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後日談
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ジーンの纏う空気に気圧されたヘンリーは、沈黙を貫く。
暫くすると、サロンの扉がノックされ、執事がヘンリーの母親を連れて入って来る。
ヘンリーの母親は実家が裕福な侯爵家の出で、男兄弟は居たが、蝶よ花よと育てられた一人娘な所為か、溺愛されて育った所為か、かなり我が儘で、何か有ると未だに実家の金と権力で解決させるような、お姫様気取りの令嬢気分が抜け切らない女性だった。
そして、貴族の力関係をきちんと把握している訳でも無い。
きっと、相手は高位貴族と言えど、まだ爵位を継いでないし、元侯爵令嬢と侯爵子息、伯爵と伯爵で立場は互角とでも思っているのだろう。
勿論ジーンは王宮の政務官の中でも高い役職に就いているし、いつでも家名を継ぐ事が出来る状態な上、家格も同じ侯爵家と言えど、片や国から独立出来る程の資金を持つ大金持ち、片や地方の裕福な大金持ち程度と、とんでもない差が有る為、勘違いも甚だしいのだが、知らないからこそ侮る事が出来るのだ。
「お初にお目に掛かりますわ、エヴァンス侯爵子息様。そして、お久し振りですわね、アシュリーさん」
高圧的な態度で話し掛けてくる前伯爵夫人。その態度はまるでお姫様で、今も伯爵夫人の地位に居座るかのような振る舞いだ。
そんな彼女に、ジーンは冷めた眼差しと言葉を向ける。
「さすがは教養の行き届かない辺境の地に住む夫人ですね。貴族の礼儀やマナーを忘れてしまうとは。ああ、それだと他の貴族女性全員が当て嵌まってしまうな。アーシュやヘンリー殿の奥方にそのような振る舞いは無かったのだから、これは個人の教養に依る物か。元から貴族の礼儀やマナーを身に付ける気が無い能無しなのだろう。ここで生まれ育ったアーシュには、王都でだろうと通用する、きちんとした礼儀やマナーが身に付いているのだから」
「なっ?!」
母親の鬼の形相に、ヘンリーが母親を諌めようと口を開くが、ジーンが威圧でヘンリーを黙らせ、嫌味な言葉を口にする。
「貴族女性なら、初対面の貴族の男を相手にする時は、喩え相手の貴族位が低かろうと、先に声を掛けてはならないと言うのが常識でしょう?私にしろネイルにしろ、貴女に声を掛けてはいないし、喋っても良いと許可を出した覚えも無い。それに、誰の許可を得て私の妻の名を呼んでいる?面識が有ろうとも、血縁でも無ければ親しくも無い、縁の切れた相手に、気安く私の妻の名を呼ばないで頂きたい」
ジーンの絶対零度の猛吹雪を浴び、夫人は思わずガタガタと震えたが、ジーンの、縁の切れたと言う言葉に、ここへ乗り込んで来た本来の目的を思い出す。
(相手は、まだ爵位を継いでない若造よ!お父様は面倒事を嫌ってか、この小娘には関わるなって言っていたけれど、お父様にとっては可愛い孫の事だし、どうせ最後には、仕方が無いとばかりにわたくしの味方をしてくれる筈だわ!!)
「そんな些細な事、今はどうでもいいわ!わたくしの用が有るのは貴方では無く、アシュリーさんよ!!無関係な貴方は引っ込んでいなさいな!アシュリーさん、あの子は騙されただけよ!あの子には何の罪も無いわ!元はと言えば、貴女のお家の方に問題が有るんじゃない!!だからあの子を返して!貴族に戻れるように掛け合いなさい!ウォール家の男共は、役に立ちそうも無いんだから、せめて貴女が助けなさいな!」
サロンの体感温度が、こちらで言う『真冬の北極圏』並みに下がったのは、言うまでもない。
暫くすると、サロンの扉がノックされ、執事がヘンリーの母親を連れて入って来る。
ヘンリーの母親は実家が裕福な侯爵家の出で、男兄弟は居たが、蝶よ花よと育てられた一人娘な所為か、溺愛されて育った所為か、かなり我が儘で、何か有ると未だに実家の金と権力で解決させるような、お姫様気取りの令嬢気分が抜け切らない女性だった。
そして、貴族の力関係をきちんと把握している訳でも無い。
きっと、相手は高位貴族と言えど、まだ爵位を継いでないし、元侯爵令嬢と侯爵子息、伯爵と伯爵で立場は互角とでも思っているのだろう。
勿論ジーンは王宮の政務官の中でも高い役職に就いているし、いつでも家名を継ぐ事が出来る状態な上、家格も同じ侯爵家と言えど、片や国から独立出来る程の資金を持つ大金持ち、片や地方の裕福な大金持ち程度と、とんでもない差が有る為、勘違いも甚だしいのだが、知らないからこそ侮る事が出来るのだ。
「お初にお目に掛かりますわ、エヴァンス侯爵子息様。そして、お久し振りですわね、アシュリーさん」
高圧的な態度で話し掛けてくる前伯爵夫人。その態度はまるでお姫様で、今も伯爵夫人の地位に居座るかのような振る舞いだ。
そんな彼女に、ジーンは冷めた眼差しと言葉を向ける。
「さすがは教養の行き届かない辺境の地に住む夫人ですね。貴族の礼儀やマナーを忘れてしまうとは。ああ、それだと他の貴族女性全員が当て嵌まってしまうな。アーシュやヘンリー殿の奥方にそのような振る舞いは無かったのだから、これは個人の教養に依る物か。元から貴族の礼儀やマナーを身に付ける気が無い能無しなのだろう。ここで生まれ育ったアーシュには、王都でだろうと通用する、きちんとした礼儀やマナーが身に付いているのだから」
「なっ?!」
母親の鬼の形相に、ヘンリーが母親を諌めようと口を開くが、ジーンが威圧でヘンリーを黙らせ、嫌味な言葉を口にする。
「貴族女性なら、初対面の貴族の男を相手にする時は、喩え相手の貴族位が低かろうと、先に声を掛けてはならないと言うのが常識でしょう?私にしろネイルにしろ、貴女に声を掛けてはいないし、喋っても良いと許可を出した覚えも無い。それに、誰の許可を得て私の妻の名を呼んでいる?面識が有ろうとも、血縁でも無ければ親しくも無い、縁の切れた相手に、気安く私の妻の名を呼ばないで頂きたい」
ジーンの絶対零度の猛吹雪を浴び、夫人は思わずガタガタと震えたが、ジーンの、縁の切れたと言う言葉に、ここへ乗り込んで来た本来の目的を思い出す。
(相手は、まだ爵位を継いでない若造よ!お父様は面倒事を嫌ってか、この小娘には関わるなって言っていたけれど、お父様にとっては可愛い孫の事だし、どうせ最後には、仕方が無いとばかりにわたくしの味方をしてくれる筈だわ!!)
「そんな些細な事、今はどうでもいいわ!わたくしの用が有るのは貴方では無く、アシュリーさんよ!!無関係な貴方は引っ込んでいなさいな!アシュリーさん、あの子は騙されただけよ!あの子には何の罪も無いわ!元はと言えば、貴女のお家の方に問題が有るんじゃない!!だからあの子を返して!貴族に戻れるように掛け合いなさい!ウォール家の男共は、役に立ちそうも無いんだから、せめて貴女が助けなさいな!」
サロンの体感温度が、こちらで言う『真冬の北極圏』並みに下がったのは、言うまでもない。
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