出会いと別れと復讐と

カザハナ

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 三十分、それとも一時間は歩いただろうか。道なき道の前に、ちゃんとした道が現れる。

 カルラの隣を歩く少女は、無言でカルラの手を引き片方の道を指差す。


「この道を行けばいいの?」


 カルラの問いに頷く少女。

 カルラは少女の声を、まだ一度も聞いていない。だが、カルラはそれを全く気にしない。声がなくても少女の身振り手振りで解るし、表情を伺えば大体は理解出来るのだ。

 こっちの質問には首を振って答えてくれるし問題はない。寧ろ、一緒に捕まってた他の少女達より気が楽だ。

 カルラと少女の間にある沈黙は決して気まずいものじゃない。

 深夜、周りから聞こえるのは虫の声や木々の音。幸い、大きな月が周りを照らしている為、視界も良好。

 道の上で出会でくわすなら、少女を引き渡した後は、さっさと退散出来るだろう。そんな事をカルラが考えていると、前方から馬の駆ける音と共に、三人の操る馬達が近付いてくる。

 カルラが少女の顔を横目で見ると、少女の顔には笑みが浮かぶ。

 どうやら彼女の守護者であるようだ。

 相手の顔が確認出来る程の距離に近付くと同時に、相手もこちらの顔を確認したのだろう。

 先頭を走る馬に乗った男の顔が、険しいものから驚きに変わる。


「ティファ?!」


 どうやらそれが、少女の名前のようだ。

 (よし、逃げよう)

 彼等の顔を見た瞬間、カルラは逃走したくなった。

 さすがにそれはしなかったが、ティファと呼ばれた少女に声を掛ける。


「見付かって良かったわね。あたしはもう行かなきゃ。ここでお別れだけど、元気でね」


 少女に微笑み、手を離してきびすを返す。

 ここで注意すべき事は一つ、走ってはいけない。逃げ出すという事は、自分にやましい事がある、と捉えられるからだ。

 カルラは少女を拐った側の人間ではない。

 逃げるなら堂々と。たとえ相手が、カルラにとっては鬼門と呼べそうな男達であってもだ。

 (出来れば、二度と関わり合いになりたくないから、早々に立ち去り、距離を置いたら直ぐにでも色や姿を変えて、確実にバックレよう)

 カルラが五歩程歩いた後だった。急に腰辺りが重くなり、思わず足を止めるカルラ。
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