして、わたくしジーンの母親のリリーと言います。この先仲良くしましょうね」

「おっ……お姉様では無く、お母様ですか?!」


 アシュリーが驚くのも無理は無い。

 リリーは未だに貴族男性から、一夜だけの相手でも良いと望まれる程の美女なのだから。

 勿論そんな相手に容赦してやる義理は無いので、エヴァンス家の者達は二度とそんな気を起こさせないようにするだけだ。


「あら、嬉しい。これからは貴女の義母でも有るのだから、遠慮無く頼って頂戴ね。アーシュと呼んでも構わないかしら?」

「勿論です、リリー様」

「そこは、『リリーお義母様かあさま』よ、アーシュ」

「はい、リリーお義母様」


 茶目っ気たっぷりに微笑むリリーに、少し照れながら、アシュリーは嬉しさ満載の笑顔で応える。


「私はジーンの父親で、エヴァンス家当主のジルギリスだよ。私の事も、ジルお義父様とうさまと呼んで欲しいな」


 リラと同じ色合いの、穏やかで優しそうな雰囲気のジルギリスの言葉に、アシュリーは安堵する。


「はい、ジルお義父様。わたくしの事も、アーシュとお呼び下さい」

「私もアーシュと呼ぼうかな。他の呼び方でも良いけれど、アシュリー嬢にはアーシュが一番似合ってるからね」


 それに、ジーンだけが正式名で呼ぶと、ジーンはこの婚約に乗り気では無いと、勘違いしそうな輩が出没しそうでも有るから、そんな希望は打ち砕くに限る。

 そう思いながらニッコリと微笑めば、アシュリーが頬を赤く染め上げ、本当に嬉しそうに微笑むから、ジーンとしては毒気を抜かれる思いだ。

(うん。でも、これがアシュリー嬢……アーシュだよね。最近益々綺麗さや可愛さに磨きが掛かっていくから、あの男が心底後悔する姿が目に浮かぶな。アーシュは素直だから、父上を見た目通り、穏和な人物だと思ってそうだなぁ。まぁ、アーシュに対しては穏和だろうから、その辺は大丈夫かな?)

 ジルギリスを見た目通りに捉えると、大抵の者達は酷い目に合うが、それはジルギリスを見た目だけで侮るからで有って、アシュリーの場合は侮ってる訳では無いし、家族として受け入れられてるので問題無いだろう。


「エヴァンス家の皆様は、優しい方達ばかりなので、嫌われずに済んで良かったです」


 優しいのは身内認定しているからだと誰もが思ったが、そんな事を知らないアシュリーは一人、心底喜んでいたのだった。
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