出会いと別れと復讐と

カザハナ

文字の大きさ
83 / 116

80

しおりを挟む
 翌日、買い物をして街を出る。カルラとしては、用の済んだ街に留まる気はない。

 場所も場所だし、長居すれば研究所関連の能力者と鉢合わせする可能性も高くなるから尚更だ。

 そして数日掛けて別の街に辿り着く。

 この街の中央には大浴場があり、湯治として知られる街だ。多くの旅人が訪れる場所であり、時折身分の高い人物も訪れるらしい。

 とは言え、身分が高い人物は、街の中央にある大浴場ではなく、別の建物に案内される為、一般人と鉢合わせる事も無い。

 街の警備体制は、身分の高い人物が居れば話は別だが、居ない時では他の街と比べると普通よりも上、と言える程度だ。

 極力目立つ事をしなければ、目を付けられる事はないだろう。

 (こいつ等と一緒にいる時点で目立つんだけど、それは仕方ないって諦めましょう……)

 宿屋に向かう途中、街の者に話し掛けられる。


「この街は初めてかい?どこの宿も、部屋や宿の中に風呂は無いから、各自で街の中央にある大浴場に行くんだ。金は少し取られるが、疲れも吹っ飛ぶからオススメだぞ!」

「有難う、おじさん。後で行ってみるわね。ティファ、大きなお風呂だって。楽しみね、一緒に入りましょう」


 カルラの言葉に頷こうとした時、エンヤが割り込む。


「ティファは俺達と入る。お前は一人で入って来い」


 その言葉にカルラは自分の耳を疑う。が、聞き間違いでは無さそうな上、エンヤは本気らしい。


「本気で言ってるの?」


 念の為、カルラはエンヤに聞き返すと、エンヤは堂々とカルラに言い切った。


「ティファは一人では何も出来ないからな、俺が面倒を見てるんだ。お前の手を借りる気はない」


 (……一人では、何も出来ない?へぇ~、そう。そう来たの……)

 カルラから見たティファは、何も出来ないとは思えない。寧ろ、何もさせて貰えなかったのではないかと思える事ばかりだ。

 カルラの中で、沸々と怒りが湧き上がる。


「……何も出来ない?させないの間違いでしょ?エンヤさん、あなた、ティファを人形か何かだと思ってるの?ティファだって考える事が出来るのよ?ティファの面倒はあたしが見るわ、勿論お風呂も一緒にね」


 普段ならカルラは口を挟まなかったかも知れない。

 兄妹かどうかも知らないが、エンヤがティファを風呂に入れる事に否定も肯定もする気はない。

 風呂や就寝時は無防備になる。だから、同性のいない子供のティファは、身を守る術がないから常に張り付かれるのは仕方ない話だ。

 だが、今回は口を挟まずにはいられない。不特定多数の男ばかりがいる浴場で、美少女であるティファの裸を晒す事になるのだから。
しおりを挟む
感想 23

あなたにおすすめの小説

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

【完結】使えない令嬢として一家から追放されたけど、あまりにも領民からの信頼が厚かったので逆転してざまぁしちゃいます

腕押のれん
ファンタジー
アメリスはマハス公国の八大領主の一つであるロナデシア家の三姉妹の次女として生まれるが、頭脳明晰な長女と愛想の上手い三女と比較されて母親から疎まれており、ついに追放されてしまう。しかしアメリスは取り柄のない自分にもできることをしなければならないという一心で領民たちに対し援助を熱心に行っていたので、領民からは非常に好かれていた。そのため追放された後に他国に置き去りにされてしまうものの、偶然以前助けたマハス公国出身のヨーデルと出会い助けられる。ここから彼女の逆転人生が始まっていくのであった! 私が死ぬまでには完結させます。 追記:最後まで書き終わったので、ここからはペース上げて投稿します。 追記2:ひとまず完結しました!

復讐のための五つの方法

炭田おと
恋愛
 皇后として皇帝カエキリウスのもとに嫁いだイネスは、カエキリウスに愛人ルジェナがいることを知った。皇宮ではルジェナが権威を誇示していて、イネスは肩身が狭い思いをすることになる。  それでも耐えていたイネスだったが、父親に反逆の罪を着せられ、家族も、彼女自身も、処断されることが決まった。  グレゴリウス卿の手を借りて、一人生き残ったイネスは復讐を誓う。  72話で完結です。

悪役令嬢の慟哭

浜柔
ファンタジー
 前世の記憶を取り戻した侯爵令嬢エカテリーナ・ハイデルフトは自分の住む世界が乙女ゲームそっくりの世界であり、自らはそのゲームで悪役の位置づけになっている事に気付くが、時既に遅く、死の運命には逆らえなかった。  だが、死して尚彷徨うエカテリーナの復讐はこれから始まる。 ※ここまでのあらすじは序章の内容に当たります。 ※乙女ゲームのバッドエンド後の話になりますので、ゲーム内容については殆ど作中に出てきません。 「悪役令嬢の追憶」及び「悪役令嬢の徘徊」を若干の手直しをして統合しています。 「追憶」「徘徊」「慟哭」はそれぞれ雰囲気が異なります。

裏切られ続けた負け犬。25年前に戻ったので人生をやり直す。当然、裏切られた礼はするけどね

竹井ゴールド
ファンタジー
冒険者ギルドの雑用として働く隻腕義足の中年、カーターは裏切られ続ける人生を送っていた。 元々は食堂の息子という人並みの平民だったが、 王族の継承争いに巻き込まれてアドの街の毒茸流布騒動でコックの父親が毒茸の味見で死に。 代わって雇った料理人が裏切って金を持ち逃げ。 父親の親友が融資を持ち掛けるも平然と裏切って借金の返済の為に母親と妹を娼館へと売り。 カーターが冒険者として金を稼ぐも、後輩がカーターの幼馴染に横恋慕してスタンピードの最中に裏切ってカーターは片腕と片足を損失。カーターを持ち上げていたギルマスも裏切り、幼馴染も去って後輩とくっつく。 その後は負け犬人生で冒険者ギルドの雑用として細々と暮らしていたのだが。 ある日、人ならざる存在が話しかけてきた。 「この世界は滅びに進んでいる。是正しなければならない。手を貸すように」 そして気付けは25年前の15歳にカーターは戻っており、二回目の人生をやり直すのだった。 もちろん、裏切ってくれた連中への返礼と共に。 

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」

音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。 本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。 しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。 *6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。

断罪まであと5秒、今すぐ逆転始めます

山河 枝
ファンタジー
聖女が魔物と戦う乙女ゲーム。その聖女につかみかかったせいで処刑される令嬢アナベルに、転生してしまった。 でも私は知っている。実は、アナベルこそが本物の聖女。 それを証明すれば断罪回避できるはず。 幸い、処刑人が味方になりそうだし。モフモフ精霊たちも慕ってくれる。 チート魔法で魔物たちを一掃して、本物アピールしないと。 処刑5秒前だから、今すぐに!

処理中です...