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第3話 新しい日常
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「いーやーだー!!」
脱衣所にユキの悲鳴が響く。
何が起きているのか…と言っても何も起きていないのだが…。
冬の夜風で冷えた身体を温めようと、ユキとお風呂に入ろうとしたところ、ユキが必死に抵抗を始めたという経緯である。
「お風呂なんか入らなくても私は綺麗なのだ!ちゃんと舐めて綺麗にするのだ!」
「人間は舐めても綺麗にならないよー」
ユキは猫の時も水もお風呂も嫌いだったが、人間になってもお風呂嫌いは変わらないようだ。
「いーやーだー!ご主人の意地悪!人でなし!!」
「はいはい、お風呂入って温まろうねー」
嫌がって抵抗するユキを無視して、服を脱がせる。人間になったと言っても幼い子どもの抵抗なんて大した事ない。抵抗するユキを抱えて浴室に入る。
「ぎゃぁぁぁぁぁ!」
足にお湯を掛けただけで、この絶叫とは…
ゆっくりと湯船に浸かると、必死に私にしがみついてくる。温かいお湯の中なのに、まるで氷水に入っているようにガタガタ震える身体を優しく抱きしめる。
「ご主人…怖いよぉ…」
「よしよし、大丈夫大丈夫」
それから私は、ユキの冷えきった身体が温まるまで、ユキの頭を撫で続けた。
ユキの身体が温かくなってきた頃、ようやくユキの震えが落ち着いてきた。
「ね?大丈夫でしょ?」
「うん、あったかい」
その後、ボディソープの泡を不思議そうに眺めている間に身体を洗った。でもシャンプーをしようとすると顔に水がかかるのは怖かったのか、滅茶苦茶に大暴れして危険だったので、長い白髪をお湯で軽く洗うだけにして、浴室を出た。
お風呂から上がって濡れた身体を拭き、髪の毛の水分はタオルで吸収する。自分の髪をタオルでしっかり纏め、ユキに声をかける。
「ユキ、髪の毛乾かすからおいで」
「はーい」
恐怖の浴室から解放されて生き生きとしているユキは、元気に私の膝に座る。
「…ちょっと近いから、自分で座って」
「ご主人の膝はダメなのか…?」
悲しげな上目遣いで見つめられる。そんな可愛い顔されても、早く乾かさないと風邪をひいてしまうので、背中を向けて座らせる。
「ご主人のケチ」
「はいはい、乾かすよー」
そう言ってドライヤーをつける。ドライヤーのブォォという音に小さな背中がビクッとするが、温かい風にホッと肩の力が緩む。
「ふにゃぁ」
顔は見えないが声から察するに、どうやらお気に召したらしい。美しい白髪を撫でるように乾かしていく。サラサラの綺麗な髪を満喫して、私も大満足だった。
「よし、終わり」
ユキの髪を乾かした後、自分の髪も乾かす。私の髪は短いので、乾かすのに時間は掛からなかった。
「さて、夕飯にしよ」
昨日作った白菜と鶏肉のシチューを冷蔵庫から取り出して温める。ユキが匂いに釣られて近寄ってくるが、火が怖いのか少し離れた所でこちらの様子を伺っている。
「ご主人、いい匂いがする」
「もう少し待ってね」
シチューをお皿によそって、テーブルに運ぶ。ユキが何を食べられるか分からないので、とりあえず食パンを添える。
「ご主人、食べていい?」
「いただきます言ってからね」
2人で両手を合わせて「いただきます」を言うと、ユキは嬉しそうにシチューの皿に顔を近づける。
「ユキ!人間はスプーンで食べるから待って!」
そのままシチューの皿に顔を突っ込みそうな勢いのユキを慌てて止めてスプーンを渡す。
「こうやって食べてごらん」
そう言って手本を見せると、不思議そうな顔をしながらも私の真似をしてスプーンでシチューを一口食べる。
「ご主人!おいしい!」
嬉しそうにシチューを食べていく。どうやら人間と同様に、シチューもパンも食べられるらしい。とりあえず、食べ物に関しては何でも大丈夫なのだろうか。
「うぇぇ…なんだこれは…」
と思ったら、口に入れた瞬間にペッと何かを出した。まさか人参はダメなのかと、ユキの顔色や体調に異常が無いか確認しつつ声をかける。
「大丈夫?気持ち悪い?」
「これ変な味する…おいしくない…」
身体に悪いわけではなく、純粋に好き嫌いのようでホッとする。
「ごちそうさま!」
その後、人参以外はペロッと完食して満足そうなユキは、洗い物中の私の背中に抱きついてきた。
「ご主人!撫でてー!」
あー、もう本当に、どうしてこんなに可愛いのだろうか。今すぐ撫で回したい衝動を抑えて、洗い物を終える。
「お待たせ!おいでー!」
両手を広げると、物凄いユキが勢いで飛び込んでくる。腕の中で幸せそうな天使を思いっきり甘やかす。
「ユキは本当に可愛いなー」
「ご主人、大好き!」
しばらく撫でていると、ユキがウトウトと眠そうに目を擦り始めた。
「そろそろ寝よっか」
一緒に布団に入り、ユキを抱きしめ、その温もりを感じながら目を閉じる。明日の朝起きて、今日の事が夢では無いように。
「ユキ、戻ってきてくれてありがとう」
「んー…」
転生なんて嘘みたいだけど、この温もりはちゃんと私の腕の中にある。明日は一緒にユキの服を買いに行こうか、なんて考えながら眠りにつく。
