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~後日談・番外編~
仮面夫婦の華麗なるマスカレードー中ー
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扉が開かれた瞬間沸き立つ会場に顔を歪めそうになる。
それを窘めるように隣の男の視線が向けられた。
本当に嫌な男だ。
きっと周りからは慣れない妃を気遣う優しい国王に見えるのだろう。
心の中で盛大に悪態を付きながら表面上は安心したような笑顔を浮かべる。
王妃なんかよりも舞台女優にでもなればよかった。
背中がゾワゾワするような社交辞令を笑顔で聞き流して、心にもない美辞麗句に謙虚に答える。
グサグサと突き刺さる好奇の視線は増すばかりで夜が明けるまで薄まることはない。
そう思っていた。
けれど突然全ての注目が私とその隣である玉座に悠然と座っている男から離れた。
驚くくらいにあっさりと、驚くくらいに一斉に。
クスリ。
誇らしげな笑みを浮かべながら細めた瞳に嫉妬の炎を灯して隣の男が微笑む。
注目の中心が人の波をかきわけながらゆっくりと近づいてくる。
あぁ、来た!
あの人が、ずっとずっと焦がれていたあの人が!!
高鳴る胸を抑えながら、必死に目を凝らす。
だけど私の瞳に映るあの人の姿はいつだって同じだけの絶望も連れているのだ。
その逞しい姿を視界に捕えた瞬間、高鳴った胸の鼓動は一気に減速して息が詰まるような鋭い痛みを私にもたらした。
「……参上が遅れて申し訳ありません。陛下」
膝を追って恭しく頭を下げる彼の斜め後ろには綺麗に着飾ったあの子の姿。
「遠いところを悪かったな」
心にもないことを言う隣の男の声なんてもう私の耳には届かなかった。
私はただ、贅をこらした豪華な衣装に身を包みキラキラ輝く装飾品で飾り立てられたこの会場の誰よりも美しく見える幼馴染を苦い表情で見つめることしかできなかった。
シンプルなドレス。きっとこの会場の誰よりも質素で流行なんてお構いなしの、誰よりも彼女に似合う――この世でただひとり彼女の為だけに仕立てられたドレス。
私がどんな思いで見つめているのかも知らないで目があうと昔と変わらずに嬉しそうにはにかむ。
なんて憎らしい。なんて恨めしい、なんて……!!
「でも驚いたよ。まさかふたりがそんな関係だなんてあたし、思いもしなかったし」
「ディアナ。
……御無礼をお許しください。王妃様にお目にかかれて舞いあがっているようです」
「あ、も、申し訳ありません」
慌てて口を抑える彼女を優しく窘める声。
呆れた音色の中に織り込まれた慈しみが痛かった。
「気にしていません。奥方に丁寧な物言いをされるとわたくしきっと眠れなくなりますわ」
「……」
ヒクリと頬を引き攣らせて睨みつけてくる彼女を鼻であしらう。
隣から突き刺さる物言いたげな視線と彼から向けられる微苦笑に諦めたような溜息が唇から零れた。
「ナハト殿、ディアナ様もご結婚おめでとうございます」
「そうだった。祝うのが遅れて悪かったな。
大変な地を任せてしまったがお前にしか任せられん。これからも奥方と共に手を貸してほしい」
「はい」
「精一杯務めさせていただきます」
深々と頭を下げて下がったふたりがまた人の波に呑まれていくのを見送った。
仮面夫婦の華麗なるマスカレード
(会いたくて会いたくて、会いたくなくて)
(羨ましくて憎たらしくて、だけど嫌いになれなくて)
(仮面の下はいつも曇り空)
それを窘めるように隣の男の視線が向けられた。
本当に嫌な男だ。
きっと周りからは慣れない妃を気遣う優しい国王に見えるのだろう。
心の中で盛大に悪態を付きながら表面上は安心したような笑顔を浮かべる。
王妃なんかよりも舞台女優にでもなればよかった。
背中がゾワゾワするような社交辞令を笑顔で聞き流して、心にもない美辞麗句に謙虚に答える。
グサグサと突き刺さる好奇の視線は増すばかりで夜が明けるまで薄まることはない。
そう思っていた。
けれど突然全ての注目が私とその隣である玉座に悠然と座っている男から離れた。
驚くくらいにあっさりと、驚くくらいに一斉に。
クスリ。
誇らしげな笑みを浮かべながら細めた瞳に嫉妬の炎を灯して隣の男が微笑む。
注目の中心が人の波をかきわけながらゆっくりと近づいてくる。
あぁ、来た!
あの人が、ずっとずっと焦がれていたあの人が!!
高鳴る胸を抑えながら、必死に目を凝らす。
だけど私の瞳に映るあの人の姿はいつだって同じだけの絶望も連れているのだ。
その逞しい姿を視界に捕えた瞬間、高鳴った胸の鼓動は一気に減速して息が詰まるような鋭い痛みを私にもたらした。
「……参上が遅れて申し訳ありません。陛下」
膝を追って恭しく頭を下げる彼の斜め後ろには綺麗に着飾ったあの子の姿。
「遠いところを悪かったな」
心にもないことを言う隣の男の声なんてもう私の耳には届かなかった。
私はただ、贅をこらした豪華な衣装に身を包みキラキラ輝く装飾品で飾り立てられたこの会場の誰よりも美しく見える幼馴染を苦い表情で見つめることしかできなかった。
シンプルなドレス。きっとこの会場の誰よりも質素で流行なんてお構いなしの、誰よりも彼女に似合う――この世でただひとり彼女の為だけに仕立てられたドレス。
私がどんな思いで見つめているのかも知らないで目があうと昔と変わらずに嬉しそうにはにかむ。
なんて憎らしい。なんて恨めしい、なんて……!!
「でも驚いたよ。まさかふたりがそんな関係だなんてあたし、思いもしなかったし」
「ディアナ。
……御無礼をお許しください。王妃様にお目にかかれて舞いあがっているようです」
「あ、も、申し訳ありません」
慌てて口を抑える彼女を優しく窘める声。
呆れた音色の中に織り込まれた慈しみが痛かった。
「気にしていません。奥方に丁寧な物言いをされるとわたくしきっと眠れなくなりますわ」
「……」
ヒクリと頬を引き攣らせて睨みつけてくる彼女を鼻であしらう。
隣から突き刺さる物言いたげな視線と彼から向けられる微苦笑に諦めたような溜息が唇から零れた。
「ナハト殿、ディアナ様もご結婚おめでとうございます」
「そうだった。祝うのが遅れて悪かったな。
大変な地を任せてしまったがお前にしか任せられん。これからも奥方と共に手を貸してほしい」
「はい」
「精一杯務めさせていただきます」
深々と頭を下げて下がったふたりがまた人の波に呑まれていくのを見送った。
仮面夫婦の華麗なるマスカレード
(会いたくて会いたくて、会いたくなくて)
(羨ましくて憎たらしくて、だけど嫌いになれなくて)
(仮面の下はいつも曇り空)
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