690 / 806
後日談
エヴァンス家の花嫁 1
しおりを挟む
今日はエヴァンス家の次期当主で有るジーンの結婚式が王都で開かれる日だ。
アシュリーは、美しく仕上がったアシュリーの為だけの花嫁衣装を身に纏い、その装いにもっとも似合うメイクを施され、前日からエヴァンス家に滞在していたセイル家の家族にこれ以上無いと思える程の賛辞を貰い、恥ずかしさと嬉しさでほんのりと顔を赤く染め上げ感謝とお礼を述べるアシュリーに、感極まった義父のデュランが、この先ジーンが嫌になったら、いつでも私の所へ来ても良いのだからなと不穏な事を口にした為、リリーやローズに冷ややかな眼差しで説教されていたが、アシュリー的には緊張を解す為に言ってくれたのだと思われたのだろう、そんな事には絶対にならないと思いますが、お義父様のお気持ちは有り難く受け取らせて頂きます、と笑顔で答えていた。
そうしてアシュリーは花嫁が乗る為の馬車に乗り込み、大聖堂の前で待っているだろうジーンの元へと向かう。
大聖堂に向かう馬車の中で、アシュリーは祖父や実母が亡くなって以降の出来事を思い返していた。
父親が唐突に冷たい態度を取るようになった事。義母と義妹がゴートに入った事。サラや使用人達の振る舞い。そして、幼馴染みで有り、婚約者だったマディソンの事。
そして、家出し、エヴァンス家に連れて来て貰った事。ジーンとの出会い。リラやアナスタシアとの交流。ゴート家の家族達との決別。新たな優しい家族と使用人達。
特にこの一年の間、家族や幼馴染みの婚約者の裏切りから、新たな婚約者とその周囲に囲まれた楽しくも幸せな生活の日々を思い返す。
家族や幼馴染みの婚約者が裏切った事は辛かったけれど、それが有ったからこそジーンと出会う事が出来、今の幸せが有るのだと思っている。
だからこそ、この幸せを失いたくは無い。
(どうかこの先も、ジーン様と共に同じ時を歩けますように……)
馬車の中、手を組み合わせてアシュリーは祈る。
そうしていると、今まで感じていた微かな馬車の震動が止まり、出入り口で有る扉に目を向けると、その扉が開く。
アシュリーは組み合わせていた手を解くと、緊張からか震えそうになる足を何とか動かし、扉へと近付く。
扉の外に有る義父のデュランの手に手を重ね、慎重に馬車を降り、顔を上げると、目の前には花婿となるジーンが居た。
その姿は人と思えない程の美しさで、彼の隣に立っても引き立て役にすらならないのではないかと思ってしまうのだが、そんなアシュリーに、ジーンは甘く蕩けるような笑みを見せてくれる。
「ああ、今日と言う日をどれ程待ちわびた事か。アーシュ。私の最愛にして唯一の花嫁。とても綺麗だ」
「そうだろうそうだろう!私の可愛い義娘なのだからな!」
結婚式の雰囲気を打ち壊しそうな大声が響いたが、アシュリーはその声に少しだけ緊張が解れ、ジーンとデュークが放つ冷気の中、楽しそうに口元を綻ばせたのだった。
アシュリーは、美しく仕上がったアシュリーの為だけの花嫁衣装を身に纏い、その装いにもっとも似合うメイクを施され、前日からエヴァンス家に滞在していたセイル家の家族にこれ以上無いと思える程の賛辞を貰い、恥ずかしさと嬉しさでほんのりと顔を赤く染め上げ感謝とお礼を述べるアシュリーに、感極まった義父のデュランが、この先ジーンが嫌になったら、いつでも私の所へ来ても良いのだからなと不穏な事を口にした為、リリーやローズに冷ややかな眼差しで説教されていたが、アシュリー的には緊張を解す為に言ってくれたのだと思われたのだろう、そんな事には絶対にならないと思いますが、お義父様のお気持ちは有り難く受け取らせて頂きます、と笑顔で答えていた。
そうしてアシュリーは花嫁が乗る為の馬車に乗り込み、大聖堂の前で待っているだろうジーンの元へと向かう。
大聖堂に向かう馬車の中で、アシュリーは祖父や実母が亡くなって以降の出来事を思い返していた。
父親が唐突に冷たい態度を取るようになった事。義母と義妹がゴートに入った事。サラや使用人達の振る舞い。そして、幼馴染みで有り、婚約者だったマディソンの事。
そして、家出し、エヴァンス家に連れて来て貰った事。ジーンとの出会い。リラやアナスタシアとの交流。ゴート家の家族達との決別。新たな優しい家族と使用人達。
特にこの一年の間、家族や幼馴染みの婚約者の裏切りから、新たな婚約者とその周囲に囲まれた楽しくも幸せな生活の日々を思い返す。
家族や幼馴染みの婚約者が裏切った事は辛かったけれど、それが有ったからこそジーンと出会う事が出来、今の幸せが有るのだと思っている。
だからこそ、この幸せを失いたくは無い。
(どうかこの先も、ジーン様と共に同じ時を歩けますように……)
馬車の中、手を組み合わせてアシュリーは祈る。