「おやすみなさい」
脱衣所にユキの悲鳴が響く。
何が起きているのか…と言っても何も起きていないのだが…。
冬の夜風で冷えた身体を温めようと、ユキとお風呂に入ろうとしたところ、ユキが必死に抵抗を始めたという経緯である。
「お風呂なんか入らなくても私は綺麗なのだ!ちゃんと舐めて綺麗にするのだ!」
「人間は舐めても綺麗にならないよー」
ユキは猫の時も水もお風呂も嫌いだったが、人間になってもお風呂嫌いは変わらないようだ。
「いーやーだー!ご主人の意地悪!人でなし!!」
「はいはい、お風呂入って温まろうねー」
嫌がって抵抗するユキを無視して、服を脱がせる。人間になったと言っても幼い子どもの抵抗なんて大した事ない。抵抗するユキを抱えて浴室に入る。
「ぎゃぁぁぁぁぁ!」
足にお湯を掛けただけで、この絶叫とは…
ゆっくりと湯船に浸かると、必死に私にしがみついてくる。温かいお湯の中なのに、まるで氷水に入っているようにガタガタ震える身体を優しく抱きしめる。
「ご主人…怖いよぉ…」
「よしよし、大丈夫大丈夫」
それから私は、ユキの冷えきった身体が温まるまで、ユキの頭を撫で続けた。
ユキの身体が温かくなってきた頃、ようやくユキの震えが落ち着いてきた。
「ね?大丈夫でしょ?」
「うん、あったかい」
その後、ボディソープの泡を不思議そうに眺めている間に身体を洗った。でもシャンプーをしようとすると顔に水がかかるのは怖かったのか、滅茶苦茶に大暴れして危険だったので、長い白髪をお湯で軽く洗うだけにして、浴室を出た。
お風呂から上がって濡れた身体を拭き、髪の毛の水分はタオルで吸収する。自分の髪をタオルでしっかり纏め、ユキに声をかける。
「ユキ、髪の毛乾かすからおいで」
「はーい」
恐怖の浴室から解放されて生き生きとしているユキは、元気に私の膝に座る。
「…ちょっと近いから、自分で座って」
「ご主人の膝はダメなのか…?」
悲しげな上目遣いで見つめられる。そんな可愛い顔されても、早く乾かさないと風邪をひいてしまうので、背中を向けて座らせる。
「ご主人のケチ」
「はいはい、乾かすよー」
そう言ってドライヤーをつける。ドライヤーのブォォという音に小さな背中がビクッとするが、温かい風にホッと肩の力が緩む。
「ふにゃぁ」
顔は見えないが声から察するに、どうやらお気に召したらしい。美しい白髪を撫でるように乾かしていく。サラサラの綺麗な髪を満喫して、私も大満足だった。
「よし、終わり」
ユキの髪を乾かした後、自分の髪も乾かす。私の髪は短いので、乾かすのに時間は掛からなかった。
「さて、夕飯にしよ」
昨日作った白菜と鶏肉のシチューを冷蔵庫から取り出して温める。ユキが匂いに釣られて近寄ってくるが、火が怖いのか少し離れた所でこちらの様子を伺っている。
「ご主人、いい匂いがする」
「もう少し待ってね」
シチューをお皿によそって、テーブルに運ぶ。ユキが何を食べられるか分からないので、とりあえず食パンを添える。
「ご主人、食べていい?」
「いただきます言ってからね」
2人で両手を合わせて「いただきます」を言うと、ユキは嬉しそうにシチューの皿に顔を近づける。
「ユキ!人間はスプーンで食べるから待って!」
そのままシチューの皿に顔を突っ込みそうな勢いのユキを慌てて止めてスプーンを渡す。
「こうやって食べてごらん」
そう言って手本を見せると、不思議そうな顔をしながらも私の真似をしてスプーンでシチューを一口食べる。
「ご主人!おいしい!」
嬉しそうにシチューを食べていく。どうやら人間と同様に、シチューもパンも食べられるらしい。とりあえず、食べ物に関しては何でも大丈夫なのだろうか。
「うぇぇ…なんだこれは…」
と思ったら、口に入れた瞬間にペッと何かを出した。まさか人参はダメなのかと、ユキの顔色や体調に異常が無いか確認しつつ声をかける。
「大丈夫?気持ち悪い?」
「これ変な味する…おいしくない…」
身体に悪いわけではなく、純粋に好き嫌いのようでホッとする。
「ごちそうさま!」
その後、人参以外はペロッと完食して満足そうなユキは、洗い物中の私の背中に抱きついてきた。
「ご主人!撫でてー!」
あー、もう本当に、どうしてこんなに可愛いのだろうか。今すぐ撫で回したい衝動を抑えて、洗い物を終える。
「お待たせ!おいでー!」
両手を広げると、物凄いユキが勢いで飛び込んでくる。腕の中で幸せそうな天使を思いっきり甘やかす。
「ユキは本当に可愛いなー」
「ご主人、大好き!」
しばらく撫でていると、ユキがウトウトと眠そうに目を擦り始めた。
「そろそろ寝よっか」
一緒に布団に入り、ユキを抱きしめ、その温もりを感じながら目を閉じる。明日の朝起きて、今日の事が夢では無いように。
「ユキ、戻ってきてくれてありがとう」
「んー…」
転生なんて嘘みたいだけど、この温もりはちゃんと私の腕の中にある。明日は一緒にユキの服を買いに行こうか、なんて考えながら眠りにつく。
「おやすみなさい」
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