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プロローグ
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「イース? 急に立ち止まって、どうしたの」
イースと同じような、明るい金色の髪をした女性が、突然足を止めたイースの視線の先を辿る。
イースの視線の先は、私。
イースは私の同郷で、幼馴染で、初恋の相手で、そして私の夫。
一ヵ月ぶりに見たイースは、以前と少しも変わらない。イースがいなくなって、私は驚く程やつれたというのに、イースにはまるで影響がないらしい。
もう、私の知っているイースはいないんだ、って突き付けられる。
「なぁに? あの子、イースの知り合い?」
イースの顔を覗き込んだ女性が、イースと何処で、どんな風に知り合って、どんな関係なのか、私は知らない。
けれど、美しい金髪に身体に添ったぴったりとしたワンピースを着て、頭から爪先まで手入れされている美しい年上の女性は、私なんかよりずっとイースの隣が似合っていて、自分の惨めさに地面に埋まりたくなる。
その人は誰なの? 妻は私でしょ、って、臆病な私には、言う勇気が無い。
ほんの数秒。久しぶりに正面から目を合わせたイースは、すっと目を逸らして、言った。
「あいつ? 昔寝たことがある女。それだけ」
「なぁんだ、そうなの」
私に見せつけるよう、イースとぴったり腕を組んだ女性は勝ち誇った笑みを浮かべた。
「そこの貴女、ご愁傷様。この人は私のものなの。私たち、すっごく相性がイイんだから。残念だけど、諦めてね。貴方とイースじゃ、釣り合わないでしょ」
違う! その人は私のもの! 私の夫なの!
そう叫びたくても、”釣り合わない”――これまで幾度も言われた言葉が胸を刺す。私とイースが釣り合わないことなんて、言われなくても分かっている。
だから、何も言えない。
何も言えないまま、ふたりが太陽の下、金の髪を煌めかせながら去って行くのをじっと眺めることしか出来なかった。
心はボロボロ、傷だらけで、今すぐにでも泣き叫びたいのに、口から漏れるのは乾いた笑い。
おかしくもなる。
生まれてからずっと――十五年間ずっと、一緒だった。誰よりも近くにいたのに。王都に出て来て、たった一年半で全てが崩れ去るなんて、誰が想像出来る?
私と過ごした時間は、イースにとって、もう何の価値もないものなの?
ふたりでずっと一緒にいようね、って。そう言ったのは、嘘だったの?
イースの気持ちが、分からない。
ただひとつ確かなのは、イースと私の関係は、もう元には戻らない、ってこと。
イースと同じような、明るい金色の髪をした女性が、突然足を止めたイースの視線の先を辿る。
イースの視線の先は、私。
イースは私の同郷で、幼馴染で、初恋の相手で、そして私の夫。
一ヵ月ぶりに見たイースは、以前と少しも変わらない。イースがいなくなって、私は驚く程やつれたというのに、イースにはまるで影響がないらしい。
もう、私の知っているイースはいないんだ、って突き付けられる。
「なぁに? あの子、イースの知り合い?」
イースの顔を覗き込んだ女性が、イースと何処で、どんな風に知り合って、どんな関係なのか、私は知らない。
けれど、美しい金髪に身体に添ったぴったりとしたワンピースを着て、頭から爪先まで手入れされている美しい年上の女性は、私なんかよりずっとイースの隣が似合っていて、自分の惨めさに地面に埋まりたくなる。
その人は誰なの? 妻は私でしょ、って、臆病な私には、言う勇気が無い。
ほんの数秒。久しぶりに正面から目を合わせたイースは、すっと目を逸らして、言った。
「あいつ? 昔寝たことがある女。それだけ」
「なぁんだ、そうなの」
私に見せつけるよう、イースとぴったり腕を組んだ女性は勝ち誇った笑みを浮かべた。
「そこの貴女、ご愁傷様。この人は私のものなの。私たち、すっごく相性がイイんだから。残念だけど、諦めてね。貴方とイースじゃ、釣り合わないでしょ」
違う! その人は私のもの! 私の夫なの!
そう叫びたくても、”釣り合わない”――これまで幾度も言われた言葉が胸を刺す。私とイースが釣り合わないことなんて、言われなくても分かっている。
だから、何も言えない。
何も言えないまま、ふたりが太陽の下、金の髪を煌めかせながら去って行くのをじっと眺めることしか出来なかった。
心はボロボロ、傷だらけで、今すぐにでも泣き叫びたいのに、口から漏れるのは乾いた笑い。
おかしくもなる。
生まれてからずっと――十五年間ずっと、一緒だった。誰よりも近くにいたのに。王都に出て来て、たった一年半で全てが崩れ去るなんて、誰が想像出来る?
私と過ごした時間は、イースにとって、もう何の価値もないものなの?
ふたりでずっと一緒にいようね、って。そう言ったのは、嘘だったの?
イースの気持ちが、分からない。
ただひとつ確かなのは、イースと私の関係は、もう元には戻らない、ってこと。
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