市霊狩り

美味しい肉まん

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発芽

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 夕方になり目が覚めた、昼夜逆転の生活リズムが出来ている。気力と霊気が満ちている、マキから貰った三角剣を並べる。今ならやれる気がした手をかざしイメージする。一気に七本浮かび上がらせる、更に高速で三角剣をトレーニング部屋に駆け巡らせる。
 感覚を身体に覚え込ませる、幽鬼や淫獣とも渡り合えるだろうか? 手に持つ真三角剣に霊気を込めると光り美しい刀身を伸ばす。ここまでは出来た、もう足手まといにはならない。
 不意に何かを投げつけられる、三角剣が反応して叩き落とす。振り向くとマキが立っていた。

◆ ◆ ◆

 霊気を感じて目が覚める、油断した!? 違う……トレーニング部屋からこの攻撃的な霊気をキョーコが出してる!? 覗いて見ると、三角剣を自在に飛ばしている。キョーコの霊気の成長は目覚ましい。嫉妬してしまう、才能の差だろうか? 自分が勝っているのは実践経験だけ、キョーコの姿に憧れた。きっと幽鬼や淫獣の類ならば一人でどうにかするだろう。試しに三角剣を投げ付けて見る、即座に反応され叩き落とされる。本物だ……凄い!
「キョーコ凄いね! たった数日でこれだもん、アタシの修練付き合ってよ!」
自信ありげに笑みを浮かべて
「良いわよ、はじめましょう」
そう言うと正座した、アタシも正座し精神を統一させて行く。既にキョーコが真三角剣と三角剣を纏わせ、待ち構えていた。三角槍を構えて突っ込んで行く!

修練開始!!

 それからどの位の間、ぶつかり合って居ただろう。キョーコとアタシは床に突っ伏していた。
「ま……だ…まだ甘いね……キョーコ」
「くっ……マキの底力に……は……参るわ……本当に……」
夜警がある事など忘れたようにキョーコは全力で向かって来たのだ。結果的に勝ちはしたがこのざまである。寝室でスマホが鳴っている、クタクタになった身体を起こして電話に出るオッサンからだ。
 今晩の夜警についてだった。
「どうするよ? 行けるか?」
「オッサン守ってくれる? アタシら今クタクタでさ」
「何やってんだ?」
「修練終わったところ何だ、一応アパート迄迎えに来て」
「まじかよ?」
「三十分後に来てくれる?」
「わかったよ、だが俺が無茶だと判断したら夜警は無しだ良いな?」
「オッケ~待ってる」
通話を切る、キョーコが勝手にシャワーしてる。おいおい家主アタシ何だけど……まっいいや、寝室で荷物を漁るお目当てのベルトがある。これ本当はアタシが使う予定の物だったが、今のキョーコが身に付ける方がいいだろう。
「シャワー良いわよ」
「ここはアタシんち!!」
「私達のじゃないの……」
悲しそうな声で言う、きっとわざと言ってるなキョーコのやつ
「あ~面倒くさい! そうねアタシ達のだよシャワー浴びてくる! 直ぐにオッサンが来るから化粧でもしてな!」
熱いシャワーを浴びる、ふぅ気持ちいい~! キョーコとあれだけぶつかったんだ。いっそ清々しい疲労感だ、強くなったかなアタシも? 自分に気合を入れて汗を流して寝室へ向かうと、キョーコがポツリと言った。
「マキ……聞いて……私……」
「どうした!」
「服と下着がもう無いの……取りに帰っても良いかしら……」
あ~そういえばそうだ、幽鬼共は基本剥ぎ取るか切り裂くしか脳が無い。キョーコ結構幽鬼に襲われてるもんな~そのうち全部無くなるんじゃ無いか? そうはさせないが。
「スーツ借りたときについでに持ってくるべきだったな! よし! 今から取りに行こうぜ!」
「この時間じゃあ夫と娘がいるわ……」
「ちょっと顔見せてくれば? どうせオッサンもうすぐ来るし」
「でも……」
「大丈夫だよ、アタシもオッサンも一緒だ。娘さんにも顔見せてあげなよ」
キョーコが顔を赤くしてモジモジしてる
「大丈夫だってアタシ女だよ? そんな心配要らないって!」
「そっそうよね! 私ったら……家に電話するわ」
アタシは着れれば何でも良いけどね、動きやすければ。結局何時もの服装に落ち着くんだな~オッサンが来た事を知らせる電話をくれる。キョーコ二人で車に乗り込み用件を伝える。
「まっ疲れてるみたいだからな、今日は京子ちゃんの荷物を取りにいく! ついでにちょっとの夜警だ良いな!」
「オッケ~」
「お願いします」

 町中を車で走る。特に気配は無いか……昨日、身を持って感じたあの忌々しい気配を注意深く探る。キョーコから念話が届く
『一緒に来てくれる?』
『良いよ別に』
「鷲尾さん一緒に来て貰えますか?」
「構わねぇよ、ダンナにちゃんと説明してやるよ。聞いたなマキ! お前もこい」
「わかってるよオッサン」
キョーコの家につくと
「あの……マキその槍」
「断る」
キョーコがため息をつき、玄関を開けるとキョーコの娘さんが駆け寄ってくる。
「ママ~!!」
「ヒカル!!」
母娘の対面か……アタシ達の顔を見て
「この人たちはダレ?」
「こんばんわ! アタシの名前はマキ! 宜しくね! 隣はオッサンだよ!」
「おいふざけんな!」
「ヒカル挨拶して」
「こんばんわ! おねえちゃん、おヒゲのオジサン!」
「ヒカルちゃん今何歳かなぁ~?」
「七さい!!」
「二人とも上がってください」
リビングへ案内され、旦那さんに紹介される。ちぃっとばかし気まずい、オッサンが説明している。ヒカルちゃんは白い布で包んである槍を興味深く見ている。キョーコは荷物を取りに行って今はいない
「ヒカルちゃん気になる? これ」
「うん!」
「オネーサン位の歳になったら持たせてあげるね、代わりにこれ上げる! 掛けてあげるね」
「え~~! 大きいのが良い!」
「あっははは!」
突然外から気配を感じる……不味い!
ヒカルちゃんの頭を撫でる。キョーコがキャリーケースで戻って来た、おいおい旦那さんビックリしてるよ。
 それよりも明らかに敵意を向けられている。オッサンを急かせる、察してくれたようだ。
「数はわかるか?」
「無理、敵意が強すぎる。早く来てね先行する」
そう言うと飛び出して行った
「では塚田京子さんは我々警察で保護させて頂きます」
「すみません宜しくお願いします。妻を守ってください」
旦那がオッサンに頭を下げてる
「ヒカル良い子にしてるのよ?」
「ママ……うん……」
ヒカルちゃんを抱きしめている。
「では急ぎますので失礼します! 塚田さんもう時間です、車までお願いします。絶対玄関を開けないでくださいいいですね!!」

 先に外に出て警戒する、幽鬼が多い!!だがコイツらは只の幽鬼だ何体か斬り捨てる。
「オッサン急いで!」
キョーコが気付きポケットから三角剣を飛ばしアタシの援護に回る。
「もっとダンナと仲良くしてくれば?」
「それ嫉妬?」
槍に霊気とちょっとの怒りを込めて穿く、何体か消し飛ばした
幽鬼共が急に湧いた狙われている?
オッサンがキャリーケースを車に積んだ
「乗れ!」
キョーコが乗り込む
「ちょっとまって! この辺りの雑魚纏めて吹き飛ばす!! キョーコの家族が危ない」
『神気』と霊気を融合させて行くが霊気が足りない、仕方がない足りない分は『神気』で補う。裂帛の気合とともに槍の石突きで地面に練り上げた『神気』と霊気を叩きつけた。
『神気』で補っただけあり周辺の雑魚は蹴散らせただろう。
 槍で自分の身体を支える、『神気』は通常の人間には備わっていない。アタシの身に宿る『神気』は後天的に身に付いていたものだ。人間が使って良い力では無い、だが師匠との修行で何とか三割程度の『神気』を操れるようになった。足りない霊気の分を補う為それを超えた、霊気は身体を休ませれば自然と回復する。『神気』は減った分強制的に補充される為、その分身体に負担がかかる。現在使えるであろう三割を超えて放ったのだ。反動は大きい、だが修練のおかげか何とか立っている。
 車に乗り込むと直ぐにキョーコの家から離れた。後部座席でキョーコに膝枕されている
「また無茶して……もう……」
涙が降って来る。
「大丈夫だよ、キョーコの家族護れたし。お土産も置いてきた」
「えっ?」
「ヒカルちゃんにね御守あげたから」
「いててて」
起き上がれる、やはり修練を続けて良かった。
「ありがとうマキ」
「良いって良いって……うわぁ!」
急ブレーキで車を止められる
「オッサン!」
「酔っ払いか? 喧嘩してやがる、ちょっと待っててくれ」
「通報しとくよ?」
「頼む、じゃあ止めてくる」
オッサンが向うと通報の電話をする、何やら揉めているようだ。オッサンが酔っ払いを、取り押さえようと揉み合っているとオッサンの動きが止まる。嫌な予感がした、後ろからナイフで刺されている。
「オッサン!! キョーコ救急車!!」
車から飛び出し酔っ払い目掛けて飛び蹴りをいれ。ふっ飛ばす! 刺した人間を見る
「にげ……ろ……コイツら……グルだ……」
「だったら尚更だよ」
刺した人間を睨む、オッサンは街を守ってるだけなのにそれを……憎悪が湧き上がる。今迄押さえていた感情『憎しみ』『恨み』何より本気の『怒り』が霊気を反転させて行く。
 サイレンが鳴響き逃げようとする人間に『呪弾』を撃つ吹き飛び痙攣しているが知ったことか。オッサンを見る幸いナイフは刺さったままだ、出血は少ない。
「オッサン! しっかりしろよ!」
キョーコがやって来る
「鷲尾さん!!」
パトカーと救急車がやって来る、二人組を逮捕してもらいオッサンは搬送されて行き。アタシたちはオッサンの車で病院へと向かった。既に手術室の前ではオッサンの家族が心配そうに立っていた、キョーコに腕を引っ張られロビーで話し合っていた。
「鷲尾さんどうして刺されたのかしら?」
「もしかしたらだけど偶然じゃ無い、おかしくない? 何でナイフを都合良く、酔っ払いが持っていたと思う?」
「それって……」
「オッサンが言ってた、コイツらグルだって」
「どうやら敵は、幽鬼と淫獣以外に人間も居るって事かな?」
「何のために……そんな」
「誰かの邪魔者って事だろうねアタシたち。面倒だね幽鬼共からは、霊気で感知できるけど人間じゃあわからない……クッソ!!!」
「マキ……落ち着いて……」
キョーコが手を握る
「マキ? 正直に答えて……くれる?」
「何を?」
語気が荒い
「マキの事よ……貴女さっき使ったでしょう……答えて……」
「キョーコ……ごめん……使った……もう二度と使う事は無いって思ってたのに……」
アタシは顔を両手で覆う

『呪い』の力を


■ ■ ■

 一人片付いたようね殺せ無かったけど、まぁいいわ面白い物が見れたし。さぁどちらを片付けましょうか……あの娘の力がもっと見たい……じゃあ決まりね……ふふっ精神的に追い詰めたらどうなるかしらね? さあ用意しなければ新しい舞台を……さぁ隠してる力を魅せて……二人目の生贄は決まりね。その綺麗な顔を歪ませてあげるわ。
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