724 / 805
後日談
8
しおりを挟む
ジェフが手伝いとして、執務室に出入りし出すと、レオンの居住区と関わり合いの無い者達までとの接触が増える事になる。
それは、政務官の下っ端だったり、行儀見習いとして、王宮に働きに来ている筈の貴族令嬢だったりだ。
役職付きの政務官だろう男が、下っ端政務官に怒鳴り散らしていた所を、偶然ジェフは遭遇した。
あまりにも大声で怒鳴り散らしている為、内容は丸聞こえ。
ジェフは扉を叩いて入室した。
「廊下にまで声が聞こえているので、忠告して差し上げます。自身の仕事を他人に丸投げして置きながら、よく偉そうに言えますね?貴方御自身で、仕事の処理をすれば良いだけの話でしょう。それなのに、こんな物に目を通させるな?最終確認すらしない責任者は、責任者の資格すら有りませんよ。今直ぐ辞めたらどうですか?税金の無駄です。何なら、アレクシス陛下には、私からキチンと話して置きますが」
ジェフは冷ややかな眼差しで、青ざめる上官だろう年配の政務官を一瞥し、次に下っ端だろう政務官に声を掛ける。
「そこの貴方、手元の書類を私に」
「はっ、はい!」
ジェフはその場で部厚い資料を一読しながら、間違いの指摘や削る場所、補足が必要な場所等の的確な指示を出す。
「まっ、待って下さい!メモを取らせて下さい!」
「いいでしょう。ここだと雑音が入りそうですから、付いて来なさい」
「はっ、はいっ!」
ポカンと馬鹿面を晒してる上官を無視する形で、部屋を出ようとするジェフ。
「ままままっ、待てっ!!」
アレクシスに告げ口されては困るとばかりに、我に返った上官が、慌ててジェフに声を掛けるが、振り返るジェフの視線は氷点下と言っても良い。
「仕事を任せたなら、その責任は仕事をした者にも有りますが、それを任せた者にだって責任は有るし、任せたからと確認もせずに居るなら、その者に何の意味が有ると言うのです。人件費の無駄ですよ。そんな穀潰し、飼うだけ無駄です。平民の使える人間を雇う方が、幾らかマシですよ」
ジェフの辛辣な正論に、上司の政務官は絶句し、下っ端政務官は思わず泣きそうになった。
(仕事が速いし、頼りになる!こっ……こんな上司が欲しかったーっっ!!一生付いて行きたいです!)
その政務官に取って、今までの苦労が報われた瞬間だったが、後にジェフが正規の政務官では無い事を知り、ガックリと肩を落とす事になるのはそう遠くない未来の話。
それでも、この時の出会いが無駄になる事は無く、目指すべき理想の政務官の姿として彼の心の中に強く残ったのだった。
それは、政務官の下っ端だったり、行儀見習いとして、王宮に働きに来ている筈の貴族令嬢だったりだ。
役職付きの政務官だろう男が、下っ端政務官に怒鳴り散らしていた所を、偶然ジェフは遭遇した。
あまりにも大声で怒鳴り散らしている為、内容は丸聞こえ。
ジェフは扉を叩いて入室した。
「廊下にまで声が聞こえているので、忠告して差し上げます。自身の仕事を他人に丸投げして置きながら、よく偉そうに言えますね?貴方御自身で、仕事の処理をすれば良いだけの話でしょう。それなのに、こんな物に目を通させるな?最終確認すらしない責任者は、責任者の資格すら有りませんよ。今直ぐ辞めたらどうですか?税金の無駄です。何なら、アレクシス陛下には、私からキチンと話して置きますが」
ジェフは冷ややかな眼差しで、青ざめる上官だろう年配の政務官を一瞥し、次に下っ端だろう政務官に声を掛ける。
「そこの貴方、手元の書類を私に」
「はっ、はい!」
ジェフはその場で部厚い資料を一読しながら、間違いの指摘や削る場所、補足が必要な場所等の的確な指示を出す。
「まっ、待って下さい!メモを取らせて下さい!」
「いいでしょう。ここだと雑音が入りそうですから、付いて来なさい」
「はっ、はいっ!」
ポカンと馬鹿面を晒してる上官を無視する形で、部屋を出ようとするジェフ。
「ままままっ、待てっ!!」
アレクシスに告げ口されては困るとばかりに、我に返った上官が、慌ててジェフに声を掛けるが、振り返るジェフの視線は氷点下と言っても良い。
「仕事を任せたなら、その責任は仕事をした者にも有りますが、それを任せた者にだって責任は有るし、任せたからと確認もせずに居るなら、その者に何の意味が有ると言うのです。人件費の無駄ですよ。そんな穀潰し、飼うだけ無駄です。平民の使える人間を雇う方が、幾らかマシですよ」
ジェフの辛辣な正論に、上司の政務官は絶句し、下っ端政務官は思わず泣きそうになった。
(仕事が速いし、頼りになる!こっ……こんな上司が欲しかったーっっ!!一生付いて行きたいです!)
その政務官に取って、今までの苦労が報われた瞬間だったが、後にジェフが正規の政務官では無い事を知り、ガックリと肩を落とす事になるのはそう遠くない未来の話。
それでも、この時の出会いが無駄になる事は無く、目指すべき理想の政務官の姿として彼の心の中に強く残ったのだった。
22
あなたにおすすめの小説
もう無理して私に笑いかけなくてもいいですよ?
冬馬亮
恋愛
公爵令嬢のエリーゼは、遅れて出席した夜会で、婚約者のオズワルドがエリーゼへの不満を口にするのを偶然耳にする。
オズワルドを愛していたエリーゼはひどくショックを受けるが、悩んだ末に婚約解消を決意する。
だが、喜んで受け入れると思っていたオズワルドが、なぜか婚約解消を拒否。関係の再構築を提案する。
その後、プレゼント攻撃や突撃訪問の日々が始まるが、オズワルドは別の令嬢をそばに置くようになり・・・
「彼女は友人の妹で、なんとも思ってない。オレが好きなのはエリーゼだ」
「私みたいな女に無理して笑いかけるのも限界だって夜会で愚痴をこぼしてたじゃないですか。よかったですね、これでもう、無理して私に笑いかけなくてよくなりましたよ」
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
病弱な彼女は、外科医の先生に静かに愛されています 〜穏やかな執着に、逃げ場はない〜
来栖れいな
恋愛
――穏やかな微笑みの裏に、逃げられない愛があった。
望んでいたわけじゃない。
けれど、逃げられなかった。
生まれつき弱い心臓を抱える彼女に、政略結婚の話が持ち上がった。
親が決めた未来なんて、受け入れられるはずがない。
無表情な彼の穏やかさが、余計に腹立たしかった。
それでも――彼だけは違った。
優しさの奥に、私の知らない熱を隠していた。
形式だけのはずだった関係は、少しずつ形を変えていく。
これは束縛? それとも、本当の愛?
穏やかな外科医に包まれていく、静かで深い恋の物語。
※この物語はフィクションです。
登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。
愛された側妃と、愛されなかった正妃
編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。
夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。
連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。
正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。
※カクヨムさんにも掲載中
※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります
※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。
私が死んで満足ですか?
マチバリ
恋愛
王太子に婚約破棄を告げられた伯爵令嬢ロロナが死んだ。
ある者は面倒な婚約破棄の手続きをせずに済んだと安堵し、ある者はずっと欲しかった物が手に入ると喜んだ。
全てが上手くおさまると思っていた彼らだったが、ロロナの死が与えた影響はあまりに大きかった。
書籍化にともない本編を引き下げいたしました
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる