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平和な日々のお話

13 計画 その2

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 あーでもないこーでもないと、みんなが意見や要望を智成さんが都度紙の上に書き足していく。
 ご主人は何か要望はありますか?
 要望ねぇ…………三人がめっちゃ俺をみてる。本当は今まで通り部屋を一緒にしたいけど……腹を括るか。
「大人四人で暮らせる部屋を作ってもらえますか?」
「寝室も一緒という事ですか?」
「はい、お願いします。良いよな? 四人で」
「でもそれじゃアナタのスペースはどうするのよ」
「女三人と一緒がいいのかいタケシは?」
「私は別にきにしないわよ?」
「ヤエ、やっぱり俺はお前達といたい、だめか?」
「それは……一緒がいい……」
「アタシは良いよ?」
「じゃあ決定で、あと智成さんこっちへ……」
 俺と智成さんはガレージからでると。
「あの、お願いがあるんです! 小さなガレージとかって作れませんか!」
「どのくらいのですか」
「二畳半ぐらいでバイクを整備したりプラモデルを作ったり色々な……あるじゃないですか秘密基地みたいに!」
 そう伝えると、智成さんは手を出してきた、どうやら俺の熱意が伝わったらしい。俺も手を差し出し硬い握手を交わした。
「喜んで作りましょう! それではガレージに入りましょうか」
「ありがとうございます!」
 ガレージに戻り智成さんが図面を凄い速さで書き起こしていった。
「それでは一旦これで完成させますね、ご要望は?」
「俺はもう大丈夫…………あっ二階にもトイレがあると」
「アタシお風呂は今のアパートのやつが良いなコレかな? あっあと駐車場!」
「私はキッチンがこのモデルで」
「私は、そうね……あっ! 部屋の敷居を無くすことってできるの? ってやつ」
「はいできますよ」
「じゃあ全室それでお願いね」
「そんなので良いのか?」
「誰が掃除してると思っているのよ」
「あ~なるほどねぇ! ヒエらしい注目点だったね!」
 そうして図面の完成となり三人の表情が一気に変わった。
「これが私たちの住む……家」
「どんな風になるかなぁ」
「私達の家!」
「なんなら私に任せてくださいませんか、お風呂にトイレとキッチンは決まりという事にして」
「壁紙など内装のカタログが有りますので、ささっ京子も喜ぶでしょうから!」
 半ば強引に家へと案内され、玄関に入ると。
「おじゃまします」
「キョーコいる?」
「お邪魔します」
「失礼します」
 各々礼を言いながらリビングルーム? なのかな広いとにかく広い、塚田さんが子供のお世話をしているところだった。
「今壁紙と外装のサンプルとカタログを持ってきますから!」
「わかりました」
 俺はすぐそこにあるソファーに座ると女子チームに目をやる。
 塚田さんが赤ちゃんを見せている、ヤエと茉希にアドバイスしている様だった。そしてヒエに何か喋ってる。
「はああぁぁぁああ⁉︎ ヒエ様も!」
 あっヤバい、まだヒエの妊娠を正式に伝えていなかった。ズンズンと近づいてきて。


 スッパーン! パーン! パーン!
「へっぶっ……ぶべっ……ぐあっ!」


「この前、言ったじゃないですか! 痛いです……」
「私も手が痛いです」
「お客様に何をしてるんだ京子‼︎」
「ごめんなさい、智成さん私がこの人をビンタした理由知りたい?」
「複雑な環境なんだろ? 立てますか八神さん」
「悲しいほどに慣れてますので」
「慣れてる⁉︎」
 本当に痛いんだよな塚田さんのビンタ……
「とっ取り敢えず八神さん今日は家で夕御飯を食べていったらどうですか? カレーの予定でしたから」
「それじゃヤエの出番かな」
「任せて京子!」
「一緒に作りましょうか! ヒエ様食べられそうですか?」
「様をつけるのやめてくれると嬉しんだけど……」
「そうでしたね! カレー食べられそうですか?」
「甘くみないで、カレーにはちょっとうるさいわよ私?」
「そういえば……ヒエってヤエから習っていた料理はカレーだったけ?」
「そうよ、ヤエが出産で動けなくなったら私にもできるように」
「そっか、カレーなら俺も作れるよ、一緒に作ろうな!」
「うん……」
「はいはい、ここはキッチンですから、良かったら家の子達を見てください」
「智成さん、お子さん見ても良いですか?」
「えぇもちろんですよ!」
 赤ちゃん用のベットに双子がスヤスヤとお休み中の様だった、茉希は三歳になったヒカルちゃんと遊んでいる。
「茉希は子供好き?」
「ん~好きかな!」
「そっか、智成さんもう双子の赤ちゃんの名前って決まってるんですよね?」
「青いタオルがナナ、赤いタオルがヒナです」
「両方、女の子ですか」
「家はどうやら女系が強いみたいですね」
 だろうね、ビンタはともかく塚田さんの戦闘力は、並の男ですら倒してしまうだろう。もうあんなのはゴメンだしな。
 ソファーに腰をかけると一通りの壁紙と外装のサンプルを用意してくれた。
「結構有りますね……」
「私も見ても良いかな?」
「ヒエの意見もちゃんと聞かせてくれる?」
「もちろんよ」
「今流行っているのは、これとこれですかね」
 幾つか紹介してくれたが疑問が一つ。
「今、流行ってるんですよね?」
「まぁ流行り廃りはありますから、外装はこだわる方は徹底的にこだわりますね」
 そっかじゃあ、なるべく普通ので行こうか、幾つかの外装を手に取ってみてみる。良し悪しはわからないな……
「カレーができましたよ! 私とヤエさんで作りました!」
「ちょうどいい、一旦ご飯を食べてまた考えましょうか…………はぁ」
 なんか声が小さくて聞こえないが、今溜息した様な気が……取り敢えずテーブルに座ると。
「ごちそうになります」
「はいどうぞ!」
「!」
「⁉︎」
「⁈」
「‼︎」
「はぁ……」
「ねぇねぇ健、カレーってもっとこう違うよね?」
「なんか舌が違う意味でビリビリする」
「………………ごめんなさアナタ」
「どうですか私のカレーは!」
「うん! まずい!」
 茉希⁉︎ お前遠慮ないな!
「キョーコってさ料理上手な方だよね?」
「そっそうよ」
「八神さんすみません、京子はカレーだけは壊滅的にダメなんです」
 こんな激物食わせたらえらい事になりそう。特に妊娠中の三人には‼︎
「っつ塚田さんのカレースゴクオイシイデスおかわりください!」
「そうですか! たくさんありますから幾らでもおかわりしてください!」
「八神さん本当に申し訳ありません」
「これも三人を守るためなら俺は食べ続けるだけです」
「ごめんなさいアナタ、京子がドンドン調味料やら香辛料を……」
「そーゆーのは料理のできる人がやるもんだよヤエ」
「茉希食えるか?」
「うん! 無理!」
「ヒエ?」
「まずい、智成さんトイレどこですか?」
 何かを察知してくれたようでトイレへと向かうと案の定…………
「食事中にすみません……」
「健、一人で私の作ったカレー今度食べてみてくれる?」
「幾らでも食ってやるから、ヒエはもう食べるな、赤ちゃんに悪い」
「そうかもね……ありがとう、少し楽になったよ」
 各々の席に戻ると。覚悟を決めるか!
 ムシャムシャ食べてやった、茉希の分、ヤエの分、ヒエの分そして最後はこの俺の分!


 そして何年振りかの嘔吐を塚田家のトイレにぶちまけた。後悔はしていない。


「ひぃひぃ……どう? 気に入った外装とかあった?」
 どうにかリビングに戻ってきた、ヤエから水を渡されると。一気に飲み干す。
「タケシ外装さアタシこれなんかどう」
「意外とモダンなやつを選ぶんだな?」
「あんまり奇抜なやつ作って後悔したくないじゃん」
「そりゃそうだ、何年も住むんだからな」
「だいたい揃ってきましたね、八神さん!」
「あとは土地かぁ……」
「土地と建設会社にも私が掛け合いましょう」
「いや流石にそこまでは……」
「いえ、やらせて下さい完成まで!」
「ちょっと失礼」
 三人を呼んでリビングの隅っこで。
「どっどうする?」
「アナタに任せるわ」
「家主はタケシだしねー」
「健、これはチャンスよ、きっと」
「良いんだな進めるぞヤエ?」
「うん!」
 そうして智成さんにあらためてお願いする事になった。
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