氷結の毒華は王弟公爵に囲われる

後日談

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　物の見事に対抗心を燃やした政務官達だったが、ジェフが王宮にいる時間は、レオンの授業の時間帯のみと知り、時間も経験も少ない者に負ける訳が無いと、余裕綽々で仕事を進め、帰りに仕事の報告をアレクシスにすると、アレクシスからジェフのした仕事量を見せられ、固まった。

　何せ、ジェフは政務官達のした仕事の二倍は軽く上回っている量を熟していたからだ。


「嘘だ！信じられない!!あんな短時間でどうやって?!」


　政務官達が喚き出したのを見ながら、アレクシスは、ジェフとエヴァンス家に関する、正確な情報を流す。

「ジェフは学院でも頗る優秀で、常に学院のトップだったぞ。それにエヴァンス領は実力重視で、領都には学校が複数有り、専門的な学校も幾つか有る。その上、役所関係の公的機関は優秀ならば平民でも雇う為、平民だろうと王都よりも優秀な人材がゴロゴロいるし、身分での優遇は一切無い。賃金も割高な為、競争率は高く、ジェフは己の実力で政務官の地位を勝ち取り、更なる難関であり、最高峰とされるエヴァンス家内の政務官として、領内各地から集まる書類の精査をしている凄腕の政務官だ。本来、エヴァンス領から出る事は無かった筈だが、エドワルドとエヴァンス家令嬢の婚約により、一時的に王都に来ていた所を、昔の誼よしみで私が無理を言って、レオンの教育係り兼侍従を頼んだのだ。そもそも、エヴァンス領の場合、職場で頂点に上り詰めたとしても、そこで天狗になり、踏ん反り返っていたら、次の者に蹴落とされる場所であり、上だからと気を抜いていたら即座に引き摺り降ろされるような場所だぞ」


　そして、嫌味を籠めてこうも言う。


「上になれば踏ん反り返るだけで、仕事を碌にしない連中の多い王宮なんて、真っ平だと言って、卒業後の進路をエヴァンス領に決めていたジェフが、短時間だろうと、普段から手を抜くような相手に負ける訳が無い。ただし、売られた喧嘩を買ったのだから、ジェフに勝てるよう、確りと働いて貰う。でなければ、首にした上で、高が一地方の政務官に、王都の政務官が手足も出せずに恐れをなして逃げ帰ったと、周囲に言い触らしてやろう」


　アレクシスの冷ややかな声と眼差しに、敵に回してはいけない相手を敵に回してしまった事に今更気付くが、後の祭りだったのは言うまでも無い。


「無能は邪魔になるとジェフはよく言うが、確かにその通りだと思う事が増えたな。取り敢えず、エドワルドが戻って来た時に、いつものように山積みの仕事が残っていた場合、各々辞表を出して貰うから、そのつもりで居ろ」


　そんなアレクシスの宣言に、王宮の政務官達は、今までに無い程真剣に、必死で仕事に取り組んだのだった。