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Dランド編

11 GO HOME!

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 朝食を食べ終えると、帰りの支度をする為に、部屋へと戻る。昨日はヤエと遅くまで話し込んでいて、アタシ達の部屋は荷物が散乱としていた。
「さっさと片付けようか」
「急ぎましょう!」
 大急ぎで荷物を片付けるが、やはりというか……荷物が増えてる! そりゃそうだよね~お土産もあるし。そもそも荷造りしてくれたのはヒエだ、そして散らかしたのはアタシ達。
「ヒエ呼んだらきてくれるかな……」
「そうね呼びましょう!」

 ヒエのスマホに電話をかけると、すぐに出てくれた。
「お願い! ヒエ助けて! 荷造りが進まないんだ!」
「こっちはとっくに終わってるから、良いわよ、すぐに行くから」

 少し待つとヒエがやって来てくれた。この部屋の惨状を見て。
「ちょっとそんなにごちゃごちゃに入れたら駄目よ、一旦全部出して! 入れ直すから!」
「はい……なんかごめん……」
「ありがとうヒエ!」
 テキパキと荷物を片付け始めるヒエ、まるで魔法のように荷物がキャリーケースの中に収まっていく。
「お土産は入らないから健に持たせましょ!」
「もうチェックアウトか……本当におわるんだね旅行」
「帰るまでが旅行って健は言ってたよ? 安心して二人は、後ろでゆっくりしてれば良いと思うの」
「小学生か……」
「…………あと、二人ともごめんね……私ばっかり健を独占して」
「別にアタシは構わないよ?」
「そうね私はちょっとカチンときたけど問題ないわ」
 ヤエはヤッパリ嫉妬してたのか……
「うん……二人とも優しいね、私ね……もう焦らない事にした」
「もちろん授かれば嬉しいけどね、でもね……健が居てくれて二人がいる、今もとっても大切……んと……上手く言えない」
「そんな小難しいこと考えないで愛し合おうよ! だってさアタシ達の大切な旦那だよ?」
 そして昨日の写真の話をした。
「なにそれ馬鹿みたい、でも昨夜は写真を見ながら満足してたわよ? 楽しかったって」
「今度は、どんな時でも写真を撮りましょうヒエ、そうやって残していきましょうね」
「アタシの車もあるんだし今度は……そうだ思いっきり和の世界に行こう!」
「和?」
「多分ヒエとヤエには落ち着くところかもだよ!」
「そっか、期待してるね茉希」
 う~んアタシの気のせいじゃない、ヒエの雰囲気がかわってるな。一応最後に確認するか、普段ならキレるだろうけど。
「ところでヒエ、そんなに愛し合った?」
 みるみるうちに顔が赤くなって、モジモジしながら。
「…………ぅん……」
 それを聞いたヤエが何かショックを受けているけど。
「よかったねヒエ! ちょっとは素直になれたんだね?」
「私、焦らないけど、我慢もしない事にしたの、だって我慢してると私……」
「爆発しかねないもんね、いや実際爆発したのか……」
「ごめんね、ヒエの気持ち……知っていたのに私、見ないふりをしてた」
「ヤエ、私達って一緒だね」
「…………」
 そう言って見つめ合う二人、お互いにしか分からない何かがあるんだろう。だけど……アタシだって全員が大切なんだ。
「アタシを忘れないでくれるかなぁ?」
「何言ってるのよ茉希、私達は一緒よ何処までもね」
「本当、今更何言ってるのよ?」
「そうだね当然だねっ!」
 そこから三人で会話が盛り上がっていたが、アタシのスマホにタケシから着信だ。
「おーい、もうチェックアウトの時間だぞ? 早く来て!」
「うん、今行くよ!」
 名残惜しいけど。
「さあ帰ろうか二人とも!」
 ロビーに着くとタケシにお土産袋とキャリケースを渡す、このホテルは自動清算だ。予約の時に全額入金済みなので後は帰るだけ!
 ヒエに耳打ちする。
「荷物持ちにかこつけて手を繋いじゃいなよ……」
「なっ⁉︎」
「うん……」
 小さく頷くとヒエはタケシの元に走っていった。
「ずいぶんと余裕ね茉希?」
「何でだろうね……アタシも不思議なくらいさ、でも何だか今の関係は絶対に壊れない! ってそう思うんだ」
「そうかしら? 私やヒエが健を奪って消えるかもとか思わないの?」
「できないくせに……アタシには何でもわかっちゃうんだよ」
 だってお互い大切だからね……
「わかってしまうのね……強くなったね茉希」
「う~ん自覚はないんだけどね」
「やっぱり融合したせいかな?」
「多分、愛の人格と人生経験がそのままアタシにフィードバックされてるのかも……かなぁ?」
 ヤエとそんな話をしていると、旦那がホテル前まで車で迎えに来てくれた。
「乗って乗って二人とも! ちょっとのんびりし過ぎたみたいなの!」
「オッケー! 帰ろうヤエ!」
 ホテルから出発するとすぐに首都高だった、来る時は気付かなかったけど、このホテルは立地も良かったんだ……それよりも。
「タケシ! 今度はさ、金沢行こうよ!」
「金沢? 何かあったっけ?」
「兼六園とか市場とか!」
「俺あんまり知らないんだよね、そっちの方は……」
「じゃあ行こう! 決定ね‼︎」
「おいおい、無茶言わないでくれよ、今年はもう……」
「良いからさ! 日帰りもできるし!」
「日帰りか……そうだね、二人が安定しているうちに行っておくか!」
「アタシの車は伊達じゃない! って事でヒエ、ヤエ! 次の旅行先は決定ね!」
「ふ~ん、私は皆んなで行ければどこでも良いかな」
「ヤエはどうかな?」
「うん! 行きたい!」
「そっかじゃあ俺頑張るよ!」
「あっ! でも一つだけ条件があるの私からアナタに」
「ん?」
「写真は全員で撮るの! 誰一人欠けることなく!」
 そう言えばそうだった、この旅行に撮った旦那の写真は手しか写っていなかった。
「あ~俺は皆んなが楽しそうで、それが嬉しくってな! 自分の事とかどうでも良かったよ」
「「「自分の事とかどうでも良いって二度と言わないで」」」
 アタシ達の思いは一緒だったのだろう、見事にハモった。
「私そんなのやだよ……健」
「アナタがどうでも良いってなんて私達思ってないから!」
「いや、そう言う意味じゃなくって……」
「タケシさぁ、自分の楽しみとかないの? アタシ達が楽しんでいるのを見ることだけなの?」
「ダメか? 俺の今回の旅行のテーマは、皆んなの笑顔が見たいからだったんだけど……」
「ダメ、アタシは欲張りなの、そこにはタケシもいないと意味がないの」
「私は少し寂しくなったの、あんなに思い出がつくれたのに、アナタだけが居ない世界のようで……」
「そっか……気をつけます、ごめん……」
「次の旅行は覚悟してね! 絶対に離さないから!」
「うん、わかった……離れないよ」
「じゃ安全運転でヨロシク! 」
「オッケー!」
 今回の旅行の反省点は次回に活かそう、そうすればきっともっと楽しい思い出がつくれる。タケシの笑顔の写真もきっと……

 いつの間にか眠っていたのだろうか? 気がつくともう越後川口のサービスエリアだった。
「うっううん」
 シートの上で背伸びをして、辺りを見渡すと。
「あら、起きたのね茉希」
「寝ちゃった」
「よく寝てたわよ?」
「ヤエは寝てないの?」
「三十分ぐらいかな、茉希がよく寝ていたから私もつられちゃって」
「タケシは?」
「ずっとここまで運転してたからヒエと交代するみたいよ?」
「その二人は?」
「苦いコーヒーを飲まないとヤバいって言って、あっ帰ってきたわね」
 ドライバーはヒエに変わり、タケシが助手席に乗り込むと。
「おまたせ! もう少しの辛抱な二人とも」
「私に任せて! ここからアパートまで一気よ!」
「安全運転な」
「まかせて!」
 ほんと、雰囲気変わったなぁ……この旅行行って良かったな。

 ヒエにどうか新しい命が芽生えていますように……そう祈ると再び眠りにつき、次に目が覚めたのはアパートに着いた所だった。
 荷物をタケシが下ろすと部屋まで運んで、車を月極駐車場へと停めに行った。
「お疲れ様ヒエ!」
「別に良いわよ、楽しかったんだし! トチ! ただいまー!」
「にゃうっ!」
 二日ぶりのご主人との再会で尻尾を立てながら、ヒエに戯れついて撫でられているトチ。
 今度はコイツも連れて行こうか!
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