出会いと別れと復讐と

カザハナ

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「お前はこの店を潰す気か?」

「あの、店長、違います!私はただ……」


 目を彷徨わせ、言葉に詰まる女。


「ただ、何だ?」


 店長と呼ばれた男は、低い声で問い返す。

 自慢の料理を食べられない物へと変えた女に、腹を立てるのは当然だ。


「いえ、あの……」

「八つ当たりと言う名の嫌がらせかしら?」


 女が喋りそうにないので、カルラが言う。


「……嫌がらせ?」

「あたしの連れ、可愛い美少女が一人と、美形のお兄さんが三人いるの。被害にあったのはあたしとその女の子だけよ。お兄さん達は美味しそうに食べてたもの。何?彼等と思うようにお近付きになれなかったからとか?彼等に構われて羨ましかったとか?ねぇ、馬鹿じゃない?そんな下らない事に彼女を巻き込まないでくれる?はっきり言って迷惑よ」

「くっ、下らなくなんか……」

「ないとでも?あなたが誰を想おうがあなたの勝手だけど、彼等だって彼等の勝手よ。大切な妹を構って何が悪いの?何で興味無い相手に愛想を振り撒かなきゃいけない訳?自分が構って貰えないからって、子供の彼女に当たるのはお門違いよ。ましてや自分の勤め先に迷惑掛けるなんて、何考えてんの?」

「っっ~~!!」


 顔を赤く染め、唇を噛み締めているが、ここは小さな街や村ではない。旅人が多く来るような大きな街だ。しかも評判の店で、店内の客も多く満席に近い。


「……状況は把握した。お前はクビだ、給金は払うがもう二度と来るな。店に対する営業妨害だ。お嬢さんは少し待ってて下さい。直ぐに代わりの物を用意します」

「そんな!」

「分かりました、待ってます。当然でしょ?これが毒で、気付かないような物なら死んでたのよ?店側が出したとなれば、店長である彼が責任を問われるわ。そもそもこれが旅人達の間で噂になればどうなると思ってるの?尾ひれが付いて、あの店は気に入らない客には毒を出すって事になり兼ねないわ」


 彼女は今後、飲食店で働く事は出来ないだろう。身体に害はないとは言え、それがいつ害になる物と替えられるか分からないからだ。当然店長は役人に訴える気でいる。カルラは大事にならないように配慮したが、料理を持って行った事で見ていた者もそこそこいるだろうし、店側が訴えるのは当然だ。彼女の考えなしな行動で、店の存続が危ぶまれるのだから。


「……余計な事を!」


 女がカルラの前で大きく手を振りかざした。
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