黎明が紡ぐ夜の物語

のどか

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~後日談・番外編~

ふたりで歩き始めた朝

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ふんわりとまわされた腕に安心しながら、鼻孔をくすぐる知らない匂いにぎゅっと目を閉じる。
大好きな匂いに混じる知らない甘い香り。
それが堪らなく悲しくて、怖かった。
自分を閉じ込める腕に遠慮があるのは、誰よりも何よりもディアナを守るべきものだと認識しているナハトが無意識にディアナを壊してしまうのが怖いと思っているからだということをちゃんと知っている。 
だけど、今はそれさえもがディアナの不安を煽った。
いつもなら不安を掻き消す為に自分から手を伸ばすのにそれができないでいるのはディアナの知らない甘い香りのせいだ。 

「……なにが嫌だった?」 

落ちてきた声にディアナはビクリと肩を震わせる。
言えない。これ以上、困らせたらダメだ。
涙が止まらなくなってから聞いた声は全部困り果てた弱った声だった。
呆れられたくない。強くないと、側にいられない。
メンドクサイ女だなんて思われたくない。
そう思うと怖くて、唇を噛んで俯くしかなかった。

「俺が察しのいい男じゃねぇことくらいお前も知ってるだろ。
 なんかあるなら言え」

それでも、小さな溜息と共に降ってきた声に困惑以外のものが混じっていることに気付くと唇は勝手に想いを紡いでいた。 

「……た」
「ディアナ?」
「あんたが仕事ばっかで、構ってくれないから寂しかったんだよッ!!
 女物の香水の匂いつけて帰ってくるし!」
「……」
「うぅっ、ただの嫉妬だよ!悪かったなメンドクサイ女で!!」

マヌケ面で自分を凝視するナハトに全力で後悔しながらやけっぱちでそう叫ぶと痛いくらいに身体が締めつけられた。 
言葉にできない何かを伝えるように強く抱きしめられる。
その強さが今まで隠されてきた想いの強さのような気がして、見えないナハトの心の深さのような気がしてディアナは無意識にその背に腕をまわした。 
次に空気を震わせた音は喜びを噛み殺したような優しくて甘い、ディアナの知らない声だった。

「馬鹿だろ」
「バカっていうな!女ったらし。ばか。うわきもの」
「準備が終わってからの方が良かったんだが、泣くほど俺が恋しいなら仕方ねぇな」
「何が仕方ないだ調子のん……待って、準備ってなに?」
「明日、お前も一緒に来い。
 どうせ、ドレスやらなんやらはお前がいなけりゃあわせらんねぇしな」
「どれす?」
「領民が俺とお前を祝福してくれるとよ。
 俺はどっちでもいいが……好きだろ?そういうの」

見上げた先にあった平静を装いながら自分の反応を伺う不安と期待を綯交ぜにした顔におさまったはずの涙が再び溢れだす。 

「だからなんで泣くんだよ。嬉しくねぇのかよ」
「ヒック、ほかに、すきなひと、できたのかと、おもった」
「は?」
「だって、だって、あたし、おんならしくないし、かわいくないし、めんどくさいし、いじばっかり、はっちゃうし」
「……女なんてどいつも面倒だろ。だったら俺はお前がいい」
「ほんと?あたしだけ?」
「あぁ。お前だけでいい。
 意地っ張りで、強がりで、俺の前でだけ可愛い女に戻るお前がいれば他は必要ない」
「うわぁあああああん」
「分かったらさっさと泣きやめよ。泣き腫らした顔で花嫁衣装着るつもりか?」

呆れた声と優しいキスの雨に降られながら柔らかなまどろみに落ちる。
絡めた指を離さずに夢を見よう。
そして、朝、目が覚めたらふたりで確かめよう。
この幸せすぎる夢の続きを。



ふたりで歩き始めた朝
(いつまでそうしてる気だ)
(だ、だって、こんなカッコしたこない。ひらひら!!ふわふわ!!女の子みたいだ!)
(お前は女だろ。……似合ってる。綺麗だ)
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