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後日談
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ショーン国滞在中、ジルギリスは世話役と言う名の人質で有るエリオールに、今は無理でも、将来必ずこの国から解放する事を約束し、その為の確認として、今まで学んだ教育と知識の習得度合い、実践等も確認する。
その結果、この国では然程重要視されていない他の領域の共通語を独学で、簡単な日常会話なら一通り喋れる事も確認出来た。
エリオール曰く、王にならなければ、どこの領域に嫁がされるのか分からないし、言葉が通じれば待遇の改善や、他領域への亡命も逃走も可能だし、平民になっても生きられるから、だそうだ。
当然ジルギリスの中で、エリオールの評価は上がる一方だし、将来大国の王妃になる事も不可能では無い。
ジルギリスは護衛も出来る教育係りを派遣する事を約束し、到着するまでの間は、自身の同行者から選び、エリオールの事を頼む。
そして滞在期間を終えたジルギリスは、ショーン国国王に挨拶として会い、国王とエリオールの実兄だけを残して人払いを頼み、エヴァンス家が独自で調査した資料を手渡す。
「この資料は嘘偽り無く、ディーランが独自で調べ上げた物です。資料の中には、そちらの王位継承者の事も詳しく載っているので、彼に事実かどうかの確認も取れるでしょう。そもそもそちらの国の方々と違い、我々が嘘偽りを申告するメリットは有りませんので。ただ、近い将来、エリオール姫を貰い受けたいとは考えています。彼女なら、我が国でも他の大国でも妃になれると思えたからです。ただし、この先彼女に対するショーン国の関与はしないで頂きたい。その理由は先王がご存知の筈です。何せ、ディーランに平気で喧嘩を吹っ掛けて来たのですから」
ジルギリスは穏やかな微笑みを浮かべているが、その内容は全然穏やかでは無い。
受け取った資料を確認すると、エリオールは実兄と同等以上の能力を持ち、大国とすら渡り合えるとの文面も有る。勿論その理由も。
そして、全ての王位継承者の個々の評価と、問題行動の有る無し、有る場合はその詳細を、まるで見て来たかのような詳しさで書かれている。
エリオールの実兄は、自身の資料を読んで、言い知れぬ恐怖を抱いた。
それはそうだろう。自国の者達が調べ上げたなら未だしも、大国とは言え他国の使者で、しかも殆ど交流の無い国なのだから。
そして、自身の手の者から、誰かが嗅ぎ回っていたと言う報告も無い。
国王は大国を敵に回す気かと叱責していたが、ディーランとはかなり距離が開いており、取り引きすらしていない。それなのに、向こうの言いなりになってる時点で、何か有るのだろうかと内心訝しんでいたのだが、これならば国王が言いなりになるのも無理はない。
エリオールの実兄は、国王と同様、ディーランだけは絶対に敵対しなくないと、心の底から思ったのだった。
その結果、この国では然程重要視されていない他の領域の共通語を独学で、簡単な日常会話なら一通り喋れる事も確認出来た。
エリオール曰く、王にならなければ、どこの領域に嫁がされるのか分からないし、言葉が通じれば待遇の改善や、他領域への亡命も逃走も可能だし、平民になっても生きられるから、だそうだ。
当然ジルギリスの中で、エリオールの評価は上がる一方だし、将来大国の王妃になる事も不可能では無い。
ジルギリスは護衛も出来る教育係りを派遣する事を約束し、到着するまでの間は、自身の同行者から選び、エリオールの事を頼む。
そして滞在期間を終えたジルギリスは、ショーン国国王に挨拶として会い、国王とエリオールの実兄だけを残して人払いを頼み、エヴァンス家が独自で調査した資料を手渡す。
「この資料は嘘偽り無く、ディーランが独自で調べ上げた物です。資料の中には、そちらの王位継承者の事も詳しく載っているので、彼に事実かどうかの確認も取れるでしょう。そもそもそちらの国の方々と違い、我々が嘘偽りを申告するメリットは有りませんので。ただ、近い将来、エリオール姫を貰い受けたいとは考えています。彼女なら、我が国でも他の大国でも妃になれると思えたからです。ただし、この先彼女に対するショーン国の関与はしないで頂きたい。その理由は先王がご存知の筈です。何せ、ディーランに平気で喧嘩を吹っ掛けて来たのですから」
ジルギリスは穏やかな微笑みを浮かべているが、その内容は全然穏やかでは無い。
受け取った資料を確認すると、エリオールは実兄と同等以上の能力を持ち、大国とすら渡り合えるとの文面も有る。勿論その理由も。
そして、全ての王位継承者の個々の評価と、問題行動の有る無し、有る場合はその詳細を、まるで見て来たかのような詳しさで書かれている。
エリオールの実兄は、自身の資料を読んで、言い知れぬ恐怖を抱いた。
それはそうだろう。自国の者達が調べ上げたなら未だしも、大国とは言え他国の使者で、しかも殆ど交流の無い国なのだから。
そして、自身の手の者から、誰かが嗅ぎ回っていたと言う報告も無い。
国王は大国を敵に回す気かと叱責していたが、ディーランとはかなり距離が開いており、取り引きすらしていない。それなのに、向こうの言いなりになってる時点で、何か有るのだろうかと内心訝しんでいたのだが、これならば国王が言いなりになるのも無理はない。
エリオールの実兄は、国王と同様、ディーランだけは絶対に敵対しなくないと、心の底から思ったのだった。
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