氷結の毒華は王弟公爵に囲われる

カザハナ

文字の大きさ
741 / 806
後日談

8

しおりを挟む
 アシュリーはタオルを手に持ったまま、ジーンに腰を支えられ、共に邸内へと案内される。

 父親が雇っていた使用人達も居るが、客人の視界には入らないようにする事、緊急性、必要性が無ければ絶対に近付かない事を記入した誓約書をジョシュアが作り、サインさせている。

 何せ、あの父娘の言いなりで、アシュリーに対し、殆どの者達が蔑む態度を取っていたのだから。

 そうしなければ、職を失ってしまうのだから、ある意味仕方の無い事では有るが、だからと言って、平民が貴族相手にした事なのだから、そう簡単に赦される事では無い。

 彼等が反省し、アシュリーに心からの謝罪を言いたいと思った所で、所詮それは、本人の自己満足だし、アシュリーを不快にさせたなら、今度はエヴァンス家の者達が黙ってはいないだろう。


「呉々も、大事な客人に対して無礼を働かないで下さいね?貴方方がしてきた事は、相手が顔見知りだから、優しいから、で赦される範疇を越えています。何よりアシュリー様の伴侶は、愛しの奥方に貴方方が近付く事を赦しません。ネイル様が、自身やレイニー様に擦り寄る者達をどうなさったか、勿論忘れてはいませんよね?」


 ジョシュアはアシュリーの父親が雇っていた使用人達に、絶対零度の眼差しを向けて、アシュリーやエヴァンス家の者達に近付かないよう、口でも忠告していた。

 ここまでやっても近付くようなら、それは本人の自己責任だ。

 これまでは、他の貴族を相手にする機会が殆ど無かっただろうが、ネイルの場合はそうもいかない。

 王都では植物学者として有名で、あちこちから依頼が有ったりしたが、腰を据えるとなると、当然訪ねて来る貴族も多くなるだろう。

 特にこの近辺は、同じ境遇の領地が多い為、同じ悩みを抱える領主も多い筈だ。

 既にこのグリマード領で、植物が徐々に育ちつつある事を知っている隣の領主達から、嘆願に近い依頼が来ている程だ。

 勿論、王都の高位貴族にも伝が有り、ジーンとの縁が有る子爵子息のレッグスに、探りを入れて来る者達も居て、そこからネイルが王都では有名な植物学者で有り、とある侯爵の子息で有る事も拡散されている。

 今はまだ試験段階でも有り、他領を見回る時間が取れないと断りを入れているが、それも時間の問題だ。

 先ずは親しい友人ジーン達を招待し、使用人として使えるかどうかの、最終チェックを確認して貰う必要が有る。

 だからこそ、今回はステラだけで無く、サラの侍女として潜入していたサリーにも来て貰っている。

 ステラやサリーがエヴァンス家の使用人だったと知らなかった面識の有る使用人達は、自分達の行動が見張られているだなんて思ってもいない事だろう。

 そんな裏事情を知らないのは、当の本人達とアシュリーぐらいだ。

(他家の使用人達とのいざこざはご法度。それが上位なら尚更だ。さて、この試練、一体何人の使用人達がこの邸に残れるでしょうねぇ)

 ジョシュアはエルンに目配せし、互いにこっそりと頷き合ったのだった。
しおりを挟む
感想 2,443

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

病弱な彼女は、外科医の先生に静かに愛されています 〜穏やかな執着に、逃げ場はない〜

来栖れいな
恋愛
――穏やかな微笑みの裏に、逃げられない愛があった。 望んでいたわけじゃない。 けれど、逃げられなかった。 生まれつき弱い心臓を抱える彼女に、政略結婚の話が持ち上がった。 親が決めた未来なんて、受け入れられるはずがない。 無表情な彼の穏やかさが、余計に腹立たしかった。 それでも――彼だけは違った。 優しさの奥に、私の知らない熱を隠していた。 形式だけのはずだった関係は、少しずつ形を変えていく。 これは束縛? それとも、本当の愛? 穏やかな外科医に包まれていく、静かで深い恋の物語。 ※この物語はフィクションです。 登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。

義兄に甘えまくっていたらいつの間にか執着されまくっていた話

よしゆき
恋愛
乙女ゲームのヒロインに意地悪をする攻略対象者のユリウスの義妹、マリナに転生した。大好きな推しであるユリウスと自分が結ばれることはない。ならば義妹として目一杯甘えまくって楽しもうと考えたのだが、気づけばユリウスにめちゃくちゃ執着されていた話。 「義兄に嫌われようとした行動が裏目に出て逆に執着されることになった話」のifストーリーですが繋がりはなにもありません。

好きな人に『その気持ちが迷惑だ』と言われたので、姿を消します【完結済み】

皇 翼
恋愛
「正直、貴女のその気持ちは迷惑なのですよ……この場だから言いますが、既に想い人が居るんです。諦めて頂けませんか?」 「っ――――!!」 「賢い貴女の事だ。地位も身分も財力も何もかもが貴女にとっては高嶺の花だと元々分かっていたのでしょう?そんな感情を持っているだけ時間が無駄だと思いませんか?」 クロエの気持ちなどお構いなしに、言葉は続けられる。既に想い人がいる。気持ちが迷惑。諦めろ。時間の無駄。彼は止まらず話し続ける。彼が口を開く度に、まるで弾丸のように心を抉っていった。 ****** ・執筆時間空けてしまった間に途中過程が気に食わなくなったので、設定などを少し変えて改稿しています。

兄様達の愛が止まりません!

恋愛
五歳の時、私と兄は父の兄である叔父に助けられた。 そう、私達の両親がニ歳の時事故で亡くなった途端、親類に屋敷を乗っ取られて、離れに閉じ込められた。 屋敷に勤めてくれていた者達はほぼ全員解雇され、一部残された者が密かに私達を庇ってくれていたのだ。 やがて、領内や屋敷周辺に魔物や魔獣被害が出だし、私と兄、そして唯一の保護をしてくれた侍女のみとなり、死の危険性があると心配した者が叔父に助けを求めてくれた。 無事に保護された私達は、叔父が全力で守るからと連れ出し、養子にしてくれたのだ。 叔父の家には二人の兄がいた。 そこで、私は思い出したんだ。双子の兄が時折話していた不思議な話と、何故か自分に映像に流れて来た不思議な世界を、そして、私は…

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

バッドエンド予定の悪役令嬢が溺愛ルートを選んでみたら、お兄様に愛されすぎて脇役から主役になりました

美咲アリス
恋愛
目が覚めたら公爵令嬢だった!?貴族に生まれ変わったのはいいけれど、美形兄に殺されるバッドエンドの悪役令嬢なんて絶対困る!!死にたくないなら冷酷非道な兄のヴィクトルと仲良くしなきゃいけないのにヴィクトルは氷のように冷たい男で⋯⋯。「どうしたらいいの?」果たして私の運命は?

処理中です...