そうしていると、今まで感じていた微かな馬車の震動が止まり、出入り口で有る扉に目を向けると、その扉が開く。
アシュリーは組み合わせていた手を解くと、緊張からか震えそうになる足を何とか動かし、扉へと近付く。
扉の外に有る義父のデュランの手に手を重ね、慎重に馬車を降り、顔を上げると、目の前には花婿となるジーンが居た。
その姿は人と思えない程の美しさで、彼の隣に立っても引き立て役にすらならないのではないかと思ってしまうのだが、そんなアシュリーに、ジーンは甘く蕩けるような笑みを見せてくれる。
「ああ、今日と言う日をどれ程待ちわびた事か。アーシュ。私の最愛にして唯一の花嫁。とても綺麗だ」
「そうだろうそうだろう!私の可愛い義娘なのだからな!」
結婚式の雰囲気を打ち壊しそうな大声が響いたが、アシュリーはその声に少しだけ緊張が解れ、ジーンとデュークが放つ冷気の中、楽しそうに口元を綻ばせたのだった。
27
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
病弱な彼女は、外科医の先生に静かに愛されています 〜穏やかな執着に、逃げ場はない〜
来栖れいな
恋愛
――穏やかな微笑みの裏に、逃げられない愛があった。
望んでいたわけじゃない。
けれど、逃げられなかった。
生まれつき弱い心臓を抱える彼女に、政略結婚の話が持ち上がった。
親が決めた未来なんて、受け入れられるはずがない。
無表情な彼の穏やかさが、余計に腹立たしかった。
それでも――彼だけは違った。
優しさの奥に、私の知らない熱を隠していた。
形式だけのはずだった関係は、少しずつ形を変えていく。
これは束縛? それとも、本当の愛?
穏やかな外科医に包まれていく、静かで深い恋の物語。
※この物語はフィクションです。
登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。
義兄に甘えまくっていたらいつの間にか執着されまくっていた話
よしゆき
恋愛
乙女ゲームのヒロインに意地悪をする攻略対象者のユリウスの義妹、マリナに転生した。大好きな推しであるユリウスと自分が結ばれることはない。ならば義妹として目一杯甘えまくって楽しもうと考えたのだが、気づけばユリウスにめちゃくちゃ執着されていた話。
「義兄に嫌われようとした行動が裏目に出て逆に執着されることになった話」のifストーリーですが繋がりはなにもありません。
好きな人に『その気持ちが迷惑だ』と言われたので、姿を消します【完結済み】
皇 翼
恋愛
「正直、貴女のその気持ちは迷惑なのですよ……この場だから言いますが、既に想い人が居るんです。諦めて頂けませんか?」
「っ――――!!」
「賢い貴女の事だ。地位も身分も財力も何もかもが貴女にとっては高嶺の花だと元々分かっていたのでしょう?そんな感情を持っているだけ時間が無駄だと思いませんか?」
クロエの気持ちなどお構いなしに、言葉は続けられる。既に想い人がいる。気持ちが迷惑。諦めろ。時間の無駄。彼は止まらず話し続ける。彼が口を開く度に、まるで弾丸のように心を抉っていった。
******
・執筆時間空けてしまった間に途中過程が気に食わなくなったので、設定などを少し変えて改稿しています。
兄様達の愛が止まりません!
桜
恋愛
五歳の時、私と兄は父の兄である叔父に助けられた。
そう、私達の両親がニ歳の時事故で亡くなった途端、親類に屋敷を乗っ取られて、離れに閉じ込められた。
屋敷に勤めてくれていた者達はほぼ全員解雇され、一部残された者が密かに私達を庇ってくれていたのだ。
やがて、領内や屋敷周辺に魔物や魔獣被害が出だし、私と兄、そして唯一の保護をしてくれた侍女のみとなり、死の危険性があると心配した者が叔父に助けを求めてくれた。
無事に保護された私達は、叔父が全力で守るからと連れ出し、養子にしてくれたのだ。
叔父の家には二人の兄がいた。
そこで、私は思い出したんだ。双子の兄が時折話していた不思議な話と、何故か自分に映像に流れて来た不思議な世界を、そして、私は…
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
バッドエンド予定の悪役令嬢が溺愛ルートを選んでみたら、お兄様に愛されすぎて脇役から主役になりました
美咲アリス
恋愛
目が覚めたら公爵令嬢だった!?貴族に生まれ変わったのはいいけれど、美形兄に殺されるバッドエンドの悪役令嬢なんて絶対困る!!死にたくないなら冷酷非道な兄のヴィクトルと仲良くしなきゃいけないのにヴィクトルは氷のように冷たい男で⋯⋯。「どうしたらいいの?」果たして私の運命は?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる