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1巻
1-3
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白露の、片眼鏡をかけていない方の目が、日差しを受けて紅茶色にきらめいていた。
私はその前に座って、おもむろに口を開いた。
「白露のお願い、聞いてあげる。真贋鑑定っていっても、今までそんなことに麒麟眼を使ったことがないから、できるかどうか分からないけど」
そう告げると、白露は子どもみたいに顔を輝かせた。
「わあ、いいの? 助かった! ちょうど督促が来たんだよ、さっそく行こう」
「督促?」
「うん。なんでも創業二百年の記念パーティが明後日あるらしくて、それまでに真贋を確定させたいんだってさ」
「どうしてそんなに急ぐんだろうね」
「大した理由じゃないさ。真贋を明らかにさせたい動機なんて、たかが知れてる」
白露はのっそりと立ち上がった。上着を羽織りながら、どこか呆れたように呟く。
「絡んでくるのは、金か、血縁か……いずれにせよめんどくさそうだ」
白露と並んで街を歩く。長い足を持て余すように歩くんだな、と思っていたら、単に私に歩調を合わせてくれているだけだった。
私に似合うワンピースを選んでくれたり、歩調を合わせてくれたり、女の扱いに慣れている感じだ。意外。
春龍街の中でも、背の高い建物が並ぶ地域に差し掛かった。
「あそこの大店が依頼主のお店だよ」
「わあ、デパートみたい」
八階建てのお城みたいな建物が、でんと目の前にそびえ立っていた。装飾過多で、若干けばけばしい。
そのけばけばしさをさらに引き立てているのは、正面にある巨大な魚のガラス細工だった。それがシャンデリアみたいに、建物からぶら下がっているのだ。
直径三メートルくらいはあるだろうか。鱗一枚一枚が全てガラスでできているので、光を反射するったらない。そのせいで七色の光が、常にあちこちから網膜を攻撃してくる状態だ。
「うう、僕の眼鏡サングラスに変えてくればよかった」
「胡散臭さが増しそうだね。っていうか、あれは……すごい」
「すごいよねえ。あの魚が、僕に真贋鑑定するよう依頼されたものだよ」
「あれを? どうして?」
魚の大きさに合わせて建物の壁がくぼんでいるから、あれは建てた時からあそこにぶら下がっていた感じがする。今更本物も偽物もないだろう。
「それは――」
「ああ、白露どの! お待ちしておりました」
白露の言葉を遮るような胴間声。顔を上げると、そこには大きなお腹を抱え、四本の尾を生やした猫又が立っていた。
猫又、というか、二足歩行して紺色の前掛けをつけた、大きな猫という感じだ。横幅は白露の二倍くらいある。白い毛でさらに膨張効果大。
「こんにちは、右近どの」
「ぜひ本日中にはあの魚――金色魚の真贋を鑑定頂きたく! ええ、名高い美術商の白露どのの鑑定であれば、一族の者は皆、納得するでしょうとも! たとえあなたが鵺だとしてもね!」
最後の一言は余計だな。そう思いつつ、私はこっそり白露に問う。
「白露って、そんなに有名な美術商なの」
「人間社会へよく行き来してるってだけなんだけどなあ」
「おや、そこの人間は?」
右近と呼ばれた猫又が私を指さす。
お守りのおかげで、麒麟眼だと気づかれていないようだ。
「僕の連れです。人間社会でつてのある方のお嬢さんで」
「ほう。なかなかの上玉、それに小柄で御しやすそうだ。どうです? 金持ちのあやかしの家に買い取られる気はありませんかねぇ? 可愛い人間の娘を愛でるのが、最近の流行でして」
ごく自然に言われてぎょっとする。それってつまり、人身売買じゃないのか。
驚いたせいでとっさに返答できず、口ごもっていると白露が割って入った。
「お預かりしているお嬢さんですので、商売の話はご勘弁を。それよりも、あれの来歴を改めて教えてくださいませんか」
「まあ、いいでしょう。あれは名匠・捨松の手になるガラス工芸でしてね。我ら三毛猫商会の守り神のような存在です。先々代の当主が、腕利きのガラス細工師に作らせたのです。ざっと七十年ほど前のことになりますか」
「来歴は分かってるのに、どうしてあれの真贋鑑定を白露に依頼したんです?」
右近がちょっと顔をしかめた。
「けしからんことに、あれが偽物だと主張する輩がいるのです! 創業二百年記念パーティも近いのに由々しき事態。何しろこの私が、ついに三毛猫商会の当主となる、めでたき日ですからなあ! 万全を期すべく、白露どのを呼んだ次第」
そう言うと右近は顔をしかめた。
「本音を言えば、鵺などに借りなど作りたくはないのですがね! 背に腹は代えられん。とはいえお嬢さんのような、資産価値の高い人間を見つけられたのは運が良かった! 金に困ったらいつでも来るといいでしょう」
右近は大きなお腹を揺らしながら、店の中に戻っていった。その後ろ姿が完全に見えなくなってから、私は口を開く。
「……何あれ? あれがあやかし流の依頼なの?」
「僕は鵺だからね。商売をやっていて縁起を担ぐあやかしからは、ものすごく嫌われてるのさ」
「じゃあ真贋鑑定なんて依頼しないでほしいよね。態度も失礼極まりないし、大体しれっと人身売買持ちかけてくるとか、信じられないんだけど」
口ごもってしまったのが悔しい。何か言い返してやればよかった。
遅れてやってきた怒りを持て余している私をなだめるように、白露が言う。
「一応あれでも、僕の仕入れた商品を高く買ってくれるお得意さんなんだ」
「仕事のためなら、何か言われてもある程度は我慢しないといけないってこと? あやかしも人間も一緒ね」
「そういうことだ。だがもし君に手出しするようなら、僕も黙ってはいないから安心して」
さらりと言われ、言葉に詰まる。まるで少女漫画みたいな台詞に、またしてもとっさに反応できずにいると、白露は微笑んで金色魚を指さした。
「あれをもっと近くで見てみよう」
店の中に足を踏み入れると、色んなあやかしが買い物をしていた。
彼らを尻目に、昇降機に乗る。鉄柵がガチャガチャ音を立てて閉まり、ゆっくりと上っていく。レトロだ。
最上階には、お茶や軽食を出す屋台が三つほど並び、子どものあやかしが遊び回っているスペースがあった。
大通りに面した壁の方に、細長い窓があって、そこから金色魚を眺められるようだった。私たちはその窓の前に立って、威容を誇るガラスの巨大魚を観察する。
「あれが偽物だ、と言い始めたのは、ぬばたま堂のあやかしたちだった。ぬばたま堂は、烏天狗たちの商会だね。宝石関係の商いをしているらしい」
「もしかしてぬばたま堂は、三毛猫商会のライバルだったり?」
「よく分かったね。そう、商売敵だ。だから最初右近は、三毛猫商会の足を引っ張ろうとしている彼らの嫌がらせだと思ったらしい」
白露が話してくれたところによると、あの金色魚は、三毛猫商会の当主の正統性を示すものなのだという。
なんでも、今の当主・花梨と、その甥・薄荷は、当主の座を巡って争っていたのだそうだ。いずれも商才に恵まれ、実力は互角のように見えたが、当主に選ばれたのは花梨の方だった。
「あの金色魚は、先代から花梨への贈り物だと言われているよ。当主争いをしているところへ、あんなにすごいものを贈られたら……後継者争いの結果は見えたようなものだよね」
敗北を悟った薄荷は、ある日家を出たきり、二度と戻らなかったそうだ。
こうして当主になった花梨は、右近という後継者にも恵まれた。先ほどの右近は花梨の息子なんだそうだ。
七十年も経てば、いくら長命のあやかしでも衰えがくる。花梨は当主の座を、あの金色魚と共に右近に譲ろうとした。
そこへふいにやってきた、ぬばたま堂の烏天狗。
いわく『その金色魚はもう一匹いる』。
「金色魚を作った捨松は、宝石を商う烏天狗たちとよく取引していたらしい。捨松が亡くなって、その手記や日記を手に入れた烏天狗たちは、どうやら捨松はもう一匹金色魚を作っていたらしい――と結論付けた」
材料のメモ書きや設計図、残っていた納品書などを根拠に、烏天狗は『もう一匹金色魚がいる』と吹聴して回った。
「でもそれは、烏天狗の考えでしょ? ほんとにもう一匹作られたかどうか分からないんだから、金色魚はここにある一匹だけです、って堂々としてればいいのに」
「それだけ右近の立場が危うい、と言えるだろう」
「……なるほど。そんな噂程度の話にも揺らいでしまうような立場、ってことね」
右近は平気で人身売買を持ちかけてくる奴だ。敵が多いのかもしれない。
「まあ、僕としてはあれが本物でも偽物でも、どっちでもいいんだけどさ。三毛猫商会は小さくない取引相手だから、お家騒動の顛末は見届けておきたくて」
「麒麟眼を持ってる私がいれば、鑑定結果が正しいかどうかの確証にもなる。それで右近に恩を売れれば、今後の取引が有利になるもんね」
「さすがサラリーマンはそろばん勘定が早いなあ。ま、そういうことだ。もっとも、君が麒麟眼だということは、軽々に明かす気はないけどね」
ぼけっとしているように見えて、白露もなかなか賢く立ち回っているらしい。そういうところは好印象だ、サラリーマン的に。
「さて、あんまり長居したくもないし、真贋鑑定してみるね」
「真贋鑑定の工程って、どんな感じなのかな?」
「初めてやるけど……今回は、夏場道端に落ちてる蝉に対して使う感じでやってみようと思う」
白露がものすごく怪訝そうな顔をする。全身で、どういうこと? と問うている。
「落ちてる蝉って、死んでるか生きてるか分かんないでしょ。そういう時に『これは生きている蝉である』って仮説を持って麒麟眼を使うと、それが本当か嘘か分かるの」
「……そんな麒麟眼の無駄遣いってある? ちなみに、足を開いてたら生きてる蝉で、閉じてたら死んでる蝉ね」
「――あっほんとのこと言ってるね⁉ そういうことは早く教えてよもー!」
一つ学びを得た。気を取り直して、金色魚。
『この金色魚は捨松が作った本物である』
その仮説を持って、窓の向こうにぶら下がるガラス細工の魚を凝視する。
視線でガラスが砕けてしまうほどに、見る、見る。
その金魚の上に浮かび上がってきた真実は。
「……あれは偽物。少なくとも捨松が作ったものじゃない」
私の告げた真実に、白露が億劫そうなため息をついた。
*
私と白露は、あてどなく春龍街を歩いている。考えをまとめるためだ。雑多な街並みは、沈思黙考には向かないかもしれないが、それでも私たちは歩いた。
右近は真贋鑑定の結果をせがんだが、返事は一日待ってもらっている。
なぜなら、あのお店にある金色魚は、偽物だから。
「うーん……」
白露は家のダイニングの椅子に座り、腕を組んで考え込んでいる。私の鑑定で、逆に事態をややこしくしてしまったような気がする。
「僕はね、あれは本物だったと右近に報告していいと思うんだ。それが一番楽だし、君が麒麟眼であることを明かさずに済む。なあに、向こうが望んだ回答を差し出すんだ。その根拠が多少薄弱でも、さほど追及はされないだろう」
白露の言う通りだと思う。右近の口ぶりからして、彼はただ白露のお墨付きでもって、あれが偽物だという噂を封じたいだけなのだ。
けれど不思議なこともある。
「どうしてぬばたま堂の烏天狗は、あれが偽物だって分かったんだろう」
「捨松の手記を見たんだよね、確か」
「なら、どうしてそれを右近に突き付けないで、噂を広めるだけに留めてるのかな。私が烏天狗なら、捨松の手記を見せびらかして、あの魚はギラギラ光るだけの偽物だーって言いふらすけどな。それで三毛猫商会の仕事を妨害できたら、もうけもんじゃない?」
「ちょっと子どもっぽいけど、その疑問はいい着眼点だ」
ぬばたま堂と三毛猫商会。三毛猫商会が、ぬばたま堂が専門に扱う宝飾品の商いにも手を出し始めてから、両者の対立は激しくなってきたのだという。
つまりぬばたま堂の烏天狗たちには、三毛猫商会を陥れる動機がある。
ならばなぜ、捨松の手記という物的証拠を出して、徹底的にやらないのか。
白露は私を見て、にこーっと笑った。あ、この笑みは、何か企んでいる。
「今度はぬばたま堂に行こう。烏天狗たちに聞いたら何か分かるかも」
ぬばたま堂は、落ち着いた佇まいのモダンな店だった。表参道にでもありそうなセレクトショップみたい。
三階建ての建物だが、一階部分は広いスペースになっていて、特に商品は置かれていない。私たちが足を踏み入れると、一羽の烏天狗が文字通り飛んできて、
「今日は何かお探しでしょうか」
「僕は美術商をやっている白露というものだけど。三毛猫商会さんの金色魚が偽物だという話について、詳しく聞かせてもらえないだろうか」
その言葉にも烏天狗は顔色一つ変えず、二階の個室に案内してくれた。
ちなみに烏天狗は、体は人間で、頭部はカラスというあやかしだ。背中には大きな翼があって、濡れ羽色に輝いている。
出された薄荷水を飲みながら、行儀悪く辺りを観察する。
「高級ブティックって感じだね。三毛猫商会とは路線が違うっぽい」
「僕には一生縁のないお店だなあ。斬新すぎて、どう着こなせばいいのか分からない」
「意外と似合うと思うけどな。流行の最先端みたいな服を着てれば、その胡散臭い片眼鏡も、おしゃれの一部に見えるかも」
「待って君僕のこと胡散臭いって思ってたの?」
「逆に胡散臭くないと思ってたの?」
なんてやり取りをしている間に、一羽の烏天狗がやってきた。頭部はカラスそのものでありながら、人間のようにすらりと長い手足を持ち、背中から大きな翼を生やしている。
藍色の和服に身を包み、その黒々とした翼を背中できっちりと折り畳んでいる。
緑色の目が、好奇心たっぷりに私と白露を見つめてきた。
「どうも、黒です。珍しい取り合わせやんなあ。人間と鵺なんて。ま、俺は異種族間の愛には大賛成やし、お似合いやと思うで?」
「あはは、それは嬉しいなあ。で、君が金色魚は偽物だって噂を流した本人?」
「ああ、俺があの噂……っちゅうか、真実をタレこんだ張本人や」
「そうだね。あれは偽物だ。でも、君はどうしてあれが偽物だって分かったんだい? それが聞きたくてここに来たんだ」
白露がそう切り込むと、黒はちょっと鼻白んだ。
「どうしてって、捨松はんの手記を見たんや。手記の感じからして、金色魚はもう一匹作られてるみたいやったから、あっこの金色魚がニセモンの可能性もあるなあ思て」
「なら、どうしてそれを三毛猫商会に突き付けない? 君たちにとって、代替わりの今は向こうを陥れる絶好のチャンスだろう」
「捨松はんの手記は、門外不出の情報も多い。そんなん公開できますかいな」
「そこだけ切り取って公開すればいいのに……それとも、何かな。公開できない事情があるのかな?」
「事情?」
「ねえ、捨松の手記って、実在するのかな。君たちはただ、三毛猫商会を混乱させるためだけに、あれが偽物だという嘘を流しただけなんじゃない?」
ひたり、ひたりと迫りくるような、白露の声。表情こそ穏やかだが、そのとび色の目は笑っていない。禍々しい光を帯びて、烏天狗をねめつけている。
そういう顔もできるんだなあと感心していると、黒がぐうっと唸った。しかし彼も、腕を組んでくちばしをぎゅうっと固く閉じている。
「俺は見んぞ! 鵺の魔眼に惑わされるような男とちゃうからな!」
「魔眼?」
「迷信、迷信」
苦笑する白露。その目は、先ほどの剣呑さの名残を留めている。
本気を出した白露は、きっと誰からも恐れられるあやかしなんだろう。それを白露も嫌というほど分かっている。分かっていて、コントロールしているのだ。
私は少し考えて、椅子の背もたれにゆっくりと背を預けた。
「じゃあ、麒麟眼だったらどう?」
「は? 麒麟眼って、あの真実を見抜くっちゅうやつ? そんなんあるわけ」
「あるんだよ。だからあなたが嘘をついてるのも分かる」
私は身を乗り出し、黒の目をじいっと覗き込む。
麒麟眼は相手の本音を見る。相手があやかしで、無防備に本音をさらけ出さないとしても関係ない。私が見たいと思えば見えるのだ。
「捨松の手記なんてないのに、どうして嘘をつくの」
「……あんた、ほんまの麒麟眼か!」
「だからそう言ってる」
「なんで鵺と麒麟眼が一緒におるんや? 凶兆と吉祥の親玉がデートしとるみたいなもんやないか」
ぶつくさ言いながらも、黒はあっさり敗北を認めた。
「あーもう、麒麟眼のお嬢さんを前にして、往生際悪いんも恥ずかしいしな。認めるわ、捨松の手記にそんな記述はない」
「ということは、三毛猫商会を惑わすためのデマ……」
「そういうわけでもない。根も葉もない噂と違う」
そう言って黒は、辺りをはばかるような仕草をした。それを見て取った白露が、指先で何か文字を描くと、赤い光がぼうっと部屋中に広がって、消えた。
「術を使った。盗み聞きされる心配はないよ、さあ存分にぶちまけたまえ」
「まあええわ、言うたる。俺な、薄荷が今どこにおるか知ってんねん」
薄荷。花梨と三毛猫商会の当主の座を争い、破れたあやかし。
店を出て、行方不明になっているはずではなかったか。
片眼鏡の奥で、白露が驚きに目を見張る。
「もちろん、名前も仕事も変えてんねやけどな。そこで俺うっかり立ち聞きしてもうてん。薄荷は、もう一匹金色魚があったーって言うてたで」
「重大情報じゃない! っていうか、それほんとにうっかり?」
「意図的にうっかりしたかもしれんけど、まあそこはええやろ。俺かて恋に生きる男やねんから」
「恋?」
話の展開についていけない。
イライラする私とは対照的に、白露は考え込みながら、静かに口を開いた。
「……薄荷が今どこにいるのか、教えてもらってもいいかな」
黒はあっさりと薄荷の居場所を吐いた。
*
ぬばたま堂を後にした私たちは、街の中心へ向かっている。
「薄荷の居場所は分かった。事の顛末も大体理解できたし」
「えっ白露、分かったの⁉」
「店の金色魚が偽物で、薄荷が家を出たんなら、なんとなくそうじゃないかなって仮説はある。あとは薄荷に直接聞きに行くだけ……なんだけど」
白露はちらりと私を見る。
「ちづるが付き合う必要はないからね。家に戻りたかったら送るよ」
「ここまで来て真相はおあずけ? 酷いこと言うのね」
「だってほら、君はあんまり春龍街のことが好きじゃなさそうだったからさ。あやかしのいざこざなんかに関わりたくないかもしれないだろう」
「……そりゃあ、まあ。お父さんが死んだ街だからね」
私はその前に座って、おもむろに口を開いた。
「白露のお願い、聞いてあげる。真贋鑑定っていっても、今までそんなことに麒麟眼を使ったことがないから、できるかどうか分からないけど」
そう告げると、白露は子どもみたいに顔を輝かせた。
「わあ、いいの? 助かった! ちょうど督促が来たんだよ、さっそく行こう」
「督促?」
「うん。なんでも創業二百年の記念パーティが明後日あるらしくて、それまでに真贋を確定させたいんだってさ」
「どうしてそんなに急ぐんだろうね」
「大した理由じゃないさ。真贋を明らかにさせたい動機なんて、たかが知れてる」
白露はのっそりと立ち上がった。上着を羽織りながら、どこか呆れたように呟く。
「絡んでくるのは、金か、血縁か……いずれにせよめんどくさそうだ」
白露と並んで街を歩く。長い足を持て余すように歩くんだな、と思っていたら、単に私に歩調を合わせてくれているだけだった。
私に似合うワンピースを選んでくれたり、歩調を合わせてくれたり、女の扱いに慣れている感じだ。意外。
春龍街の中でも、背の高い建物が並ぶ地域に差し掛かった。
「あそこの大店が依頼主のお店だよ」
「わあ、デパートみたい」
八階建てのお城みたいな建物が、でんと目の前にそびえ立っていた。装飾過多で、若干けばけばしい。
そのけばけばしさをさらに引き立てているのは、正面にある巨大な魚のガラス細工だった。それがシャンデリアみたいに、建物からぶら下がっているのだ。
直径三メートルくらいはあるだろうか。鱗一枚一枚が全てガラスでできているので、光を反射するったらない。そのせいで七色の光が、常にあちこちから網膜を攻撃してくる状態だ。
「うう、僕の眼鏡サングラスに変えてくればよかった」
「胡散臭さが増しそうだね。っていうか、あれは……すごい」
「すごいよねえ。あの魚が、僕に真贋鑑定するよう依頼されたものだよ」
「あれを? どうして?」
魚の大きさに合わせて建物の壁がくぼんでいるから、あれは建てた時からあそこにぶら下がっていた感じがする。今更本物も偽物もないだろう。
「それは――」
「ああ、白露どの! お待ちしておりました」
白露の言葉を遮るような胴間声。顔を上げると、そこには大きなお腹を抱え、四本の尾を生やした猫又が立っていた。
猫又、というか、二足歩行して紺色の前掛けをつけた、大きな猫という感じだ。横幅は白露の二倍くらいある。白い毛でさらに膨張効果大。
「こんにちは、右近どの」
「ぜひ本日中にはあの魚――金色魚の真贋を鑑定頂きたく! ええ、名高い美術商の白露どのの鑑定であれば、一族の者は皆、納得するでしょうとも! たとえあなたが鵺だとしてもね!」
最後の一言は余計だな。そう思いつつ、私はこっそり白露に問う。
「白露って、そんなに有名な美術商なの」
「人間社会へよく行き来してるってだけなんだけどなあ」
「おや、そこの人間は?」
右近と呼ばれた猫又が私を指さす。
お守りのおかげで、麒麟眼だと気づかれていないようだ。
「僕の連れです。人間社会でつてのある方のお嬢さんで」
「ほう。なかなかの上玉、それに小柄で御しやすそうだ。どうです? 金持ちのあやかしの家に買い取られる気はありませんかねぇ? 可愛い人間の娘を愛でるのが、最近の流行でして」
ごく自然に言われてぎょっとする。それってつまり、人身売買じゃないのか。
驚いたせいでとっさに返答できず、口ごもっていると白露が割って入った。
「お預かりしているお嬢さんですので、商売の話はご勘弁を。それよりも、あれの来歴を改めて教えてくださいませんか」
「まあ、いいでしょう。あれは名匠・捨松の手になるガラス工芸でしてね。我ら三毛猫商会の守り神のような存在です。先々代の当主が、腕利きのガラス細工師に作らせたのです。ざっと七十年ほど前のことになりますか」
「来歴は分かってるのに、どうしてあれの真贋鑑定を白露に依頼したんです?」
右近がちょっと顔をしかめた。
「けしからんことに、あれが偽物だと主張する輩がいるのです! 創業二百年記念パーティも近いのに由々しき事態。何しろこの私が、ついに三毛猫商会の当主となる、めでたき日ですからなあ! 万全を期すべく、白露どのを呼んだ次第」
そう言うと右近は顔をしかめた。
「本音を言えば、鵺などに借りなど作りたくはないのですがね! 背に腹は代えられん。とはいえお嬢さんのような、資産価値の高い人間を見つけられたのは運が良かった! 金に困ったらいつでも来るといいでしょう」
右近は大きなお腹を揺らしながら、店の中に戻っていった。その後ろ姿が完全に見えなくなってから、私は口を開く。
「……何あれ? あれがあやかし流の依頼なの?」
「僕は鵺だからね。商売をやっていて縁起を担ぐあやかしからは、ものすごく嫌われてるのさ」
「じゃあ真贋鑑定なんて依頼しないでほしいよね。態度も失礼極まりないし、大体しれっと人身売買持ちかけてくるとか、信じられないんだけど」
口ごもってしまったのが悔しい。何か言い返してやればよかった。
遅れてやってきた怒りを持て余している私をなだめるように、白露が言う。
「一応あれでも、僕の仕入れた商品を高く買ってくれるお得意さんなんだ」
「仕事のためなら、何か言われてもある程度は我慢しないといけないってこと? あやかしも人間も一緒ね」
「そういうことだ。だがもし君に手出しするようなら、僕も黙ってはいないから安心して」
さらりと言われ、言葉に詰まる。まるで少女漫画みたいな台詞に、またしてもとっさに反応できずにいると、白露は微笑んで金色魚を指さした。
「あれをもっと近くで見てみよう」
店の中に足を踏み入れると、色んなあやかしが買い物をしていた。
彼らを尻目に、昇降機に乗る。鉄柵がガチャガチャ音を立てて閉まり、ゆっくりと上っていく。レトロだ。
最上階には、お茶や軽食を出す屋台が三つほど並び、子どものあやかしが遊び回っているスペースがあった。
大通りに面した壁の方に、細長い窓があって、そこから金色魚を眺められるようだった。私たちはその窓の前に立って、威容を誇るガラスの巨大魚を観察する。
「あれが偽物だ、と言い始めたのは、ぬばたま堂のあやかしたちだった。ぬばたま堂は、烏天狗たちの商会だね。宝石関係の商いをしているらしい」
「もしかしてぬばたま堂は、三毛猫商会のライバルだったり?」
「よく分かったね。そう、商売敵だ。だから最初右近は、三毛猫商会の足を引っ張ろうとしている彼らの嫌がらせだと思ったらしい」
白露が話してくれたところによると、あの金色魚は、三毛猫商会の当主の正統性を示すものなのだという。
なんでも、今の当主・花梨と、その甥・薄荷は、当主の座を巡って争っていたのだそうだ。いずれも商才に恵まれ、実力は互角のように見えたが、当主に選ばれたのは花梨の方だった。
「あの金色魚は、先代から花梨への贈り物だと言われているよ。当主争いをしているところへ、あんなにすごいものを贈られたら……後継者争いの結果は見えたようなものだよね」
敗北を悟った薄荷は、ある日家を出たきり、二度と戻らなかったそうだ。
こうして当主になった花梨は、右近という後継者にも恵まれた。先ほどの右近は花梨の息子なんだそうだ。
七十年も経てば、いくら長命のあやかしでも衰えがくる。花梨は当主の座を、あの金色魚と共に右近に譲ろうとした。
そこへふいにやってきた、ぬばたま堂の烏天狗。
いわく『その金色魚はもう一匹いる』。
「金色魚を作った捨松は、宝石を商う烏天狗たちとよく取引していたらしい。捨松が亡くなって、その手記や日記を手に入れた烏天狗たちは、どうやら捨松はもう一匹金色魚を作っていたらしい――と結論付けた」
材料のメモ書きや設計図、残っていた納品書などを根拠に、烏天狗は『もう一匹金色魚がいる』と吹聴して回った。
「でもそれは、烏天狗の考えでしょ? ほんとにもう一匹作られたかどうか分からないんだから、金色魚はここにある一匹だけです、って堂々としてればいいのに」
「それだけ右近の立場が危うい、と言えるだろう」
「……なるほど。そんな噂程度の話にも揺らいでしまうような立場、ってことね」
右近は平気で人身売買を持ちかけてくる奴だ。敵が多いのかもしれない。
「まあ、僕としてはあれが本物でも偽物でも、どっちでもいいんだけどさ。三毛猫商会は小さくない取引相手だから、お家騒動の顛末は見届けておきたくて」
「麒麟眼を持ってる私がいれば、鑑定結果が正しいかどうかの確証にもなる。それで右近に恩を売れれば、今後の取引が有利になるもんね」
「さすがサラリーマンはそろばん勘定が早いなあ。ま、そういうことだ。もっとも、君が麒麟眼だということは、軽々に明かす気はないけどね」
ぼけっとしているように見えて、白露もなかなか賢く立ち回っているらしい。そういうところは好印象だ、サラリーマン的に。
「さて、あんまり長居したくもないし、真贋鑑定してみるね」
「真贋鑑定の工程って、どんな感じなのかな?」
「初めてやるけど……今回は、夏場道端に落ちてる蝉に対して使う感じでやってみようと思う」
白露がものすごく怪訝そうな顔をする。全身で、どういうこと? と問うている。
「落ちてる蝉って、死んでるか生きてるか分かんないでしょ。そういう時に『これは生きている蝉である』って仮説を持って麒麟眼を使うと、それが本当か嘘か分かるの」
「……そんな麒麟眼の無駄遣いってある? ちなみに、足を開いてたら生きてる蝉で、閉じてたら死んでる蝉ね」
「――あっほんとのこと言ってるね⁉ そういうことは早く教えてよもー!」
一つ学びを得た。気を取り直して、金色魚。
『この金色魚は捨松が作った本物である』
その仮説を持って、窓の向こうにぶら下がるガラス細工の魚を凝視する。
視線でガラスが砕けてしまうほどに、見る、見る。
その金魚の上に浮かび上がってきた真実は。
「……あれは偽物。少なくとも捨松が作ったものじゃない」
私の告げた真実に、白露が億劫そうなため息をついた。
*
私と白露は、あてどなく春龍街を歩いている。考えをまとめるためだ。雑多な街並みは、沈思黙考には向かないかもしれないが、それでも私たちは歩いた。
右近は真贋鑑定の結果をせがんだが、返事は一日待ってもらっている。
なぜなら、あのお店にある金色魚は、偽物だから。
「うーん……」
白露は家のダイニングの椅子に座り、腕を組んで考え込んでいる。私の鑑定で、逆に事態をややこしくしてしまったような気がする。
「僕はね、あれは本物だったと右近に報告していいと思うんだ。それが一番楽だし、君が麒麟眼であることを明かさずに済む。なあに、向こうが望んだ回答を差し出すんだ。その根拠が多少薄弱でも、さほど追及はされないだろう」
白露の言う通りだと思う。右近の口ぶりからして、彼はただ白露のお墨付きでもって、あれが偽物だという噂を封じたいだけなのだ。
けれど不思議なこともある。
「どうしてぬばたま堂の烏天狗は、あれが偽物だって分かったんだろう」
「捨松の手記を見たんだよね、確か」
「なら、どうしてそれを右近に突き付けないで、噂を広めるだけに留めてるのかな。私が烏天狗なら、捨松の手記を見せびらかして、あの魚はギラギラ光るだけの偽物だーって言いふらすけどな。それで三毛猫商会の仕事を妨害できたら、もうけもんじゃない?」
「ちょっと子どもっぽいけど、その疑問はいい着眼点だ」
ぬばたま堂と三毛猫商会。三毛猫商会が、ぬばたま堂が専門に扱う宝飾品の商いにも手を出し始めてから、両者の対立は激しくなってきたのだという。
つまりぬばたま堂の烏天狗たちには、三毛猫商会を陥れる動機がある。
ならばなぜ、捨松の手記という物的証拠を出して、徹底的にやらないのか。
白露は私を見て、にこーっと笑った。あ、この笑みは、何か企んでいる。
「今度はぬばたま堂に行こう。烏天狗たちに聞いたら何か分かるかも」
ぬばたま堂は、落ち着いた佇まいのモダンな店だった。表参道にでもありそうなセレクトショップみたい。
三階建ての建物だが、一階部分は広いスペースになっていて、特に商品は置かれていない。私たちが足を踏み入れると、一羽の烏天狗が文字通り飛んできて、
「今日は何かお探しでしょうか」
「僕は美術商をやっている白露というものだけど。三毛猫商会さんの金色魚が偽物だという話について、詳しく聞かせてもらえないだろうか」
その言葉にも烏天狗は顔色一つ変えず、二階の個室に案内してくれた。
ちなみに烏天狗は、体は人間で、頭部はカラスというあやかしだ。背中には大きな翼があって、濡れ羽色に輝いている。
出された薄荷水を飲みながら、行儀悪く辺りを観察する。
「高級ブティックって感じだね。三毛猫商会とは路線が違うっぽい」
「僕には一生縁のないお店だなあ。斬新すぎて、どう着こなせばいいのか分からない」
「意外と似合うと思うけどな。流行の最先端みたいな服を着てれば、その胡散臭い片眼鏡も、おしゃれの一部に見えるかも」
「待って君僕のこと胡散臭いって思ってたの?」
「逆に胡散臭くないと思ってたの?」
なんてやり取りをしている間に、一羽の烏天狗がやってきた。頭部はカラスそのものでありながら、人間のようにすらりと長い手足を持ち、背中から大きな翼を生やしている。
藍色の和服に身を包み、その黒々とした翼を背中できっちりと折り畳んでいる。
緑色の目が、好奇心たっぷりに私と白露を見つめてきた。
「どうも、黒です。珍しい取り合わせやんなあ。人間と鵺なんて。ま、俺は異種族間の愛には大賛成やし、お似合いやと思うで?」
「あはは、それは嬉しいなあ。で、君が金色魚は偽物だって噂を流した本人?」
「ああ、俺があの噂……っちゅうか、真実をタレこんだ張本人や」
「そうだね。あれは偽物だ。でも、君はどうしてあれが偽物だって分かったんだい? それが聞きたくてここに来たんだ」
白露がそう切り込むと、黒はちょっと鼻白んだ。
「どうしてって、捨松はんの手記を見たんや。手記の感じからして、金色魚はもう一匹作られてるみたいやったから、あっこの金色魚がニセモンの可能性もあるなあ思て」
「なら、どうしてそれを三毛猫商会に突き付けない? 君たちにとって、代替わりの今は向こうを陥れる絶好のチャンスだろう」
「捨松はんの手記は、門外不出の情報も多い。そんなん公開できますかいな」
「そこだけ切り取って公開すればいいのに……それとも、何かな。公開できない事情があるのかな?」
「事情?」
「ねえ、捨松の手記って、実在するのかな。君たちはただ、三毛猫商会を混乱させるためだけに、あれが偽物だという嘘を流しただけなんじゃない?」
ひたり、ひたりと迫りくるような、白露の声。表情こそ穏やかだが、そのとび色の目は笑っていない。禍々しい光を帯びて、烏天狗をねめつけている。
そういう顔もできるんだなあと感心していると、黒がぐうっと唸った。しかし彼も、腕を組んでくちばしをぎゅうっと固く閉じている。
「俺は見んぞ! 鵺の魔眼に惑わされるような男とちゃうからな!」
「魔眼?」
「迷信、迷信」
苦笑する白露。その目は、先ほどの剣呑さの名残を留めている。
本気を出した白露は、きっと誰からも恐れられるあやかしなんだろう。それを白露も嫌というほど分かっている。分かっていて、コントロールしているのだ。
私は少し考えて、椅子の背もたれにゆっくりと背を預けた。
「じゃあ、麒麟眼だったらどう?」
「は? 麒麟眼って、あの真実を見抜くっちゅうやつ? そんなんあるわけ」
「あるんだよ。だからあなたが嘘をついてるのも分かる」
私は身を乗り出し、黒の目をじいっと覗き込む。
麒麟眼は相手の本音を見る。相手があやかしで、無防備に本音をさらけ出さないとしても関係ない。私が見たいと思えば見えるのだ。
「捨松の手記なんてないのに、どうして嘘をつくの」
「……あんた、ほんまの麒麟眼か!」
「だからそう言ってる」
「なんで鵺と麒麟眼が一緒におるんや? 凶兆と吉祥の親玉がデートしとるみたいなもんやないか」
ぶつくさ言いながらも、黒はあっさり敗北を認めた。
「あーもう、麒麟眼のお嬢さんを前にして、往生際悪いんも恥ずかしいしな。認めるわ、捨松の手記にそんな記述はない」
「ということは、三毛猫商会を惑わすためのデマ……」
「そういうわけでもない。根も葉もない噂と違う」
そう言って黒は、辺りをはばかるような仕草をした。それを見て取った白露が、指先で何か文字を描くと、赤い光がぼうっと部屋中に広がって、消えた。
「術を使った。盗み聞きされる心配はないよ、さあ存分にぶちまけたまえ」
「まあええわ、言うたる。俺な、薄荷が今どこにおるか知ってんねん」
薄荷。花梨と三毛猫商会の当主の座を争い、破れたあやかし。
店を出て、行方不明になっているはずではなかったか。
片眼鏡の奥で、白露が驚きに目を見張る。
「もちろん、名前も仕事も変えてんねやけどな。そこで俺うっかり立ち聞きしてもうてん。薄荷は、もう一匹金色魚があったーって言うてたで」
「重大情報じゃない! っていうか、それほんとにうっかり?」
「意図的にうっかりしたかもしれんけど、まあそこはええやろ。俺かて恋に生きる男やねんから」
「恋?」
話の展開についていけない。
イライラする私とは対照的に、白露は考え込みながら、静かに口を開いた。
「……薄荷が今どこにいるのか、教えてもらってもいいかな」
黒はあっさりと薄荷の居場所を吐いた。
*
ぬばたま堂を後にした私たちは、街の中心へ向かっている。
「薄荷の居場所は分かった。事の顛末も大体理解できたし」
「えっ白露、分かったの⁉」
「店の金色魚が偽物で、薄荷が家を出たんなら、なんとなくそうじゃないかなって仮説はある。あとは薄荷に直接聞きに行くだけ……なんだけど」
白露はちらりと私を見る。
「ちづるが付き合う必要はないからね。家に戻りたかったら送るよ」
「ここまで来て真相はおあずけ? 酷いこと言うのね」
「だってほら、君はあんまり春龍街のことが好きじゃなさそうだったからさ。あやかしのいざこざなんかに関わりたくないかもしれないだろう」
「……そりゃあ、まあ。お父さんが死んだ街だからね」
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