665 / 805
後日談
ライラの日常 1
しおりを挟む
ライラがクルルフォーン家の使用人として雇われ、数年が経った頃。
ライラは昔お世話になった娼館に、マッドと一緒に息子のルッグスを連れて顔を出す。
「こんにちは。お久し振りです」
ライラが声を掛けると、客を見送った後に、一階の受け付けの机で突っ伏していたのだろう娼婦が、ガバッと顔を上げ、黄色い歓声を上げる。
「キャァ~!ライ君にマッドちゃん!それにルッグス君もいる~♪」
そんな歓声が聴こえたのだろう、上階で休んでいただろう、他の娼婦達も下りて来る。
「マッドちゃんライ君、いらっしゃい~!」
「ルッグス君、大きくなったねぇ♪こっちにおいで~!」
「あたしにも、抱~か~せ~て~!」
「ちょっとは静かにしな!泣いちまったらどうすんだい」
店主も下りて来て、娼婦達に注意する。
「あらん、大丈夫よぉ♪ウチの子、騒がしいのには慣れてるからぁ♪ねぇライちゃん」
「ええ。子供が周りにも居る環境ですからね」
「ただ、あれは確実にヨルドちゃんのお陰よねぇ~。本来あれだけの子供が居れば、ギャン泣きの連鎖は確実に起こるもの」
「羨ましい~!前から聞いて思ってたけど、一家に一人居て欲しい人材だわぁ!」
「それは止めといた方が賢明かしらぁ?我が子の初の言葉が『よ~』になって、暫くそれが続いたりしたら、子供を可愛がる親としては、泣きたくなっちゃうわよ?」
「「あ~、それは確かに……」」
幸いと言うべきか、一日中一緒と言う訳では無いので、各々の子供達の第一声が、一応『よ~』にならずに済んでいるようだが、一日中となれば、違った結果になっただろう。
「ライ君は、子供達の護衛でしょ?普段何をしているの?」
「あー……。子供達の遊びの付き合いや、一緒に勉強を学んでいますが、中々……いえ、かなりハードです」
クルルフォーン家はエドワルドが初の当主で有る為、当然その使用人達に子育てと言うスキルは無い。
ヨルドは別格としか言い様が無いだけだ。
その為、エヴァンス家の使用人達が主体で子育てをしているのだが、勉強にしろ、遊びにしろ、飽きさせないよう色々と工夫をされているのだろう、大人が参加しても為になると言うか、寧ろ、子供の吸収力の凄さに驚かされてしまう程だ。
勿論個々に、得手不得手が有るので、それに依って吸収力も違うのだが、それでも教え方が上手い為、子供達は楽しそうに、日々、成長して行く。
「まぁ~、まぁ~」
「はいはぁ~い♪どうしたの?ルッグス」
ルッグスの呼び掛けに、マッドが答える。
「……マッドちゃんの事なんだ?」
「ええ。僕は他の子達からもライと呼ばれるので、『まぁ~』はマッドさんの事ですよ。ルッグスは僕に似て、マッドさんが大好きだから、ああやって、同じ空間に居ると、よく呼びますよ」
ライラはそう言って、マッドとルッグスに優しい眼差しを向けた。
ライラは昔お世話になった娼館に、マッドと一緒に息子のルッグスを連れて顔を出す。
「こんにちは。お久し振りです」
ライラが声を掛けると、客を見送った後に、一階の受け付けの机で突っ伏していたのだろう娼婦が、ガバッと顔を上げ、黄色い歓声を上げる。
「キャァ~!ライ君にマッドちゃん!それにルッグス君もいる~♪」
そんな歓声が聴こえたのだろう、上階で休んでいただろう、他の娼婦達も下りて来る。
「マッドちゃんライ君、いらっしゃい~!」
「ルッグス君、大きくなったねぇ♪こっちにおいで~!」
「あたしにも、抱~か~せ~て~!」
「ちょっとは静かにしな!泣いちまったらどうすんだい」
店主も下りて来て、娼婦達に注意する。
「あらん、大丈夫よぉ♪ウチの子、騒がしいのには慣れてるからぁ♪ねぇライちゃん」
「ええ。子供が周りにも居る環境ですからね」
「ただ、あれは確実にヨルドちゃんのお陰よねぇ~。本来あれだけの子供が居れば、ギャン泣きの連鎖は確実に起こるもの」
「羨ましい~!前から聞いて思ってたけど、一家に一人居て欲しい人材だわぁ!」
「それは止めといた方が賢明かしらぁ?我が子の初の言葉が『よ~』になって、暫くそれが続いたりしたら、子供を可愛がる親としては、泣きたくなっちゃうわよ?」
「「あ~、それは確かに……」」
幸いと言うべきか、一日中一緒と言う訳では無いので、各々の子供達の第一声が、一応『よ~』にならずに済んでいるようだが、一日中となれば、違った結果になっただろう。
「ライ君は、子供達の護衛でしょ?普段何をしているの?」
「あー……。子供達の遊びの付き合いや、一緒に勉強を学んでいますが、中々……いえ、かなりハードです」
クルルフォーン家はエドワルドが初の当主で有る為、当然その使用人達に子育てと言うスキルは無い。
ヨルドは別格としか言い様が無いだけだ。
その為、エヴァンス家の使用人達が主体で子育てをしているのだが、勉強にしろ、遊びにしろ、飽きさせないよう色々と工夫をされているのだろう、大人が参加しても為になると言うか、寧ろ、子供の吸収力の凄さに驚かされてしまう程だ。
勿論個々に、得手不得手が有るので、それに依って吸収力も違うのだが、それでも教え方が上手い為、子供達は楽しそうに、日々、成長して行く。
「まぁ~、まぁ~」
「はいはぁ~い♪どうしたの?ルッグス」
ルッグスの呼び掛けに、マッドが答える。
「……マッドちゃんの事なんだ?」
「ええ。僕は他の子達からもライと呼ばれるので、『まぁ~』はマッドさんの事ですよ。ルッグスは僕に似て、マッドさんが大好きだから、ああやって、同じ空間に居ると、よく呼びますよ」
ライラはそう言って、マッドとルッグスに優しい眼差しを向けた。
7
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
もう無理して私に笑いかけなくてもいいですよ?
冬馬亮
恋愛
公爵令嬢のエリーゼは、遅れて出席した夜会で、婚約者のオズワルドがエリーゼへの不満を口にするのを偶然耳にする。
オズワルドを愛していたエリーゼはひどくショックを受けるが、悩んだ末に婚約解消を決意する。
だが、喜んで受け入れると思っていたオズワルドが、なぜか婚約解消を拒否。関係の再構築を提案する。
その後、プレゼント攻撃や突撃訪問の日々が始まるが、オズワルドは別の令嬢をそばに置くようになり・・・
「彼女は友人の妹で、なんとも思ってない。オレが好きなのはエリーゼだ」
「私みたいな女に無理して笑いかけるのも限界だって夜会で愚痴をこぼしてたじゃないですか。よかったですね、これでもう、無理して私に笑いかけなくてよくなりましたよ」
病弱な彼女は、外科医の先生に静かに愛されています 〜穏やかな執着に、逃げ場はない〜
来栖れいな
恋愛
――穏やかな微笑みの裏に、逃げられない愛があった。
望んでいたわけじゃない。
けれど、逃げられなかった。
生まれつき弱い心臓を抱える彼女に、政略結婚の話が持ち上がった。
親が決めた未来なんて、受け入れられるはずがない。
無表情な彼の穏やかさが、余計に腹立たしかった。
それでも――彼だけは違った。
優しさの奥に、私の知らない熱を隠していた。
形式だけのはずだった関係は、少しずつ形を変えていく。
これは束縛? それとも、本当の愛?
穏やかな外科医に包まれていく、静かで深い恋の物語。
※この物語はフィクションです。
登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。
愛された側妃と、愛されなかった正妃
編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。
夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。
連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。
正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。
※カクヨムさんにも掲載中
※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります
※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。
私が死んで満足ですか?
マチバリ
恋愛
王太子に婚約破棄を告げられた伯爵令嬢ロロナが死んだ。
ある者は面倒な婚約破棄の手続きをせずに済んだと安堵し、ある者はずっと欲しかった物が手に入ると喜んだ。
全てが上手くおさまると思っていた彼らだったが、ロロナの死が与えた影響はあまりに大きかった。
書籍化にともない本編を引き下げいたしました
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる