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~番外編~
雪の果てに消えるー7ー
しおりを挟む「どこまで行くんだ?」
「あ、ご、ごめん!」
ピタっと足を止めてしょぼーんと俯きながらも繋いだ手を離さないリヒトにふたりは揃って微苦笑を零した。
これは、自惚れてもいいのだろうか。
リヒトに頼られてると、信頼されていると思ってもいいのだろうか。
「リヒト、散々泣いて喉渇いてんじゃねぇか?」
「お姉さんが美味しいココアを淹れてあげますよ」
「なななっ!?」
「そりゃ分かるだろ。大泣きしましたって顔に書いてあるぜ?」
「ついでに目も冷やしましょうね」
いつもより何となく優しくて、どことなく嬉しそうなふたりに手を引かれながらリヒトはただひたすらに困った顔をしていた。
勢いで逃げ出してきたけれどこれからどうしたらいいのかさっぱり分からない。
それどころかどうしてとっさにジオとニナの手を引っ掴んで来たのかさえ分からない。
俺は、どうしたいの?どうすればいいの?どうするのが一番正解なの?
分からなくて、全然わからなくて途方に暮れたところにのんびりした声が落ちてきた。
「ねぇリヒト様、なにか知りたいことはありませんか?
オススメの物語でもイチオシのお菓子のことでも勉強のことは―――センパイに聞けばなんとかなるか、あとは、そうだな……これからのこと、とか?」
まるでいつものとりとめのない話をする時と同じトーンで、同じ雰囲気で紡がれた言葉にリヒトはハッとして俯いていた顔をあげた。
ニナもジオもいつも通りの笑みを浮かべてリヒトの返答を待っている。
「っ、聞きたいことが、あるんだ。
おれ、分からなくて、どうするのが、いいのか、全然わかんなくて、だから、一緒に考えてくれる?」
「もちろん。
言ったでしょう?私でお役に立てるならなんでもおっしゃってくださいって」
「言うのが遅ぇぞ」
にっこりと笑うニナとちょっぴり怒った顔をするジオにリヒトはぐちゃぐちゃにこんがらがった頭の中を支離滅裂な状態のまま吐きだした。
最後の方のニナの相槌は相当怪しくなっていたけれど、ジオ最後まで真剣な表情でリヒトの話を聞いてくれた。
ノクトやルナよりほんの少し遠くて近いふたりの言葉はいつだって真っ直ぐにリヒトの心に届く。
どんなに子どもっぽくても最後には親の目線でリヒトと接するルナとずっと大人に見えても本当の弟のようにリヒトを可愛がるニナの違いは、不安を取り除くために必要な言葉や答えをくれるノクトと取り除く方法を一緒に考えてくれるジオの違いは、とても大きい。
ひんやりと冷たいタオルを目に押し付けながらリヒトはジオとニナの言葉を噛みしめた。
正しい答えは出ない。まだ、分からない。
だけど、自分がどうしたいのかは、なんとなく分かった気がする。
それでもやっぱり不安になって、リヒトは最後の確認をジオとニナした。
「おれ、ホントにここにいてもいい?セイラとアルバの邪魔にならない?」
「当たり前だろ」
「じゃあ、おれ、ボスと姉ちゃんの側にいてもいい?
ずっとセイラとアルバのお兄ちゃんでいてもいいの?」
「もちろんですよ。
ていうかボスと姫様はともかく双子のお兄ちゃんは絶対にやめないでください。
本当にお願いします」
お兄ちゃんやめます宣言なんてされたらあの双子の怪獣がなにをしでかすか。
ちょっとボスがリヒト様を連れ出しただけで大暴れしてくれたのに……。
「セイラとアルバにヤキモチ妬いちゃっても、俺のこと好きでいてくれる?」
「それはたぶん、逆になるだろうな。
双子にお前をとられて俺とニナが拗ねることの方が多くなりそうだ」
「どんなリヒト様も大好きですよ。
弟なんてものは手がかかるお馬鹿さんのほうが可愛いものですから」
「……馬鹿じゃないもん」
「つまんねぇことをグダグダと悩んでおいてどの口が言いやがる。
……大分マシになったな。もうスッキリしたか?」
「うん。あとひとつだけ聞いてもいい?
俺が――――――――――?」
目を見開いて驚くジオとニナとは裏腹にリヒトは吹っ切れたような晴れやかな顔で笑った。
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