出会いと別れと復讐と

カザハナ

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 カルラの上着の上に座る少女は、カルラを静かにじっと見ている。

 その瞳に恐怖や不信は何故か無い。カルラは彼女にそっと微笑み言う。


「あなたも寝て。あたしが必ず連れ出してみせるから」


 少女はこくりと頷きカルラの身体に身を寄り掛けて、その大きな瞳を閉ざす。まるでカルラが信頼出来る知り合いであるかのように。

 (……保護者は何考えてんのよ!こんな可愛い子が得体の知れない会ったばかりの相手に身を寄せるって……。よっぽど大事に守って来たんだろうけど、一番大事な事を教えないって、バカじゃないの?可愛がればいいって物じゃないのよ、世の中そう甘くないんだから)

 思わず溜め息を吐くカルラ。勿論カルラは少女に危害を加える気はない。ないが、これ程警戒心を持たずに接せられると大丈夫なのかと心配せずにはいられない。

 いくら真眼の持ち主だと言っても、世にいる他人の大半は自身を優先する。

 喩えそれが、どれだけ悪どい事だろうとだ。己の欲に溺れ、他者の気持ちを踏みにじる連中は多い。ここの人拐いがいい例だ。

 ここにいる囚われた女性達だって信用出来ない。自身が助かる為なら他人を犠牲にする。そんな人間を嫌という程見てきたからだ。

 とはいえ、それで助かるかといえばそうでもない。他人を犠牲にしてし上がれるのは一握り、極僅かな人達でしかないのだから。

 (取り敢えずここを出たら、この子の連れの生死を確認して、生きているのなら引き渡し、死んでいるなら見付けなければならない。彼女を任せられるような人を。ただ、守護者として側に付く者達はそれなりに強い筈だから、そう簡単にはくたばらない、とは思うけど……)

 守護者も人間だ。毒を盛られたり不意を突かれたりすれば、どうにもならない時もある。その分複数付くのが常識だが、万が一、という事もある為、最悪の事態も想定しなければならない。カルラが彼女をずっと見るという選択肢は最初からないのだから。

 (他人捜しに時間は掛けたくないけど、仕方ないか。この子を一人にする訳にはいかないし)

 少女がカルラではない他の女性を頼っていたなら、カルラはその女性に任せただろう。しかし、彼女が選んだのはカルラだ。呼び掛けたのはカルラだが、それだって他の女性が少女に関心を示さなかったからだ。

 自身の事で一杯一杯な彼女達は、庇護が必要な少女すら見捨てる。他の子は見ているというのに。同郷や顔見知りなら保護はするが、それ以外はごめんだと言わんばかりだ。

 カルラの外見年齢なら保護はいらないが、先程カルラに突っ掛かって来た子は他の女性が見ているぐらいだ。カルラは元より、この少女も余所者なのだろう。元々面倒見の良いカルラだからこそ、見捨てる事はせず声を掛けたのだ。
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